もう8月も終わり、暑い夏が去ってくれるのは嬉しいけれど、4月から始まった万博の会期も終わりに近づいているのは寂しい。始まる前はいろいろと文句を言う人がいましたが、始まってみれば各国のパビリオンの面白い展示にみんな夢中になっている様子。結局、やってよかったとみんな思っているんじゃない?

 

ところで、大阪芸術大学がこの大阪・関西万博にいろいろなところで協力していて、すこぶる評判もいいことをご存じでしたか?

万博に関することで大阪芸大が関係した物事を簡単にご紹介すると、そもそもマスコットキャラクターのミャクミャクは大阪芸大美術学科出身の山下浩平さんのデザインがコンペで採用されたもの。これも最初は気持ち悪いとかなんとか言われましたが、今では大人気。売店でお土産のグッズを買う人が行列をなしているのだそうです。

 

大阪ヘルスケアパビリオンは複数の健康関連企業が出展していますが、大阪芸大はファインバブルメーカー・サイエンス社の展示に協力、放送学科の学生が開催前からキャンペーンサイトを立ち上げてPRに努めました。

 

5月には万博会場内のシャインハットで行われイベント「大阪文化祭」で、大阪芸大の教員と学生が音楽とダンスのパフォーマンス。音楽はマエストロ・大友直人さんの指揮で大阪芸大オーケストラが演奏、森川美穂さんがアニソンを歌い、マーク・パンサーさんがラップを披露、これ全員大阪芸大の教員でもあるのです。そして音楽に合わせて大阪芸大舞台芸術学科の学生がダンス。圧巻のステージを展開しました。

 

7月はイタリア館で行われた手帳で有名なモレスキン社の展示会イベントに大阪芸大デザイン学科の学生が参加。モレスキンをテーマにしたポスターを制作し、館内で掲示されました。

 

同じく7月にはオーストリア館から「シュタイヤーマルク屏風」が大阪芸大に寄贈されました。オーストリア館には戦国時代に日本から伝わったと思われる「大阪図屏風」をもとにしたデジタルアート作品などが展示されていましたが、展示品の一つでオーストリア人アーティストが描いた洋画の屏風が「ぜひ大阪の教育機関にい」と寄贈されたとのこと。アートが結ぶ日本とオーストリアの友好、素敵です。

 

さらに会場内のEXPOメッセ「WASSE」で開催された、日本の美と心が世界をつなぐ「第3回日本国際芸術祭/大阪・関西万博展」では大阪芸大出身の新進気鋭のアーティスト、松本セイジさん、茂本ヒデキチさん、石塚大介さん、THRREE(中野龍治・和田諒也)が作品を出品、ライブペインティングも行い注目を集めました。

 

そして吉本興業のパビリオン「waraii myraii館」にあるアシタ広場の「盆踊りのアシタ」で使用するやぐらをデザイン学科の学生がデザイン。パビリオンのプロデューサーを務めた杉山恒太郎さんがデザイン学科の客員教授を務めている縁で生まれたコラボです。授業の一環として携わったそうですが、こんな楽しい授業をサボる人はいないでしょう。

 

一生に一度かもしれない万国博覧会の運営サイドに関われたのは大きな経験であり、一生の思い出になるはず。会期はあと2ヵ月を切りましたが、まだ訪れていない方は、ぜひお早めに!

 

 

お笑い賞レースといえばまず思いつくのが「M-1」、コントの「キングオブコント」、ピン芸人の「R-1」、女性芸人の「THE W」、ベテラン芸人の「THE SECOND」…。多くの芸人たちが自らの夢とプライドを賭けてNo.1を目指す戦いは、いつの間にか国民的な行事となりました。

 

この賞レースで大阪芸大の存在感がヤバイことになっているのをご存じですか?2019年の「M-1」を最高得点で制覇したのは「オカンが言うのよ~」「なんぼあっても困りませんからね」「コーンフレークやないかい」でおなじみのミルクボーイ。2021年の「キングオブコント」で優勝した空気階段の鈴木もぐら、同じ年に「THE W」で優勝したオダウエダの植田紫帆。優勝はしていませんが「キングオブコント」のファイナリストに残ったことがあるななまがり、そして今年「おもしろ荘」で優勝したネコニスズの舘野忠臣は全員大阪芸大の卒業生、さらに言うなら「落語研究寄席の会」のOBなのです。

 

これらメンバーから「レジェンド」として尊敬されているのが舘野。彼が入会するまで「寄席の会」は普通に落語愛好者のサークルでしたが、「俺がやりたいお笑いは落語じゃない」と気付いた舘野は落研メンバーを誘って漫才コンビ「野球家族」を結成。「芸大漫才」というイベントを立ち上げ、学外のお笑いイベントにも出場するなど「大阪芸大に舘野あり」の評判を取るほどの人気者になったのでした。

 

