今年のノーベル賞、京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょたすく)氏に医学生理学賞が受賞されることが決まりました。
今回、本庶特別教授は、がん免疫療法という新たな技術の発見ということでノーベル賞を受賞されました。
受賞に関するインタビューで、「『ネイチャー』、『サイエンス』(科学誌)に出てるものの9割はウソ」「教科書に書いてある事を信じない」と発言されています。
(インタビューの画像はこちらから)
ただ、この発言は、どういう背景でのものかを正確にとらえないと、誤解される恐れがあるのではと心配しています。
まず、この発言の対象になっている分野は、大まかな言い方をすると「理科」の分野に関する話です。
そして、どのレベルでのことを言っているかというと、高度な最新研究についてのことです。
最新研究では、日進月歩のように研究が進みますから、科学雑誌に書かれていたことが100%内容が突き詰められたとは限りません。
あくまで、研究から得られた結果をもとに論理的に最も矛盾が少ないと研究者が考えた結論を導き出して投稿します。
だからこそ、本庶特別教授は、その内容を鵜呑みにするのではなく、さらに突き詰めていく姿勢が大切だということを言っています。
そこが、「教科書に書いてあることを信じない」という発言の真意だと思っています。
また、「科学誌に出てるものの9割はウソ」という発言も、さらに研究が進むと実は正しくなかったという意味での発言だととらえています。
自然科学の分野では、長らく信じられていた説が、新発見によって間違いであることが分かった例はいくらでもあります。
一番の例は、天動説から地動説への転換です。
天動説は、2世紀にプトレマイオスという学者が提唱し、1000年以上の間信じられてきました。
ところが、16世紀以降にコペルニクス、ケプラー、ニュートンなどの研究の結果、天動説は間違いであり、現在では地動説が正しいものとして考えられています。
だからと言って、プトレマイオスの天動説が価値がないものであったとは私は思いません。
彼は、その時代の科学技術を駆使し、観測できた結果を矛盾なく説明する体系といて天動説を掲げています。
少なくとも、天動説を掲げた時点では最善の努力を尽くしたものだと考えます。
ただ、その後の科学技術の発達により、天動説では説明できない事象が発見されました。
そこで、のちの時代の科学者が研究を重ねてきた結果、地動説が確立されたのです。
だからこそ、「科学誌に出てるものの9割のウソ」も価値がないという意味ではないのです。
だからこそ、本庶特別教授の発言は、初等教育の段階での教科書を否定するものではないということに留意する必要があります。
発言の対象は、大学以上の研究についてですが、それを行うには、それまでの教科書の内容をきちんと理解することが大切です。
この発言の真意を、一人でも多くの方が正しくとらえてくれることを祈ってやみません。
