JR西日本は平成26年5月28日に、平成元年より運行を続けてきた寝台特急トワイライトエクスプレス(Twilight Express)号の運行を、車両の老朽化により平成27年春をもって終了すると発表しました。
鉄道や列車の旅のあまり関心の無い方のために、トワイライトエクスプレス号の紹介をします。
トワイライトエクスプレス号とは、大阪駅・札幌駅間を、東海道本線・湖西線・北陸本線・信越本線・羽越本線・奥羽本線・津軽線・海峡線・江差線・函館本線・室蘭本線・千歳線の12線区を経由し、1,495.7kmを22時間2分(上り札幌発大阪行きは砂原線経由となり、1,508.5kmを22時間48分)かけて、基本的に下り列車が月・水・金・土曜日、上り列車は火・木・土・日曜日に運転日が限定されている臨時寝台特急です。臨時のため列車番号は大阪駅を起点として下り列車が8001、上り列車が8002と、1000番台の番号が付いています。
平成元年7月に運行を開始した時は、寝台券が一般販売されない、時刻表にも載らない、ツアー用の団体専用列車でしたが、その年の12月に臨時列車に変更し、寝台券の一般販売を開始し、時刻表にも載るようになりました。
列車名は、出発日夕方と翌日明け方の薄明を意味するトワイライトが由来となっています。
列車の編成は、1号車と2号車は寝台兼用となるソファーベッド・テーブル・シャワー室・トイレ・ビデオモニター・オーディオサービスなどが設置されたA寝台1人用個室ロイヤル(2人利用可能)がそれぞれ4室。同名の個室は「北斗星」にもありますが、ソファーベッドが電動式になっているという違いがあります。発車直後にウェルカムドリンクが、翌朝には新聞朝刊とコーヒーまたは紅茶が、それぞれルームサービスされます。
1号車・2号車に1室ずつ設置されているA寝台2人用個室スイート(3人利用可能)。リビングとツインベッドを備えた寝室とが別々となっていて、リビングと寝室とはレースカーテンで仕切ることもできます。この他、シャワー室、洗面台・トイレ・冷蔵庫・ビデオモニター用の液晶テレビ・クローゼットなどを備え、こちらもウェルカムドリンクと、翌朝に新聞朝刊・コーヒーまたは紅茶が、それぞれルームサービスされます。1号車の個室は列車の大阪寄り最後部(上り列車では最前部)のため180°の展望が楽しめるため、人気の部屋です。
2号車のスイートは、シャワー室はセパレートタイプで、脱衣場にもなる洗面台・トイレとは別々に設けられています。
3号車は、レストランカー「ダイナープレヤデス」。大阪発は13時から16時まで「ランチタイム」として、オムライス・カレーライスなどのメニューが準備されています。17時30分から21時まで「ディナータイム」です。1回目は17時30分から19時、2回目は19時30分から21時で、乗車の5日前までの予約定員制(1回28人)のフランス料理のコースです。ディナータイム終了後の21時から23時(ラストオーダーは22時30分)までは、ピラフやパスタの他に、ビールやワインなどのドリンク類、但馬高原鶏のから揚げやスモークサーモン等を準備した「パブタイム」です。「モーニングタイム」は、6時から9時までは45分刻みの定員制で、希望者は乗車後に車内で利用時間を予約をすることになっています。この他、フランス料理のコース同様に5日前の23時までの30食限定の、予約申し込み制『日本海会席御膳』もあります。こちらはレストランカーで食べることはできず、各部屋かサロンカーで食べることになります。このほかに、淡路屋製造の特製弁当『トワイライト特製2段重』をルームサービスしてくれます。こちらは夕刻前に食堂車係員が各個室へ直接注文を取りに来ますが、乗車3日前までなら事前予約も可能です。
大阪発のトワイライトエクスプレス号は、現在、日本の列車の中では「ななつ星in九州」とともに、朝昼夕3食全てを提供する数少ない列車です。
