『聞いたとこでは、おたくらも関西から旅かけとるらしいけど、どこの人らなんかいな?』
”どこの”と云うのは取りも直さず所属グループを指している。
沢井からすれば我々3人ぽっちのチンピラ等どうという事はないのだが、万が一のことを考えてバックを確かめておきたかったのだろう。
(もしも我々が、沢井と兄弟分もしくは親戚付き合いのあるグループの人間ならば、それなりの応対をしなくてはいけないから)
『いえ・・・俺らは関西じゃなくて~~県から来た者です』
ヨシローがガラにもなく丁寧な口調で答えた。
『昨日は(地元の学生に)ハッタリを咬ましたんです。どこかの人(スジ者)にケツ持って貰ってるワケじゃありません』
正直に云って正解だろう。
普段なら少々はハッタリを効かせて駆け引きをするんだが、相手が相手だ、下手な小細工はしないに越したことはない。
『なんや、アッサリしとんなあ(笑)。テッキリ威勢のエエカマシ入れるもんやと思うとったのに、拍子抜けしたわ』
『・・・いえ、そんなハッタリが通用する人じゃないことぐらいは判りますから・・・沢井さん相手に突っ張ることが出来る人なんてそうそう居ないでしょう』
『なんや、ワシの事知ってるんかいな?』
『ええ、そりゃあ、この業界でメシ喰ってる人間なら誰だって沢井さんの名前は知ってますよ』
ヨシローの恭順の意を表した物言いに気を良くしたのだろう、沢井は口元を緩め、我々の前に置かれたグラスへビールを注いでくれた。
『まあ、そない遠慮せんでもエエから、グイッといこうや』
沢井に促されて我々3人はグラスに手をかけた。
『オマエらも、エエから一杯いきいや』
沢井の一声で、その場に直立していた若衆達もグラスへ口をつけ始めた。
緊張した雰囲気が一気に溶けて、場が寛いでいくのが肌で感じられた。
それだけ沢井の持つ存在感が圧倒的だという事だ。
我々も、やや緊張しながら沢井と歓談を交わすぐらいには口が軽くなった。
陽気酒の沢井が云う事には、彼らはこの店以外にもあと2軒ほどアレマンの店を確保しており、グループを2つに割って使い回しているらしい。
(だから、学生達は5,6人ぐらいだって云ってたのか・・・)
武勇伝を交えた沢井の話を聞きながら半分本気で、半分お世辞で合いの手を入れていたら、沢井がちょっと真面目な顔をして云った。
『ところでな、兄さんらパワフルは触った事あるか? パワフルゆうてもセブン機やないで、太陽電子の方や』
アレパチ・パワフル!!我々3人が知らない筈が無かった。
『ええ、一応ガッツンとツーバイは両方喰いましたけど』(注1)
スッカリ寛いでさっきからツマミのチーズサラミをパクついていたヨシローが云った。
『実はなあ、まだイルミが生きとる店があるんや』(注1)
そう沢井に言われ、我々は一瞬顔を見合わせた。
『但し、ヒモ付きでなあ』
やはりワケありだったのだ。この時期にマッサラのパワフルが置いてあるなんて普通は考えられないのだ。
『その店、1日だけやったらワシが話つける事が出来るんやが・・・』
そう云いかけると沢井はナミナミ注がれたグラスをグイッと空けて、一呼吸置いてから我々の方へ向きなおした。
(注1)・・・『ガッツン』と云うのはデジタル下に並んでいるイルミネーションランプの俗
称。
『ツーバイ』は台枠左上にある『2倍ランプ』のこと。
どちらのランプも点滅周期が内部のカウンターと同調していて攻略が可
能だった。