夏の入り口




梅雨明けも近いのだろうか

日差しの強さが変わりはじめて

もうじき

本格的な夏を

知らせてくれるような日だった



昨日、わたしは傷ついた

何年も繰り返している
苦い思いが胸にあった


向き合ったり

人に話しても
結局、また同じ場所へと

戻ってしまう


直面するたびに

からだも嘘がつけなくて


人に話したところで

楽になんてなれない

あきらめに近い境地にいた


そんな日に

キミがここに来た


少しでも元気でいたいと思うのに

近頃、来る日に限って

具合が悪い

わたしはまだ、強がってしまう



その気配だけで

からだの緊張がゆっくり

ほどけはじめて


もう、誰かに

話すつもりもなかったのに

気づけば思いが

口からこぼれていた


キミはいつも、

励ましも、 正しさも、

アドバイスもない


「わかりますよ」
そのひと言だけ静かに置いて、 

痛むからだに
ぬくもりを添えながら


「暑くなる前に、外にでませんか」

珍しく、キミの方からそう言ってくれた


言葉を重ねる代わりに

わたしの心を外へ向けるように


どんな励ましの言葉より 

救いだったかもしれない

 

なにかを吹り切ったように

わたしは頷いて


初夏の風に押されるように

そのまま、ふたりで

夏の入り口へ向かった




梅雨明け前とはいえ、

日差しはやっぱり強い

今日のわたしは

ブルーのワンピースに

麦わら帽子をかぶり、 

耳元には小さくきらめく真珠のピアス


夏の光を受けるたび

胸元の六芒星が

小さく揺れていた



この店のソフトクリームは
去年の夏の終わり以来

目の前にはグリーンカーテン

景色は去年と変わらないまま


ベンチに

横並びに腰をかけると


キミの手にある白いカップに

自分のカップを寄せて

「乾杯!」と言いながら

カチンと小さく鳴らしてみせた


「久しぶりに外に出られたから」


ほんとうは覚えていたのに
外へ出られたのはいつ以來かなと

知らないふりをするわたしに

キミは冬のあの日を覚えていた


ふと、視線を足元に落としたとき

もう一つ見せたいものを思い出した


「ねえ、見てこれ」


真新しいニューバランスからのぞく

黒いソックス

足首にはスヌーピーが笑っていた

 

「前に話したやつ」

「履きやすくてお気に入りなの」


まるで大人と少女が

同居しているようで

自分でも笑ってしまった


ふと横をふり向くと

いつも冷静なキミが

やわらかい表情で微笑んでいた


さっきまでの心の曇りが

どこまでも青い空へと

ほどけていった



来てよかった


心の中で 

何度も そう繰り返していた



※私two-miracleの綴る詩は

内にある記憶や感情と、創作の中で重なり合う

様々な愛のかたちを、丁寧に描いています。

この詩に触れた方が、 それぞれの心と記憶に、 

静かに響きますように。


TWO Miracleの詩に

音(音楽)がつきました!

花かったらご視聴ください花


▼『火花』

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処女作『愛しすぎたわたしへ』

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