【市場経済メカニズム】
現社・政経の経済分野には、暗記だけでは全く意味のない、理論を必要とする分野があります。理論経済を中心に、分かりやすく説明したいと思います。
◆市場メカニズム
私たちの経済は、「自由主義経済」です。つまり、「社会主義経済」のように、政府が市場の価格を勝手に決めることがありません。
それでも、市場主義経済では、価格が一定の金額で安定します。アダムスミスは、この働きの神秘性を「神の見えざる手」と評したのです。
この機能を理論立てて理解しましょう。教科書や参考書には、需要曲線・供給曲線が書かれていますね(需要曲線が右下がりということは、曲線に「“」をつければ「じ」になるとこじつければ混乱しないでしょう)。それこそが、神の見えざる手の正体です。
価格が下がれば需要が上がる(=たくさん買う)、価格が上がれば需要が下がる(=あまり買わない)を表したのが需要曲線です。
価格が下がれば供給も下がる(=儲けが少ないのであまり作らない)、価格が上がれば供給も上がる(=儲けが多いのでたくさん作る)を表したのが供給曲線です。
この二つの曲線が重なったときに、買い手からも売り手からも文句のない「均衡価格」になり、安定するわけです。
少し注意すべきは、この働きは「完全競争市場」でないと働かないということ。条件としては以下の4つです。
1買い手と売り手がたくさんいること
(価格硬直化が起こってしまうから)
2商品が同質で、差別化されていないこと
(たとえば、鉛筆と消しゴムの二つで競争することはできません。「鉛筆があるから消しゴムはいらないや」と思わないでしょう。むしろ、この二つは補完財であって、競争とはほど遠いです。A社の鉛筆とB社の鉛筆、という風に同質なものでなければ競争は起きません)
3商品の情報が、正確に伝わっていること
(たとえば、故障したパソコンを、買い手にそのことを告げずに格安で売った場合、それは詐欺であって、売り手が価格を支配しているのです。それでは曲線が成り立たないですよね)
4市場への参入・退出が自由
(もし、市場へ参入することができずに、同じ企業のみが、商品の販売権を持っていたとしたらどうなるでしょう。すると、その固定された企業たちが、価格を相談して決めること、つまり「カルテル」が起こってしまいかねませんね)
この4つがきちんと成立している時、完全競争市場が形成され、需要・供給曲線もきちんと働きます。
では、曲線の動くパターンの例を見ていきましょう。
例1) 給料が上がった!→商品Aの需要が上がる=需要曲線が右にシフト→価格が上がる
例2) 商品Aの原材料の値段が高騰!→商品Aの供給が下がる=供給曲線が左にシフト(儲けが少なくなると、あまり作らなくなるから)→価格が上がる
とにかく、企業の儲けが下がるときに供給量が減って、儲けが上がるときに供給量が増えます。
また、消費者にお金の余裕ができたり商品の人気が上がれば需要は上がり、お金が切迫したり商品の人気が落ちれば需要は下がります。
【経済政策】
◆日本銀行の金融政策
日本銀行には、景気を調整するという機能があります。
ずっと景気が高いままにしておけばいいんじゃないか、という疑問を抱くかもしれませんが、そうすると、反動がひどいのです。
バブル景気を例に挙げればわかると思いますが、上がりすぎた景気の後には、必ず崩壊があります。それを食い止めるのも日銀の仕事です。
一応説明をしておくと、日本銀行は、市中銀行にのみ融資を行います。企業や個人には融資を行いませんので注意してください。
まず押さえておくべきことは、「好景気=お金が市場に多く出回っていること」ということです。逆に「不景気=お金が市場にあまり出回っていないこと」ですね。
これを押さえればあとは簡単。要は、日銀がやることは「好況時に市場からお金を取り上げ、不況時に市場にお金を出回らせる」ことなんです。
以下、3つが、日銀による操作です。
(1)公定歩合操作
公定歩合とは、「日銀が市中銀行にお金を貸し出す時の金利」のことです。市中銀行がお金を借りるとすると、いくらか利子をつけて返さなければならないということです。
返す利子が高くなると、市中銀行は負担になりますので、あまり借りなくなります。逆に、利子が低くなれば、市中銀行は負担が軽くなるので、バンバン借りることができます。
さて、市中銀行にお金がいけば、市場にお金が出回るということ。つまり、下のことが言えるわけです。
