連休は本棚の片づけをしました。

何が書いてあったか記憶に残っていない本。
きれいなまま、本棚に並んでいる本。
話題の本と紹介されていたのに、残念な本。
そういう本は、手放します。

内容を覚えている本、
付箋がいっぱいついているのは残す本。

記憶に残っている本の何冊かは、
図書館で借りた本。
だから、手元にありません。

何度も読んだわけでもないけど、
長い年月を経ても、 記憶に残っている言葉があります。
それを指針に生きてきたのかもしれません。
そうやって、価値観はつくられるのでしょうか。

本好きの友人たちと何を話し合ったのか、
もう忘れてしまいましたが、 心に欠片が残っています。

 

高校時代の私は、まだ自分の感情の輪郭が曖昧で、
世界をどう受け取ればいいのか手探りのまま本を読んでいました。
そのころ出会った二つの物語。
その「最後の一文」は、 今でもふと思い出すことがあります。
 

石川達三『稚くて愛を知らず』

院長の一人娘として溺愛され、何もかも与えられて育った友紀子。
結婚しても、母になっても、誰かを愛するという感情が育たないまま、
ただ流されるように生きていく。

人生のどこかで学び損ねた“情愛の欠片”を抱えたまま、
「自分もまた一生、退院できない患者の一人なのだ」
と感じる場面で物語は終わる。

愛されることは知っていても、愛することを知らない。
愛するというのは、自然な情愛ではないと気づいたのは、
たぶんこの作品を読んだときでした。

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モーパッサン『女の一生』

男爵家の一人娘に生まれ何不自由なく育ったジャンヌ。
彼女にとって、人生は夢が次々と実現していくものであるはずだった。
しかし、現実はジャンヌを翻弄し続ける。
乳母妹だった女中のロザリが妊娠し、その相手が自分の夫であることを知った時、彼女は過酷な現実を生き始めた――。
感情移入を抑えて、現実を美化せずにありのままを描く自然主義文学の真髄ともいえる傑作。 
長い年月を経て、ロザリが静かに言う。
「女の一生というものは、思うほど、良くも悪くもありませんね。」

高校生の私には、理解できないことも多く、モヤモヤしていましたが、最後にそう言われると、そうかもしれないと、少し安心したのを覚えています。

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長い年月を経ても残っている言葉は、
そのときの自分の感性に触れた証なのでしょう。
本棚の整理をしながら、 そんなことを思いました。