桜の終わる頃に




到着が少し遅くて

いつもより今日は、落ち着かない


窓を少し開けたとき、

雨音を遮るように

自転車のブレーキが

かすかに軋む音が

聞こえてきた



このところ

ずっと春の嵐


体調が落ちている


咲ききった桜はもう 

今日で散ってしまうだろう


去年の今頃は

あの桜の木を

一緒に眺めていた


今でも秘密にしていることがある


わたしはあの日、

スマホをわざと

置いてきた


あの桜が

どんなふうに

切り取られるのか

その世界に触れてみたかった


「何枚か撮って」

そうお願いすると


はじめ

戸惑いながら、

そのうち

時間を忘れたように

スマホをかざす姿を

はっきり覚えている


別れてから

写真が届いて

私の見る世界と

違うと気づいた

あのときから


今こうして

ここで過ごす時間も

この心とキミのものは

別物なのだろうと、知る




窓を打つ雨と

部屋の静けさの隙間に

しばらく耳を澄ませたあと



「今年の作品も見たかったわ」

ぽつりとつぶやくと


次は外に出ようと

提案してくれるキミに


しばらく会えなくなるかもしれないことを

今は言わないでおいた



来るとき袖が濡れたのか、

少し湿った服の匂いと

ひんやりとした感触が

いつもより

手のぬくもりを

やさしく際立たせる



ずっとは続かないだろう

このひとときに

わたしはまだ

おびえていることを

知りながら



今日こうして 

この時間の中にいることを

ただ、受け取っている



※私two-miracleの綴る詩は

内にある記憶や感情と、創作の中で重なり合う

様々な愛のかたちを、丁寧に描いています。

この詩に触れた方が、 それぞれの心と記憶に、 

静かに響きますように。


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