・「好景気→公定歩合を上げる→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→公定歩合を下げる→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
(2)支払準備率操作
支払準備率とは、「市中銀行に預金されたお金を、日銀が預かってくれる割合」のことです。100万円を市中銀行に預金すれば、そのなかの○%を日銀に渡すわけです。
ざっくばらんに言うと、市中銀行から取り上げるお金の割合です。もちろん取り上げる割合が高ければ、市中銀行が使えるお金も減り、あまりお金が出回らなくなる。
逆に、取り上げる割合が減れば、市中銀行が使えるお金も増えて、たくさんお金が出回ることになります。まとめると以下のようになります。
・「好景気→支払準備率を上げる→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→支払準備率を下げる→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
(3)公開市場操作
公開市場操作とは、「日銀が有価証券を売買して、景気を操作すること」です。有価証券は一種のお金と交換してくれる小切手、とでも考えてよいでしょう。
これを銀行間で取引するのです。日銀が市中銀行に有価証券を売ることを「売りオペ」、買うことを「買いオペ」と言います。
日銀が市中銀行に有価証券を売るということは、市中銀行はお金を日銀に渡さなければならないのです。
逆に、日銀が市中銀行から有価証券を買うということは、市中銀行は日銀からお金をもらいます。まとめると以下のようになります。
・「好景気→売りオペ→市中銀行はお金をとられる→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→買いオペ→市中銀行にお金を与える→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
◆政府による財政政策
政府にも、景気を調整する機能があります。特徴に分けて、二つに分類できます。
(1)裁量的財政政策(フィスカルポリシー)
政府が意志的に景気を調整する機能です。景気の良し悪しは、市場にお金がどれほど出回っているかで決まると書きましたね。
つまり、国民がどれほど買い物などで消費しているかにも影響します。お金をたくさん使えばたくさん出回るし、あまり使わなければあまり出回らないのです。
・増税/減税
たとえば消費税が上がれば、その分、商品を買う時の値段が高くなります。すると、あまりモノを買わないでおこう、ということになりますね。
逆に、消費税が下がれば、モノを買う頻度が高くなります。まとめると以下のようになります。
・「好景気→増税→市場にあまりお金が出回らない→好景気が改善される」
・「不景気→減税→市場にたくさんお金が出回る→不景気が改善される」
・公共投資
公共投資を行うと、その分の労働が増えるし、たとえば観光施設を造れば人が集まって、周辺の市場に活気を与えてくれます。
すると、お金の巡りもよくなります。逆に、公共投資を減らせば、お金の流通は減少します。まとめると以下のようになります。
・「好景気→公共投資を減らす→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→公共投資を増やす→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
(2)ビルトインスタビライザー(財政自動安定装置)
こちらは、政府が何かしなくても自動で景気が調整される機能です。
・累進課税
累進課税とは、「所得が高くなれば高くなるほど、税金が上がること」。所得税などに適用されています。
たとえば、景気が良くなるとします。すると、所得が増えます。そして、所得税も増えます。所得税が増えるということは、市場からお金を取るということですね。
逆に、景気が悪ければ、所得も減り、所得税も減る。すると、市場から取れる税金が減ります。まとめると以下のようになります。
・「好景気→累進課税によって徴収される税金が上がる→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→累進課税によって徴収される税金が下がる→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
