玉村警部補の災難/海堂 尊

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巻末の桜宮市年表がとても便利です。
これまで、チーム・バチスタから始まった
物語は、過去未来と桜宮市を行ったり来たり
していたので、一つの物語を読んだ時は
今回も面白かったで終わるのですが、
この話はいつの頃に起こった出来事なのか
と毎回困っていました。
復習の意味でも役に立ちます。

今回の主人公は、玉村警部補です。
警察庁の加納警視正の出向先での活躍をレポート
にまとめるよう指示された玉村警部補が
東城大学医学部の医師、田口公平のもとを
訪れ、これまでの加納との出来事を
語る形で物語が綴られています。

どれも強烈な内容で、加納の行動力には
驚かされます。
警視正なんて役職の人が、そもそも所轄に出向と
いうところから無茶な感じがしますが、
捜査をしている時の加納はとても幸せそうです。

こういう短編連作でも海堂作品は十分に楽しめる
という事、そして桜宮市という舞台で
ここまで大きな世界を築き、物語が作らていく
事にとても感動してしまいます。
今回もとても面白かったです。



震える牛/相場 英雄

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ジャンルで言えば、警察小説と経済小説の中間とでも
言うのでしょうか。
平成版「砂の器」誕生だそうです。
どこかで聞いた話が織り込まれ、恐ろしくリアルです。
居酒屋で2人の客が殺され、売上金が盗られる、
強盗殺人として当時扱われた事件、実は、全く違う
真相がありました。

捜査本部が解散され継続捜査となった、この事件を
担当することになったのは、田川信一警部補です。
彼の特技は、ひたすらメモを残し1つずつ疑問を消して
行く作業を地道に行い、解決への緒を見つけるのです。

殺人事件を捜査する物語が進む一方、
日本最大の小売流通の企業となったオックスマートは、
郊外でどんどん超大型のショッピングセンターを建設し
地方の街をまるごと飲み込んで行きました。
しかし、原油価格の高騰で客足は鈍化、ガソリン価格が
戻っても客足は戻らない状況に陥っていました。

そういった地方からの撤退は小さな街の商店街を潰された
住民にとっては死活問題でした。
日本は、大きな商業施設に行くことが、豊かになった
証明だと思い込んでいた、心に響きました。

また、食品の価格破壊がもたらしたのは、生産者へのしわ寄せ、
耐え切れなくなった時、物語では、あの混ぜ物でつくった
肉の事件を描いています。

正義を突き通そうとする刑事、プロローグとエピローグにだけ
出てくる人物、そうさせてはもらえない大人の世界。
現代の日本が抱える根本的な問題に挑み、その答えは
読者がきっと導き出すのでしょう。
とても面白い作品でした。




司法記者/由良 秀之

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カバーのイラストが少し怖いのですが、
内容は相当面白いです。
東京地検特捜部のやり方、それはこれまでの
伝統とはいうものの、かなり無茶なやり方でした。
そこに在職していたからこそ書ける作品です。

司法クラブの記者が同じクラブの他社の記者の部屋で
殺害される事件が発生します。
最新のセキュリティのマンションで起こった事件、
警察は、その部屋に住む東西新聞社会部記者の岡野靖之を
殺人容疑で逮捕します。

一方、東京地検特捜部では、政治とカネを巡るゼネコン
から知事、政治家へと金が渡ったとして捜査が続いていました。
夢であった特捜部検事になった織田俊哉は、これまでの
捜査方法全く異なる事に違和感を覚えます。

2つの一見関係のない事件が後にとんでもない接点、
そして2つの事件の真相へ近づくものとなります。
物語の構成が素晴らしく、順を追って真相解明へ突き進んで
いきます。

これまでの特捜部の捜査方法を痛烈に批判し、
検察のあり方をも訴えている感のある作品、
密室殺人のトリックもとても面白かったです。
検察小説、今後に期待したいです。


決算書の9割は嘘である (幻冬舎新書)/大村 大次郎

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珍しく新書です。
元国税調査官の著者が決算書に隠された企業の
本当の姿が細かく書かれています。

先日、LUMINEの書店で何となく眺めていたら
このタイトルが気になり5%OFFだしいいかと
内容もよく見ずに購入。

読んでみたら、これがなかなか面白い?内容でした。
脱税と粉飾、国税調査官が使い分ける理由、
よく見せようとする企業と悪くみせようとする企業、
それぞれに理由があり、許される範囲があること。

具体的に実例を出して解説されているので、
とてもわかりやすく、勉強になります。
しかし、この本を読んで思うのは、決算書の本当の
正解?正しいものって何なのか、その企業の方針、
考え方や、おかれている状況、株主や銀行、関連会社
など条件次第で全く同じ事業年度を終えて
決算をしても全く違う決算書が出来上がるという
不思議なところです。

偶然の出会いとはいえ、とてもいい本にめぐり合い
勉強になりました。
本のタイトルとは逆に、残り1割の本当の決算書が
見たくなりました。



所轄魂/笹本稜平

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父親は警視庁の現職の刑事、
息子は警察庁に入ったキャリア官僚。
その息子が警視庁の管理官として赴任。
父親のいる所轄へ殺人事件の捜査本部へ
担当管理官として着任します。

親子の関係と所轄刑事の意地を賭けた物語です。
次々と発見される遺体、連続殺人事件として
特別捜査本部が設置され、その指揮を実質しきるのは
なんと自分の息子だったのです。

主人公の城東署強行犯係長の葛木は、警視庁捜査一課の
キャリア管理官である俊史の部下として事件解決に
挑みます。

複雑な背景、目撃者の少なさ、靴のない遺体、
被害者の身元さへなかなか判明しない連続殺人は
26歳の俊史が仕切る捜査本部で解決しなければ
なりません。

上司と部下、本庁と所轄、なかなか交われない現場に
この親子が協力して解決へと導いていく姿が
とてもよかったです。

人をまとめるという事がどれだけ難しいか、
事件解決への道のりと違った観点で描かれていて
なるほどっと感心しながら楽しく読ませて頂きました。
とても面白い作品です。