― 出典: 片想い (文春文庫) , 368ページ より
難しい。。
時代に先駆けて、ジェンダーを扱った作品。
その中に、戸籍すり替え、と言うものがあって、途中で誰が誰やら何がなにやらわからなくなってしまった

何の予備知識もなく読み始めたので、初めのうちは「片想い」はどこで出てくるんだろう、とずっと思ってました

まさかそんなに深い意味の「片想い」だったとは

事の起こりは、ある殺人事件。
それ自体は特に変わったものではなく、あるホステスと彼女に入れあげたストーカー、そして彼女を守ろうとする男、の三角関係が遠因、なのですが。。
彼女が彼女ではなく、彼が彼でなかったら

途端にストーリーは複雑化していきますわ

今では、性同一性障害はよく聞く病気。
病気、と言ってしまうのもちょっと抵抗はあるのですが。。
それが全く一般化していない時代の作品、であるからして、この作品が当時どんな評価をされたのか、ちょっと気になるところです

トランスジェンダー(実はこの言葉の意味もよく理解してはいないのですが)とそれとして生きて行く難しさ、周りの人たちとの関係の持ち方の難しさ、いろんな意味での「片想い」が描かれます。
殺人事件を起こした美月。
そしてその学生時代のアメフト部仲間、哲郎。
マネージャー仲間で哲郎の妻である理沙子。
哲郎の家へ告白をしに来た美月。
それをかばって警察に行かせまいとする理沙子。
悩む哲郎。
当時のアメフト部の仲間たちが、敵となり味方となり絡み合い、事態は三人にとどまらず意外なところへ発展していきます。
読んでも読んでも、展開が読めず

この話が一体どこへ行くのか、どこで落ち着くのか、さっぱりでした

最後の最後まで

ジェンダーを扱うあまり、事件のこと自体はちょっと軽くなった感がなきにしもあらず。。

でも、最後の三浦半島でのシーン。
敵と思われていた(ここでも、完全な意味での敵ではなく黒に近いグレーな存在)の早田と哲郎の友情に、少し涙

そしてラスト、意外
な悲しいクライマックス。もっと他の道がなかったのかな、と切なくなりました

性同一性障害や、女装好きな男たち、またその逆の人たち、そんな人たちが一見市民権を得て、テレビやメディアで活躍する昨今ですが、私たちは一体その苦悩をどれほど理解しているか。
そして彼らや彼女らを、どれほどの意味で受け入れているか?
彼らの苦悩は、きっとこれからも終わることはないでしょう。
メディアで色もの扱いされている限り。
ネタ的に扱う人たちがいる限り。
そして自分がその一人ではない、とは私は言えない。
冒頭に引用したように、彼らの「片想い」は永遠に続くのかもしれません。
固定観念って、難しいね

目を付けた作者に拍手。