4号車は、サロンカー「サロン デュ ノール」(Salon du Nord)。フランス語で「北のサロン」という意味。天井までの広い窓と日本海側に向いたソファーが設置されているほか、ビデオモニター用液晶テレビ、マガジンラックの雑誌、記念スタンプも設置されています。また、4号車側には清涼飲料水・おつまみ・お菓子類の自動販売機、共用のシャワー室が2部屋あります。シャワー室の利用は30分毎の予約制で、レストランカーでシャワーカード購入し、利用時間を予約することになっています。
5号車から9号車まではB寝台です。
B寝台のうち2人用個室ツインは、5号車と6号車に7室ずつと、7号車に9室の計23室設置されていて、部屋の上段には電動で上下する寝台があり、向かい合った2つの椅子はシングルベッドにななります。B寝台1人用個室シングルツイン(2人利用可能)は、5号車と6号車に6部屋ずつ設置されていいます。左右両側に設けられているので、ここの通路は中央にあります。
7号車には、本革のソファー、清涼飲料水の自動販売機を備えているミニサロンが設けられています。
8・9号車はB寝台コンパートメントです。開放式B寝台に、ガラス扉を取り付けた構造になっています。
乗車定員は、A寝台スイート2室4人(最大6人)、A寝台ロイヤル8室8人(最大16人)、B寝台2人用個室ツイン23室46人、寝台人用個室シングルツイン6室6人(最大12人)、B寝台コンパートメント15室60人、合計124人(最大140人)となります。
トワイライトエクスプレス号の人気は、豪華な個室寝台、本格的な食堂車、充実した車内設備。そしてプラチナチケットと言われるのは、1列車当たりの乗車定員が少ないうえに、毎日運転されていないためです。
その憧れのトワイライトエクスプレス号。乗るならA寝台スイートと誰しもが思うのですが、事前予約してもなかなかとれない。
そこで、とにかく廃止前にトワイライトエクスプレスの個室に乗らなければと思って、B寝台ツインにランクを下げて申し込んだところ、運良く1回目でとれて、念願のトワイライトエクスプレス号に乗ることになりました。
寝台券はとれたものの、まだ乗るまでは安心できません。悪天候で運休にでもなったら、振り出しです。
天気予報をチェックしながら大阪駅までやってきました。 当日の大阪駅桜橋口。は、快晴とはいえないまでも青空が見える天気で一安心。
トワイライトエクスプレス号は10番のりばからの発車。
発車の約40分前の11時11分には10番線に入線するということで、11時前にホームに行ったところ、すでに多くの人が集まっていました。乗客と思われる人、写真を撮るのが目的の人、そしてレストランカーのクルー。
この時間帯はホームの混雑を避けるためか、トワイライトエクスプレス号が発車する10番線と同じホーム反対側9番線を発着する列車はありません。
11時過ぎに間もなく入線のアナウンスがあったのですが、奈良線の運転障害の影響からか、予定より遅れて入線とのアナウンスが再びあり、結局、遅れること16分。11時27分、トワイライトエクスプレス号が入線してきました。
トワイライトエクスプレス号の入線を前に、ホームに上がった大きな理由が、レストランカーのクルーの方々が入線時にウエーブで一礼するところを見たかったことです。この光景は、大阪駅だけでしか見ることができない光景です。
その理由は、このクルーは札幌駅に到着した後、下車することなく車内にとどまって休憩し、その日の上りトワイライトエクスプレスに乗務して戻ってくるそうです。つまり2泊3日のお仕事です。
11番のりばから撮影。この日をどれ程待ち望んだことか…。
入口には、エンブレムの刺繍のあるカーペットが敷かれていました。
今回乗ったB寝台ツイン。
日中は、テーブルを挟んで2つのソファー。
夜になったら、上段のベットを電動で下げ、ソファーを手動でベットにします。
大勢の人が先頭の機関車を撮影している間、運転士の方は機関車から降りていました。
発車1分前。ホームには発車のベル。そして車内放送。
「お待たせしております、トワイライトエクスプレス。北の大地北海道札幌に向け、間もなく発車いたします。お見送りの皆様、ホームから御願いします。11時50分、間もなくの発車です。」
11時50分。発車のベルが止むと、静かに発車しました。 これから札幌まで約22時間の、トワイライトエクスプレスの旅の始まりです。