・社会保障給付金
社会保障給付金は、失業者などの経済的に困窮している人に渡されます。
景気がいい時は、そのような人は少ないですので、お金を渡さなくて済みます。景気が悪いときは、そのような人が増えますので、お金を渡さなければなりません。まとめましょう。
・「好景気→社会保障給付金が減る→市場にお金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→社会保障給付金が増える→市場にお金がたくさん出回る→不景気が改善される」
【国際分業】
◆国際分業
人には、得意なことと不得意なことがあります。
たとえば、狩りが得意な人と、魚を釣るのが得意な人がいるとします。狩りが得意な人が魚つり苦手なので、とても時間がかかります。
また、魚釣りが得意な人は、狩りが苦手なのでとても時間がかかります。
それならば、狩りが得意な人が狩りをやり、魚釣りが得意な人が魚釣りをやった方が効率はいいわけです。そして、とってきた食料を、互いに交換し合えばいいのです。
この効率化を「分業」と言い、これを述べたのがリカードの比較生産費説です。同じことは国家にも言えます。
車1台を作るのに10人必要なA国と、車1台作るのに20人必要なB国では、A国のほうが効率がいいのです。
また、A国がコメ1単位を作るのに20人、B国がコメ1単位作るのに50人必要とします。
では、A国とB国で分業するとすれば、どちらがどれを作れば効率が良いでしょうか。ややこしい時は計算しなければいけませんが、この問題は計算せずに解いてみましょう。
最もいけない答えは「A国が両方とも作って、両方をB国に輸出する」です。
たしかにA国の効率性は、両方において上回っています。しかし、B国の自立性を壊す結果になります。
車1台の必要人数を見ると10:20、コメ1単位の必要人数を見ると20:50です。1:2と2:5と直せます。格差の小さなものほど、効率性において、あまり差はないということ。
つまり、B国は差の小さな自動車を生産し、A国はコメを生産するべきということになります。
【国際経済】
◆外国為替
経済分野で、最もややこしいのが外国為替です。順を追ってゆっくり説明していきます。
まず、土台となる「円高」「円安」についてきちんと理解しましょう。
円高とは「円の価値が上がること」です。たとえば1ドル=100円から1ドル=90円になれば円高です。
円高なのに「安く」なるの?と疑問に思うかもしれませんが、円の価値が高くなったのです。
円安は「円の価値が下がること」で、1ドル=100円から1ドル110円になれば円安です。
さて、円高になると、輸入が有利になり、輸出が不利になるのです。
先ほども言ったように円高とは「円の価値が上がること」です。つまり、外国は、価値の高い円をもらう方がお得なわけです。
外国が円を手に入れるには、外国が日本に輸出すればいいわけです。こうなると、日本では、外国からの輸入のほうが有利なのです。
逆にここで、日本が外国に輸出すると、円より価値の低いドルを手に入れることになります。だから不利。
次に、円安になると、輸入が不利になり、輸出が有利になります。
円安は「円の価値が下がること」ですので、日本としては、価値の低い円よりも、価値の高いドルを入手したいわけです。
日本がドルを手に入れるには、輸出をすればいいわけで、すなわち、輸出が有利で、輸入が不利になります。
ここまでを、まずきちんと理解しましょう。
では、次へ。外国為替市場について。外国為替市場とは、言ってみればお金を交換する所。だから、ドルがほしいと思ったならば、円でドルを買うわけです。
さて、外国為替市場の需要と供給によって、お金の価値が決定されるのです。といっても難しく考えないでいいですよ。
たとえば、円をたくさん必要とする人が出てきました。つまり円の需要が高まったということ。
需要・供給曲線で説明したように、需要が上がれば価格は上がります。ここでも同じ原理で、円の価値が上がるのです。
逆に、円をドルに換えようとする人が増えたとします。つまり円の供給が高まったということ。
供給が高まれば、そう、価値が下がるのです。
じゃあ、外国為替市場で、円の需要が高まるときはどんな時でしょうか。
・日本が外国に輸出をするとき(=外国が日本から輸入をするとき)。なぜなら、日本は、輸出によって外国の貨幣をもらいます。そのままじゃ、日本では使えないので、円に換金、つまり円の需要が高まるのです。
