やっちゃれ、やっちゃれ!―独立・土佐黒潮共和国/坂東 眞砂子

¥1,730
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最近何かと話題の高知県が舞台の物語です。
人口減少など高知県は財政悪化の一途、県知事の
浜口理絵子は、日本からの独立を提案、住民投票に
諮り、その結果圧倒的支持を受け独立を宣言します。

ありえなさそうで、実際、実現可能な事だなと思う
日本からの独立、確かに外国では別に珍しくもない
ことです。

名前は公募で、土佐黒潮共和国となります。
現在の苦しい地方の状況を訴えていく物語かと
思ったら、流れはリアルになります。

自衛隊や海保はそのまま高知にとどまりますが、
国の機関や警察幹部など国家公務員はすべて
引き上げていく、電気などインフラも徐々に
不安定になっていきます。

そして爆弾が爆発するのでした。
目的は何なのか、テロ行為が連続して発生し、
静観していた自衛隊も旧県庁、国庁に一種の制圧の
ために乗り込んできます。

テロリストの狙いは何なのか。
作品後半は緊張の連続です。
他にも同時進行で進む様々な出来事にどんどん読み
進んでいきます。

近未来に現実問題として起こりそうな感じのする作品です。
地方分権、地域主権と言ってますが、
こんな将来もありかもしれません。


アナザーフェイス (文春文庫)/堂場 瞬一

¥690
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新聞にも載っていましたが、紙の本が売れない、特に単行本が
落ち込みがひどいとのこと。
しかし、そもそも単行本が出ないと文庫本にならないという
これまでの常識だと、どんどん本がこの世から消滅してしまう。
そんな状況の打開するために文藝春秋が打ち出した文庫本シリーズ。

つまり、文庫本書き下ろしってことで、堂場瞬一氏の警察小説
新シリーズです。
主人公は、妻を交通事故で亡くし捜査の第一線から引き、
刑事総務課に勤務する巡査部長の大友鉄です。
毎日定時退庁し、一人息子の小学2年生、優斗のために晩ご飯を
作る生活、現場を離れた男に捜査の応援に回るよう指示が出ます。

誘拐事件の発生です。
銀行員の息子が誘拐され、1億円を要求してきたのでした。
大友の元上司、福原は大友の能力を生かすため捜査本部へ
捜査員として参加するよう指示します。
はじめなぜ今更自分が捜査に加わるのか意味がわからない大友、
しかし、子供を誘拐するという卑劣なやり方に怒り、刑事の感は
すぐに戻るのでした。

すぐに相手と親しくなれる、一種の信頼関係が構築できる不思議な
能力を持っていました。それは学生時代に演劇に打ち込んできた
からなのか、その甘いマスクが幸いしたのか、本人にとっては
理解し難いのですが、結果がそういっているのでした。

今回の誘拐事件、銀行員の子供が誘拐され、1億円の身代金を
要求、その先は家族ではなく、父親のつとめる銀行にでした。
これまでの誘拐事件とは違う何かを感じた大友の行動が解決への
糸口となります。

これまでの刑事ものの物語とは少し違った感じの主人公、大友。
刑事らしくもあり、そうでない感じでもある、一人の刑事を
主人公にした新たなシリーズが文庫版でスタートしました。
また、楽しみが増えました。




最後の証人/柚月 裕子

¥1,470
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すごい物語の展開でした、犯人と被害者、その物語にある深い恨み。
権力を振りかざし、それに日和ったことで判断を見間違えた者。
私怨から恐ろしい計画を、しかも冷静に実行する。
そこに完成された物的証拠と状況証拠を完全なものにし、
被告人が否認している事以外は、すべてが被告人を犯人と示している、
読み手を試すような展開と問題提起、すべてがすごいです。

裁判員制度が導入されても、そんな事を全く感じることなく
感じたこと、それを裏付ける証拠をもとに検察へ挑む主人公の弁護士、
佐方貞人はヤメ検です。
相手は、検察官時代の上司で何かと世話をしてくれた筒井の部下の
庄司真生です。
佐方の辞めた理由、根源は筒井の言葉、
「法を犯すのは人間だ。検察官を続けるつもりなら、法よりも人間を見ろ」
その真意を理解し突き進んだ結果が、今の佐方でした。

圧力、後悔、嘘、そんなものに負けない正義感と努力です。
とても面白い作品でした。


叛撃/今野 敏

¥1,575
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今野氏の最新作、今回は空手小説です。
週刊小説と小説NOWに連載した、それぞれの短編、連作です。
相変わらずの面白さ、あっという間に読み終えます。

空手を通したライバルの友情、立入過ぎることのない中でも
最低限の心を通す男、やんちゃな弟子と師匠の絆、
兄弟子との戦いと多彩な内容です。

また、古武道のすばらしさ、天狗になった格闘技を身につけた
俳優との激突、空手と日本人の意地、主人公もびびる相手との
勝負が描かれています。

まさに、ハード・アクション短編集、さっと読めて元気が出る
一冊で、とても面白かったです。



ブレイズメス1990/海堂 尊

¥1,680
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海堂氏の最新作です。
桜宮に新たな歴史が刻まれます。
主人公は、世良雅志、「ブラックペアン1988」から
2年が経ちました。
当然、若かりし高階院長はまだ講師です。
この時、院長の佐伯はダイレクト・アナストモーシスを
世界で唯一可能とした外科医、天城雪彦の招聘を世良に
依頼するのでした。

物語の舞台は、モナコから始まります。
学会のお付きかつ院長の佐伯からのミッションを受けモナコに
着いた世良、天城に手紙を渡すこと。その手紙にまさか
心臓外科センター長へ就任するように書いてあるとは。

世良の改革意識は天城との出会いからますます強くなっていくの
だろうと感じる作品です。
天城の発想と、言葉に勝る神技、世界で彼一人しかできない
術式、ダイレクト・アナストモーシス。
その技で救われる命は、全財産の半分をルーレットで賭け
勝たなければ受けられないというものです。

反発するものがいる中で、その反論を論破していく天城、
彼の唯一の味方となった世良、2人が成し遂げる偉業とは。
医療という世界に金儲けという意識を注入し、革命の
起点となって意識改革を遂げようとし始める物語です。

少し久しぶりというか、違ったところで海堂氏の名前を
見ることがあったせいもあり、テレビでも既に話題になって
いる本作品、舞台の桜宮市というのは医療の世界に様々な
問題を提起する場所になっていますね。
複雑な人間関係、しかも過去未来と繋がる中でよく
整然と構成されているなあと感心するとともに、
内容の面白さにあっという間に読み終えてしまいました。
今回も楽しませてもらいました。