東京地判令和2年6月25日
地位を利用して、取引先に割増請求をさせ、リベートを受け取る等の行為を行ったことを理由とする懲戒解雇が有効とされた事例
会社:
繊維品の月賦販売及び卸売販売,貴金属品製品の月賦販売及び卸売販売等を目的とする株式会社
被懲戒者:
平成6年入社。
処分日平成30年
懲戒対象事実:
懲戒解雇事由①
被懲戒者は,その地位を利用して取引先(仕入先)に割増請求をさせ,当該割増分の金員を受領する行為を相当期間にわたって行ったこと懲戒解雇事由②
被懲戒者は,上記の行為に関して弁明の機会を与えられたにもかかわらず,事案解明に資する書面(税務代理権限証明書)への署名,捺印の指示を拒否し,弁解の命令を拒否したこと
就業規則における懲戒事由:
①について「職務上の地位を利用して,金品の供与を受け,不正の利益を得たとき」
②について「正当な理由がなく業務上の指示又は命令に従わないとき」
に該当
懲戒処分:
懲戒解雇
懲戒処分の相当性:
懲戒解雇事由②のみでは懲戒解雇が相当とはいい難いが,懲戒解雇事由①は,c社に何ら根拠のないインストラクター代等を支払わせて少なくともその一部の金銭を収受するという極めて悪質な行為であるといわざるを得ないし,c社をして被告の子会社であるa社やb社に対して商品代金にインストラクター代等相当額を上乗せして請求させて総額7000万円を超える重大な損害を与えたものであって,企業秩序違反の程度は重大なものというべきである。そして,原告に対する事情聴取をして弁明の機会を付与し,懲罰委員会による決定を経てされたものであって,手続に不相当な点は見当たらない。
したがって,本件懲戒解雇は,客観的に合理的な理由を欠くとはいえないし,社会通念上相当であると認められないということもできず,懲戒権を濫用するものということはできないから,有効である。