・外国人が日本へ旅行をするとき。日本では外国の貨幣は使えませんから、円に換金しますね。それで、円の需要が高まります。
・外国人が日本へ投資するとき。投資先は日本ですので、もちろん円に換金します。
円の供給が高くなるときは、その逆と考えてください。
・日本が外国から輸入をするとき(=外国が日本に輸出をするとき)。
・日本人が外国へ旅行をするとき。
・日本人が外国へ投資するとき。
◆国際収支
国際収支とは、簡単に言うと、国が赤字か黒字か、ということです。
国からお金が外国に動いたならば赤字、国にお金が入れば黒字です。以下、実例を見て理解していきましょう。
・日本から海外へ、製品を輸出。
…この場合、日本は海外からお金をもらいます。よって、日本の収支は黒字。
・日本が海外へ投資。
…要するに、海外に工場とかを作るということ。日本から投資するわけだから、お金を外国に払うわけですので、日本の収支は赤字
・日本が海外援助を行う。
…援助とはいえ、日本からお金が出て行くわけですので、日本収支は赤字。
・海外の人が、日本の証券を購入。
…日本にはお金が入ってきますので、日本の収支は黒字。
◆他の思考問題
・日本が海外へ投資することは、「円安」になる原因
…円安は「円の価値が下がること」と言いましたね。ここでは日本は円を売ってドルを買っています。円の需要が低下するわけですので、円の価値が下がり円安になるのです。
・日本の金利が低下することは、「円安」の原因
…金利とは利子のことと考えればいいです。利子が下がれば、お金を貸してもあまりお金は増えません。すると、日本の銀行には預けず、外国の銀行に預けようということになります。円売りドル買いが起こり、円の需要が下がり、円安になるということ。
・円高は日米貿易を是正する
…日米貿易では、アメリカが貿易赤字です。つまり、その貿易摩擦を解消するには、日本への輸出を増やさなければなりません。日本への輸出が増える条件は円高です。なぜなら、円の価値が上がれば、外国は円を欲しがり、日本への輸出が有利になるからです。
・海外からの投資を活発にさせるのは円安
…円安は円の価値が下がること。円の価値が下がると、価値の高いドルを持ったアメリカからしてみれば、日本のモノが安く買えるわけです。つまり、日本に工場も安く作れるわけです。だから、海外からの投資が活発になる。
現社・政経の経済分野には、暗記だけでは全く意味のない、理論を必要とする分野があります。理論経済を中心に、分かりやすく説明したいと思います。
◆市場メカニズム
私たちの経済は、「自由主義経済」です。つまり、「社会主義経済」のように、政府が市場の価格を勝手に決めることがありません。
それでも、市場主義経済では、価格が一定の金額で安定します。アダムスミスは、この働きの神秘性を「神の見えざる手」と評したのです。
この機能を理論立てて理解しましょう。教科書や参考書には、需要曲線・供給曲線が書かれていますね(需要曲線が右下がりということは、曲線に「“」をつければ「じ」になるとこじつければ混乱しないでしょう)。それこそが、神の見えざる手の正体です。
価格が下がれば需要が上がる(=たくさん買う)、価格が上がれば需要が下がる(=あまり買わない)を表したのが需要曲線です。
価格が下がれば供給も下がる(=儲けが少ないのであまり作らない)、価格が上がれば供給も上がる(=儲けが多いのでたくさん作る)を表したのが供給曲線です。
この二つの曲線が重なったときに、買い手からも売り手からも文句のない「均衡価格」になり、安定するわけです。
少し注意すべきは、この働きは「完全競争市場」でないと働かないということ。条件としては以下の4つです。
1買い手と売り手がたくさんいること
(価格硬直化が起こってしまうから)
2商品が同質で、差別化されていないこと
(たとえば、鉛筆と消しゴムの二つで競争することはできません。「鉛筆があるから消しゴムはいらないや」と思わないでしょう。むしろ、この二つは補完財であって、競争とはほど遠いです。A社の鉛筆とB社の鉛筆、という風に同質なものでなければ競争は起きません)
3商品の情報が、正確に伝わっていること
(たとえば、故障したパソコンを、買い手にそのことを告げずに格安で売った場合、それは詐欺であって、売り手が価格を支配しているのです。それでは曲線が成り立たないですよね)
4市場への参入・退出が自由
(もし、市場へ参入することができずに、同じ企業のみが、商品の販売権を持っていたとしたらどうなるでしょう。すると、その固定された企業たちが、価格を相談して決めること、つまり「カルテル」が起こってしまいかねませんね)
