そよ風と栗色のモンブラン



うちから徒歩10分の水車公園。
すべり台と鉄棒が2つだけの
小さな三角公園。
それは住宅街の一角にひっそり佇む
陽だまりみたいな公園。

「座りやすいベンチがあるから」
そんな理由から
何度か付き添ってもらった場所。


12月とは思えないほど
今日は日差しがあたたかい。
まるで私の気持ちを
後押ししてくれるみたいで
思わずほころびがこぼれる。


公園に到着すると
いつもの特等席には先客のおばさんが
お弁当を広げている。
残っているのは
背もたれのないベンチだけ。


痛みで座っていられるのか不安で
しょんぼりするわたしに
さりげなく
手持ちの座布団を広げてくれて
空くまで様子をみましょうと
当たりまえの優しさをみせてくれた。




「開けてみて」

そっと、わたしが差し出したのはケーキの箱。
一年分の“ありがとう”を
小さな箱につめて。

少し戸惑いながら受け取り
長くて綺麗な指で
テープをゆっくり、丁寧に外していく。

その仕草に、いつもの
“真剣な時の手”がふっと重なり
一瞬、心がふわりと揺れた。


箱の中には
栗色の丘みたいなモンブランがふたつ。

「私が一番好きなモンブランなの。」
そう伝えながらも
今日のわたしのお腹では
丸ごと一個はちょっと無理そう。

「よかったら、こっちも半分食べて」

遠慮がちにためらう様子に
むしろ食べてほしい、とフォークを手渡すと
再び丁寧な手つきで
半分に切り分けてくれた。




ターコイズブルーに
黄色い小花を散りばめた紙皿。
その上に綺麗に切り分けた
栗色のモンブランを乗せ、
そっと手渡してくれる。

ほんの少し、指先が触れ合う。

触れ慣れているはずなのに
なんでだろう。

いつもの手が

今日は

胸の温度をそっと上げてくる。



冬の光に照らされたケーキは
特別なご褒美みたいに綺麗で
ふたりして
しばらく眺めてしまった。


ひと口食べて、
「ね?」と目で合図をするわたしに
「おいしい!」と無邪気な顔。
その横顔は、まるで
大人と子どもの狭間を
行き来しているようで
なんだか微笑ましい。


陽射しの強さに
「これ、シミになるかな」
冗談めかしてつぶやくと
影を探すように滑り台を見て
ためらいもなく席を交代してくれた。
その自然な優しさが、
また私の心をやわらかくする。


隣のベンチでは
おばさんがまだお弁当を広げていて、
私たちはその横でモンブランをつつく。

「小さな公園で大人が三人、なにやってんだか」
そう言って笑い合う声が、
そよ風と共にやさしく空へ溶けていった。

結局、
私はモンブランを半分。
むこうは、ひとつ半。
ちょっとおかしな配分?
だけど、全部あげるよりずっと良かった。

美味しいとありがとうを共有する
今日のわたしたちに残った
“やさしさのかたち”。

私の感謝と小さなサプライズ。
キミの胸の片隅に
そっと残りますように。



※私two-miracleの綴る詩は

内にある記憶や感情と、創作の中で重なり合う

様々な愛のかたちを、丁寧に描いています。

この詩に触れた方が、 それぞれの心と記憶に、 

静かに響きますように。


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