あの日から流れているもの
街中がイルミネーションで輝く季節。
キミとここで会うのも、
今年は今日で最後かな?
区切りをつけるように
部屋のツリーに光を灯す。
スピーカーからは
年末スペシャルバージョン、
クリスマスジャズがゆるやかに流れている。
年の瀬らしく、どちらともなく
会話は自然と今年を振り返る。
すると、キミのほうから、
あの日のことを口にした。
「大晦日に電話かけてきて、
30分以上はなしてましたよね」
もちろん、忘れていない。
それに、キミも覚えていてくれたことに
少し胸があたたまる。

あのときのわたしは
今よりずっと体が動いていたのに、
今よりずっと追い詰められていて、
世界を斜めにしか見られなかった。
まるで、暗がりで一筋の光を必死に探すように
わたしは一本の電話をかけた。そして——
キミとつながった。
詳しいことは聞かないけど
キミは、年の瀬も元旦も働いてひとり持ち場を任されていたんだろうか。
思えば、あのときのキミは
どこか退屈そうで
どこかさみしそうな空気がただよっていた。
不思議と話が弾んで
丁寧に対応してくれたあと
キミはまさかの
「明日1月1日に折り返します」と返答。
「え?元旦?!お正月くらい休んで。
2日のお返事でいいです」
わたしがあの日の言葉を再現すると、
二人の中で笑いがこぼれた。
それから私たちは
会話の流れで生まれた
小さな合図がひとつ残った。

一年経ったいまだからこそ、
ゆっくり見えてくるものがある。
ひょっとしたらあの日のキミも、
胸の奥に、少しのさみしさや
言葉にならない「何か」を
抱えていたんじゃないかな。
世間は賑わう大晦日とお正月。
けれどキミは働き
わたしは暗がりで立ちすくんで。
全く違うようでいて
どこか似ていた温度やさみしさが共鳴して
“はじめまして”とは思えない
30分のキャッチボールになったのかもしれない。
元気だったら、
絶対に出会うことのなかったわたしたち。
宇宙の采配は、
辛いときほど
そっと背中を押す風のような
やさしさをもたらしてくれる。
わたしの学びは
あの瞬間からはじまった。
すべては自分を成長させるために。
きっと、キミもそうなんじゃないかな?
来年がどうなっていくのかはわからない。
けれどあの日から続くものは
私が還っていく流れの中にある——
今は、そう信じていたい。

※私two-miracleの綴る詩は
わたしの心の内や創作の中に
同時に存在する、いくつもの
愛のカタチを描いています。
誰かを裏切ったり
否定する意図はなく
ただ、一人の人間の記憶として
心を込めて紡いだものです。
この詩に触れた方が
それぞれの心にある愛の記憶と
静かに響き合えますように。
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