やわらかな約束




こじらせたのは

たったひとつの虫歯


目覚めた瞬間 

嘘でしょう?


荒波の痛みが

打ち寄せる日々が

何日も続く



お風呂に入れない

髪も洗えない

よれたワンピースを

まとうわたし


最低限の身だしなみ 

どんなに

心が折れそうでも

整えてきたのに


沈んだ顔

何もかも

隠せない



手の温もりで

ほっとしたのか

涙がこぼれ落ちた


泣いたのはニ度目

初めて会った日と今


「母と変わらない年齢」


そう聞いてから

小さなプライドが

踏みとどまっていたのに


止まない痛みと

抗えない感情が

あふれてきて――



右腰の痛みに 

そっと手を添えながら


ふいにこぼす

「母に似ている」と


その、平然と語る

セピア色の記憶には

触れられない傷が

揺れていた


その記憶が

胸を打ったとき


梅の花が咲いていた公園で


「絶望している人を救いたい」


まっすぐな眼差しで

つぶやいた

あの日が蘇り

点と点が

一本の線に繋がる


「だから、出会ったのかな」  


気づいたら口からこぼれる


少し戸惑うように

キミが小さく頷いたとき


近づきすぎない距離で

かすかに何かが触れ

痛みを知る者同士の

何かが

響き合う気配がした





涙が乾いた頃


「ずっと続くわけじゃない。

必ず引いていく。

僕の言うこと信じられますか?」


まるで、

迷いをすくい取るように 

確かめてくる


「信じるよ」 


だって それは

自分を信じることだから



翌朝

三度目の治療


嘘のように

寝込まなかったのは

安堵に包まれたからだろうか



あの日交わした

やわらかな約束がなければ

まだ、立ち止まっていただろう

 


勇気と信頼をくれた

あの日を

そっと

胸の奥に忍ばせながら


脆さと一緒に

わたしは

「約束」の続きを、歩んでく


※私two-miracleの綴る詩は

内にある記憶や感情と、創作の中で重なり合う

様々な愛のかたちを、丁寧に描いています。

この詩に触れた方が、 それぞれの心と記憶に、 

静かに響きますように。