舘野が4年生の時に入学してきたのが内海と駒場。この2人に漫才をすることを薦め、結成されたのがミルクボーイ。当時の舘野はプロデューサーでもあったのでした。ミルクボーイの1年下がななまがりの初瀬と森下。もともとお笑いをやりたいと考えていた2人でしたが、新入生歓迎ライブでミルクボーイを見てあまりの面白さ、レベルの高さに驚き「この人たちの近くにいたい」と迷わず落研に入会。彼らに続くのは空気階段もぐらです。もぐらもまた歓迎ライブでミルクボーイとななまがりのパフォーマンスを見て入会します。オダウエダ植田はななまがりと入れ替わりに大阪芸大に入学しますが、先輩からミルクボーイ、ななまがりの過去のライブのビデオを見せられて入会したのでした。野球で言えば「松坂世代」、才能豊かな人材は同時代に集中的に誕生する傾向がありますが、2000年代の大阪芸大はさながらお笑い偏差値が異常に高い、芸人の養成所のようになっていたのでした。

 

面白いのは、彼らの「生みの親」であるはずの舘野が世間に認められたのがもっとも遅く、もっとも早く賞レースのファイナリストに名を連ねたななまがりがまだ優勝していないことかもしれません。ななまがりの賞レース優勝、そして彼らに続く大阪芸大芸人の出現、さらには舞台芸術学科に「お笑いコース」ができることを期待したいと思います。

 

 

「別に芸大なんか行かなくても専門学校で技術は身に付けられるでしょ」

といった声を聞くことがあります。

「芸大で4年も遊ぶより専門学校で2年間しっかり勉強したほうが現場で即戦力になる」

みたいなことを言う人もいるます。

想像ですが、そういうことを言う殆どの人が、芸大にも専門学校にも行っていないのだと思います。実際に専門学校でしっかり勉強した人、芸術大学で真剣に4年間芸術と向き合った人は自分以外の進路を選んだ人に対して限りなく敬意を持っています。専門学校の人は芸大に対して、芸大の人は専門学校に対してあちらはあちらで真摯に学んでいるのだろうと考えるものです。だからコメントを求められても差しさわりのないことしか言わないことが多いです。というか、自分がするべきことで頭が一杯で、他人のことをいちいち批評する気にならないということはあるかもしれません。

 

芸術系大学は直接ビジネスに関係しない部分もあるため(それも一つの誤解ではありますが)普通科の大学の方から馬鹿にされたり低く見られることがあります。まあ、人の勝手ですからでどうでもいいのですが、自分の人生がうまくいっていない人ほど他人のことをどうこう言いたがるような気がします。

もちろん私立の芸大は普通の大学よりお金もかかるのは事実ですから、親のすねをかじって遊んでいると思いたいのでしょう。そういう学生もいますよ。だからどうだという話です。なにかあなたに迷惑をかけましたか?

 

なかなか本題に入れずすみません。

芸大か専門学校かで悩む方というのは、デザイナーになりたいとか、フォトグラファーになりたいとか、レコーディングエンジニアになりたいとか、あるいは舞台美術に携わりたいといような方ではないかと思います。夢を実現できるのは専門学校だろうか、芸術大学だろうかと、迷うのでしょう。

ここからは芸大、とくに大阪芸大の話になるのですが、そういった専門職が仕事をする環境がしっかりキャンパス内にあります。信じられないかもしれませんが、キャンパスに映画の撮影所があり、本格的な劇場があり、テレビ放送の中継車があり、もちろん絵を描いたりデザインをしたりするための環境もしっかり整っています。3Dプリンタなんかもあります。大阪芸大には建築学科もありますが、プリツカー賞を受賞した妹島和世氏設計の校舎があったりします。お城もありますが、それはまあいいでしょう。

とにかく、「学生だから」「まだ勉強中の身だから」とお茶を濁すようなことが何ひとつない。やるなら徹底的、揃えるならプロ仕様、購入するなら最新のもの。そういうポリシーがあるのかどうかまでは知りませんが、設備や環境を見ればそうとしか思えない。

普通に考えて、専門学校ではここまで揃わないでしょう。

 

また、大阪芸大は15もの学科があり、空いている時間には他の学科の授業を受けられます。自分の専攻以外の学生と知り合いになれる、これは卒業してアート方面で働き出したらやばいくらい役に立ちます。

誰でも想像がつくと思いますが、たとえば映画を作るには映画監督や脚本家や俳優が必要なのはもちろんですが、音楽、美術、照明などそれぞれの分野の人材が必要です。完成して宣伝するならグラフィックデザイナーが必要ですしスチル写真を撮るフォトグラファーもほしいですよね。特撮で街並みを作るなら造形ができる人も必要になる。大阪芸大にはそのすべての分野の「卵」がいます。先生もいます。学内で異学科交流があり、必要な人材の協力を得ることができます。

もちろん、待っていれば誰かがあなたの世話を焼いてくれるということはありません。有能な学生は自分から動いて人と人をつなげ、自分の作品を制作しています。

就職も、世間で言う「芸大出ても美術の先生しかなれるものがない」なんて大ウソ。クリエイティブ方面からきっちり求人は来ますから。就職率が普通科の大学に比べて低いのは、ソロアーティストとして活動したり、俳優を目指してアルバイトしたり、そういう人が少なからずいるからです。

 

専門学校がどうかはよく分かりません。

大阪芸大はこういうところですのでご参考まで。