この4つがきちんと成立している時、完全競争市場が形成され、需要・供給曲線もきちんと働きます。
では、曲線の動くパターンの例を見ていきましょう。
例1) 給料が上がった!→商品Aの需要が上がる=需要曲線が右にシフト→価格が上がる
例2) 商品Aの原材料の値段が高騰!→商品Aの供給が下がる=供給曲線が左にシフト(儲けが少なくなると、あまり作らなくなるから)→価格が上がる
とにかく、企業の儲けが下がるときに供給量が減って、儲けが上がるときに供給量が増えます。
また、消費者にお金の余裕ができたり商品の人気が上がれば需要は上がり、お金が切迫したり商品の人気が落ちれば需要は下がります。
【経済政策】
◆日本銀行の金融政策
日本銀行には、景気を調整するという機能があります。
ずっと景気が高いままにしておけばいいんじゃないか、という疑問を抱くかもしれませんが、そうすると、反動がひどいのです。
バブル景気を例に挙げればわかると思いますが、上がりすぎた景気の後には、必ず崩壊があります。それを食い止めるのも日銀の仕事です。
一応説明をしておくと、日本銀行は、市中銀行にのみ融資を行います。企業や個人には融資を行いませんので注意してください。
まず押さえておくべきことは、「好景気=お金が市場に多く出回っていること」ということです。逆に「不景気=お金が市場にあまり出回っていないこと」ですね。
これを押さえればあとは簡単。要は、日銀がやることは「好況時に市場からお金を取り上げ、不況時に市場にお金を出回らせる」ことなんです。
以下、3つが、日銀による操作です。
(1)公定歩合操作
公定歩合とは、「日銀が市中銀行にお金を貸し出す時の金利」のことです。市中銀行がお金を借りるとすると、いくらか利子をつけて返さなければならないということです。
返す利子が高くなると、市中銀行は負担になりますので、あまり借りなくなります。逆に、利子が低くなれば、市中銀行は負担が軽くなるので、バンバン借りることができます。
さて、市中銀行にお金がいけば、市場にお金が出回るということ。つまり、下のことが言えるわけです。
・「好景気→公定歩合を上げる→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→公定歩合を下げる→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
(2)支払準備率操作
支払準備率とは、「市中銀行に預金されたお金を、日銀が預かってくれる割合」のことです。100万円を市中銀行に預金すれば、そのなかの○%を日銀に渡すわけです。
ざっくばらんに言うと、市中銀行から取り上げるお金の割合です。もちろん取り上げる割合が高ければ、市中銀行が使えるお金も減り、あまりお金が出回らなくなる。
逆に、取り上げる割合が減れば、市中銀行が使えるお金も増えて、たくさんお金が出回ることになります。まとめると以下のようになります。
・「好景気→支払準備率を上げる→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→支払準備率を下げる→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
(3)公開市場操作
公開市場操作とは、「日銀が有価証券を売買して、景気を操作すること」です。有価証券は一種のお金と交換してくれる小切手、とでも考えてよいでしょう。
これを銀行間で取引するのです。日銀が市中銀行に有価証券を売ることを「売りオペ」、買うことを「買いオペ」と言います。
日銀が市中銀行に有価証券を売るということは、市中銀行はお金を日銀に渡さなければならないのです。
逆に、日銀が市中銀行から有価証券を買うということは、市中銀行は日銀からお金をもらいます。まとめると以下のようになります。
・「好景気→売りオペ→市中銀行はお金をとられる→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→買いオペ→市中銀行にお金を与える→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
◆政府による財政政策
政府にも、景気を調整する機能があります。特徴に分けて、二つに分類できます。
(1)裁量的財政政策(フィスカルポリシー)
