一章
僕って言うのは今ではもう懐かしいことだ。
今では市長の息子として、自分のやるべきことをやっているつもりだ。
昔は「サンタなんていない」なんてことを言っていたが、今では信じてもいいような気がしている。
「・・・って言ったって、親父はそれを否定するんだろーけどな」
俺は頭を掻いて、そう呟く。
窓の外では雪が少しづつ、積っていくのが分かる。
「ホワイトクリスマス・・・ってやつか。イブなんだけどな」
うっすらと白くなった窓を少し撫でると、そこになぞった跡が残った。
「・・・あいつら、まだ実行してんのかな?」
「実は先生は、サンタの孫なんです!」
そういった先生の口元は少しニヤリと歪んでいた。
「そ…そんなのウソだ。第一、サンタなんてものがいるって証拠があるのかよ!!」
当時の俺。いや、僕は先生に向かってそう言った。
「お前な。まだサンタを否定してんのか?先生がサンタの孫なんだからいるだろ」
クラスで一番のお調子者はそう言った。
今となってはこれもいい思い出だったのかもな・・・
「・・・先生がサンタの孫って証拠がないじゃないか!!」
僕はなくじゃくりながら大声で言った。
「証拠ですか?」
「そうだよ!!証拠だよ!!」
「・・・・・よく考えてみれば、俺のこの言葉がこの事件のきっかけになったんだっけか」
俺はまた頭を掻いた。
「馬鹿な事をしていたんだな・・・・俺って」
俺は近くに置いていた携帯電話を手に取った。
「あぁ・・・俺だ。覚えているか?小学校の時一緒だった、市長の息子の・・・」
俺はこのとき、なんであいつに電話をかけようと思ったかわからない。
ただ、久しぶりに話したかっただけなのか…それとも・・・・
俺は自転車にまたがってこぎ始めた。
雪は見かけよりずっと浅いようだった。
いつの間にか俺は、あの日の冬の続きに首を突っ込んだようだ。