仕事でホンダ モンキーBAJAのお相手をしました。
ワンボックス搭載でご来店されたお客様。
小さいので、ラダーフレームも使わず車体を降ろし、店内へ。
息子さんのバイクらしいのですが、モンキーを数台所有され、
息子さんとロングツーリングに行くのだとか。
で、ご依頼の内容ですが、「急にライトが暗くなり、ウィンカーも正常に
機能しない」との事。
配線図やマニュアル、スペアパーツ類も持ち込まれています。
車体はメンテナンスを考えて極力ストリップされていて、
すぐに手を付けられるようにしてくれました。 助かります。
では、配線図と実車を見比べて、どう手を着けるか考えます。
車体はバッテリーレスで、純正12V仕様です。
でも、配線図には「バッテリー」と書かれている物があります。
モンキーマニアならば知っている方もいるとは思いますが、
エンジン始動前にニュートラルランプを点灯させる目的で、
2Vの(12Vじゃないよ)ランプ系バッテリーがあるんです。
ニュートラルランプ以外は、すべてAC12Vで使用しているので、
不具合個所を調べるうえでは、ちょっと楽かな?
このモンキーのジェネレーターは、保安装置用は非接地のコイルを
使用しています。
コイル途中で接地したりすると、発生電圧が下がるので、まずコイルのメガー(絶縁抵抗測定)から。
参考に測ったコイルの両端抵抗は0Ωで問題無し。
が、メガーの50Vレンジでは”0MΩ”で、絶縁不良です。
う~ん、、、念のために測ったメガーがダメだと、ジェネばらさなきゃ
ならんな。(;^_^A
フライホイールを外し、コイルの両端をアース間で抵抗測定すると、
白/黄側は125Ω、緑側は4Ωほどです。
どこが接地しているんだろう?
テスターで抵抗が測定できるぐらいだから、見ればわかるハズ。
保護チューブをズラしてみても、傷などは無いし・・・
結局、コネクターを外して、保護チューブを全部取って目視しましたが、悪い所は見つからず。
元通り組付け直ししたら、絶縁は問題無い値(100MΩ以上)に
なっちゃいました。
なんだったの??
気を取り直して、エンジン始動でAC電圧を測定します。
アイドリング付近で8V、アクセルを少々開けても9Vぐらい。
マニュアルの記載だと13~15Vと書かれているので、
非常に低いです。
古いバイクだと、コイルや各配線がクタビレて、電圧が出ない事は
多々ありますが、
このモンキーは新しいので、コイルが原因では無いでしょう。
電圧を制御しているのは、
このACレギュレーター。
ホンダ系では、内部に整流用のダイオードを内蔵した、4端子の
レギュレーターをよく見ますが、電圧制御機能だけの物を
私は初めて見ました。
これを外して、エンジン始動すると13V以上出力します。
これが原因ですね。
実はこのACレギュ、持ち込み前に症状改善を試み、別車両の物と
取り替えたらしいんです。
で、元々付いていた物がスペアパーツ内にあり、取り替えてみました。
エンジン始動すると10~11Vぐらいと低く、ウィンカーは回転を
上げればなんとか点滅するぐらい。
レギュを外した状態ならば、ウィンカーは正常に点滅。
ご依頼の不具合は、このレギュを交換すれば治ります。
ほかに不具合が無いかと調べると、ニュートラルランプが
点灯しません。
球切れかな?と思い、電球を調べるも、球切れではありません。
電源は先に話した2Vバッテリー。
レギュの奥に隠れているコイツです。
エンジンを始動すると、バッテリー両端は2V程度に上昇しますが、
エンジンを停止するとmV単位に落ちます。
バッテリーがダメですね。
で、バッテリーを切り離し、バッテリー配線のメインハーネス側に
直流発生装置の2Vを印加してみます。
が、ニュートラルランプは点灯せず。
ん?? なんで???
ランプを外すと、
薄暗~く点灯してます。
ランプがメーターケースについた状態では点灯しているようには
見えません。
2V系のプラス側は、電圧は問題無し。
アース側のニュートラルスイッチ回路は、テスターで抵抗を測ると、
200kΩ以上あり、この抵抗値では電球が正常に点灯しません。
配線図だと、ニュートラルスイッチ側には何も付属回路は無い
のですが、
回路を追いかけると、途中で配線色が変わっているので、
何かあります。
あったのはダイオード !
ニュートラルランプとイグナイターのインターロックに使うための
ダイオードです。
ダイオードって、ダイオードがONになるための「順方向電圧」って言う
のが必ず伴います。
ONになるために、この電圧分だけ電圧降下を起こします。
今回のダイオードは、順方向電圧が 0.5 V 程ありました。
って事は、その他の接触抵抗などの抵抗値がゼロであっても、
0.5 Vは確実に低下するって事です。
2V系のバッテリーで駆動する、2V定格のランプを点灯させるのに、
ダイオードで 0.5 V低下するんだから、ランプに掛かる電圧は
1.5 Vって事です。
ホンダはバカなんでしょうか?
ダイオードが必要ならば、バッテリーを3Vの物にして、
2Vの電球を点灯させれば良いのに。
しかも、ニュートラルスイッチは油中のスイッチだから、
接触抵抗はかなり大きい。
ニュートラルランプが全点灯する訳、無いですよね。
で、エンジン始動前は、回路が健全でもニュートラルランプは
半点灯で見えないので、
バッテリーは有っても無くても同じだから、接続しない事になりました。
(垂れ下がっている緑,赤の線が、バッテリーに接続される線です)
ここまで来たら、ACレギュレーターを交換すれば修理は完了ですが、
ACレギュレーターはお客様でも交換できますので、
この状態でお引渡しをして、お客様側でACレギュを交換する事で
話がまとまりました。
長々と書きましたが、作業時間は1日。
交換部品は無しです。
これなら修理費用が安いですからね。 お財布に優しい。
おしまい