政府が意志的に景気を調整する機能です。景気の良し悪しは、市場にお金がどれほど出回っているかで決まると書きましたね。
つまり、国民がどれほど買い物などで消費しているかにも影響します。お金をたくさん使えばたくさん出回るし、あまり使わなければあまり出回らないのです。
・増税/減税
たとえば消費税が上がれば、その分、商品を買う時の値段が高くなります。すると、あまりモノを買わないでおこう、ということになりますね。
逆に、消費税が下がれば、モノを買う頻度が高くなります。まとめると以下のようになります。
・「好景気→増税→市場にあまりお金が出回らない→好景気が改善される」
・「不景気→減税→市場にたくさんお金が出回る→不景気が改善される」
・公共投資
公共投資を行うと、その分の労働が増えるし、たとえば観光施設を造れば人が集まって、周辺の市場に活気を与えてくれます。
すると、お金の巡りもよくなります。逆に、公共投資を減らせば、お金の流通は減少します。まとめると以下のようになります。
・「好景気→公共投資を減らす→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→公共投資を増やす→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
(2)ビルトインスタビライザー(財政自動安定装置)
こちらは、政府が何かしなくても自動で景気が調整される機能です。
・累進課税
累進課税とは、「所得が高くなれば高くなるほど、税金が上がること」。所得税などに適用されています。
たとえば、景気が良くなるとします。すると、所得が増えます。そして、所得税も増えます。所得税が増えるということは、市場からお金を取るということですね。
逆に、景気が悪ければ、所得も減り、所得税も減る。すると、市場から取れる税金が減ります。まとめると以下のようになります。
・「好景気→累進課税によって徴収される税金が上がる→お金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→累進課税によって徴収される税金が下がる→お金がたくさん出回る→不景気が改善される」
・社会保障給付金
社会保障給付金は、失業者などの経済的に困窮している人に渡されます。
景気がいい時は、そのような人は少ないですので、お金を渡さなくて済みます。景気が悪いときは、そのような人が増えますので、お金を渡さなければなりません。まとめましょう。
・「好景気→社会保障給付金が減る→市場にお金があまり出回らなくなる→好景気が改善される」
・「不景気→社会保障給付金が増える→市場にお金がたくさん出回る→不景気が改善される」
【国際分業】
◆国際分業
人には、得意なことと不得意なことがあります。
たとえば、狩りが得意な人と、魚を釣るのが得意な人がいるとします。狩りが得意な人が魚つり苦手なので、とても時間がかかります。
また、魚釣りが得意な人は、狩りが苦手なのでとても時間がかかります。
それならば、狩りが得意な人が狩りをやり、魚釣りが得意な人が魚釣りをやった方が効率はいいわけです。そして、とってきた食料を、互いに交換し合えばいいのです。
この効率化を「分業」と言い、これを述べたのがリカードの比較生産費説です。同じことは国家にも言えます。
車1台を作るのに10人必要なA国と、車1台作るのに20人必要なB国では、A国のほうが効率がいいのです。
また、A国がコメ1単位を作るのに20人、B国がコメ1単位作るのに50人必要とします。
では、A国とB国で分業するとすれば、どちらがどれを作れば効率が良いでしょうか。ややこしい時は計算しなければいけませんが、この問題は計算せずに解いてみましょう。
最もいけない答えは「A国が両方とも作って、両方をB国に輸出する」です。
たしかにA国の効率性は、両方において上回っています。しかし、B国の自立性を壊す結果になります。
車1台の必要人数を見ると10:20、コメ1単位の必要人数を見ると20:50です。1:2と2:5と直せます。格差の小さなものほど、効率性において、あまり差はないということ。
つまり、B国は差の小さな自動車を生産し、A国はコメを生産するべきということになります。
【国際経済】
◆外国為替
経済分野で、最もややこしいのが外国為替です。順を追ってゆっくり説明していきます。
まず、土台となる「円高」「円安」についてきちんと理解しましょう。
円高とは「円の価値が上がること」です。たとえば1ドル=100円から1ドル=90円になれば円高です。
円高なのに「安く」なるの?と疑問に思うかもしれませんが、円の価値が高くなったのです。
円安は「円の価値が下がること」で、1ドル=100円から1ドル110円になれば円安です。
さて、円高になると、輸入が有利になり、輸出が不利になるのです。
先ほども言ったように円高とは「円の価値が上がること」です。つまり、外国は、価値の高い円をもらう方がお得なわけです。
外国が円を手に入れるには、外国が日本に輸出すればいいわけです。こうなると、日本では、外国からの輸入のほうが有利なのです。
逆にここで、日本が外国に輸出すると、円より価値の低いドルを手に入れることになります。だから不利。
次に、円安になると、輸入が不利になり、輸出が有利になります。
円安は「円の価値が下がること」ですので、日本としては、価値の低い円よりも、価値の高いドルを入手したいわけです。
日本がドルを手に入れるには、輸出をすればいいわけで、すなわち、輸出が有利で、輸入が不利になります。
ここまでを、まずきちんと理解しましょう。
では、次へ。外国為替市場について。外国為替市場とは、言ってみればお金を交換する所。だから、ドルがほしいと思ったならば、円でドルを買うわけです。
さて、外国為替市場の需要と供給によって、お金の価値が決定されるのです。といっても難しく考えないでいいですよ。
たとえば、円をたくさん必要とする人が出てきました。つまり円の需要が高まったということ。
需要・供給曲線で説明したように、需要が上がれば価格は上がります。ここでも同じ原理で、円の価値が上がるのです。
逆に、円をドルに換えようとする人が増えたとします。つまり円の供給が高まったということ。
供給が高まれば、そう、価値が下がるのです。
じゃあ、外国為替市場で、円の需要が高まるときはどんな時でしょうか。
・日本が外国に輸出をするとき(=外国が日本から輸入をするとき)。なぜなら、日本は、輸出によって外国の貨幣をもらいます。そのままじゃ、日本では使えないので、円に換金、つまり円の需要が高まるのです。
・外国人が日本へ旅行をするとき。日本では外国の貨幣は使えませんから、円に換金しますね。それで、円の需要が高まります。
・外国人が日本へ投資するとき。投資先は日本ですので、もちろん円に換金します。
円の供給が高くなるときは、その逆と考えてください。
・日本が外国から輸入をするとき(=外国が日本に輸出をするとき)。
・日本人が外国へ旅行をするとき。
・日本人が外国へ投資するとき。
◆国際収支
国際収支とは、簡単に言うと、国が赤字か黒字か、ということです。
国からお金が外国に動いたならば赤字、国にお金が入れば黒字です。以下、実例を見て理解していきましょう。
・日本から海外へ、製品を輸出。
…この場合、日本は海外からお金をもらいます。よって、日本の収支は黒字。
・日本が海外へ投資。
…要するに、海外に工場とかを作るということ。日本から投資するわけだから、お金を外国に払うわけですので、日本の収支は赤字
・日本が海外援助を行う。
…援助とはいえ、日本からお金が出て行くわけですので、日本収支は赤字。
・海外の人が、日本の証券を購入。
…日本にはお金が入ってきますので、日本の収支は黒字。
◆他の思考問題
・日本が海外へ投資することは、「円安」になる原因
…円安は「円の価値が下がること」と言いましたね。ここでは日本は円を売ってドルを買っています。円の需要が低下するわけですので、円の価値が下がり円安になるのです。
・日本の金利が低下することは、「円安」の原因
…金利とは利子のことと考えればいいです。利子が下がれば、お金を貸してもあまりお金は増えません。すると、日本の銀行には預けず、外国の銀行に預けようということになります。円売りドル買いが起こり、円の需要が下がり、円安になるということ。
・円高は日米貿易を是正する
…日米貿易では、アメリカが貿易赤字です。つまり、その貿易摩擦を解消するには、日本への輸出を増やさなければなりません。日本への輸出が増える条件は円高です。なぜなら、円の価値が上がれば、外国は円を欲しがり、日本への輸出が有利になるからです。
・海外からの投資を活発にさせるのは円安
…円安は円の価値が下がること。円の価値が下がると、価値の高いドルを持ったアメリカからしてみれば、日本のモノが安く買えるわけです。つまり、日本に工場も安く作れるわけです。だから、海外からの投資が活発になる。