「悩みのるつぼ」朝日新聞 be 2024.6.8.

 

相談:「こじらせ女子」で大丈夫?

相談者:女性 30代

 

回答:「したいこと」をハッキリさせよう

回答者:政治学者 姜尚中さん

 

相談内容:

昨年、3年間お付き合いした方と

婚約破棄。

 

次こそはとお付き合い始めた彼は

会社を経営。私は職を辞めて

彼の事業を手伝い始めた。

 

彼は高学歴、高収入、見た目も素敵。

誰からもうらやましがられ、

毎日夢の世界にいるようだった。

 

ただ仕事をしていく中で彼は

つかなくてよいうそを重ね、

不信感を抱くようになった。

 

私の趣味や友人関係にまで

口を出すモラハラな怖い部分に

精神的に疲れてきた。

 

このままでは幸せになれない、と

自分に何度も言い聞かせ、

彼から離れる決意をした。

 

37歳で仕事もプライベートも

失う私は「こじらせ女子」と思う。

 

亡くなった大好きな祖母の写真を

見るたび、両親と話すたび、

大切に育ててもらったのに

申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

幸せになりたいのに、

いろいろこじらせてしまう私は

大丈夫か。

 

ポジティブに言えば、

仕事もプライベートも

人生再スタート。

 

ネガティブに言えば、

人生絶望的。

 

毎日鬱々と考えてしまうが、

地に足を付けてがんばらないと、

と思う。

こんな私にお言葉を頂けないか。

 

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回答:

世の中には何かにつけて

人をわかりやすいタイプに

類型化し、それによって

生身の人間を判断する傾向が

あるようだ。

 

そもそも「こじらせ女子」とは

何だろう。

これについていろいろ

言われているようだが、

「不安」「自信のなさ」

「素直になれない」

「感情的になってしまう」などは

誰にでも当てはまる特徴ではないか。

 

要するに「こじらせ女子」とは

こうした特徴を備え、

物事をややこしく、複雑に

考える女性のタイプを

指しているようだ。

 

それを貧乏くじを引く、

損な役回りの女性のように

見なすのは、女性の人格を

「デフォルメ」することには

ならないか。

 

かつて女性の結婚相手として

「3高」(高学歴・高収入・高身長)が

もてはやされたことがあった。

 

あなたが離れると決めた男性は

まさしくそれに該当。

世間の「常識」からすれば、

ラッキーな男性に恵まれた

ことになる。

 

あなたの中に何かしっくりと

来ないものがあったからこそ

世間の「常識」に反する行動に

出たのだと思う。

 

それが何か明確に掴めなくて

謎めいていても、人はあえて

目先の「損得勘定」を超えた

行動に走ることがあるものだ。

 

回りの大人たちの愛情を

たっぷり受けながら育ったらしい

あなたには、人一倍優しい心が

宿っているようだ。

 

その優しさが世知辛い世の中と

摩擦を起こし、上手く立ち回れ

ないことがあるとしても、

それを「こじらせ女子」という

ネガティブなカテゴリーに

落とし込む必要はない。

 

必要なことは、自分がいったい

何をしたいか、まだ将来をともに

できるどんなパートナーを

望んでいるのか、それを

ハッキリさせること。

 

そうすることで、あなたは

「内発的に」自分と向きあって

いくことができるはず。

 

おそらく、あなたには、

他者の個性を尊重しながらも

自分はこうしたいという、

夏目漱石の言う「自己本位」

と言う生き方がヒントに

なるのではないか。

 

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相談者さんは、

昨年に続いて、今年も

別れる決意をなさったのですね。

 

勇気のある行動です。

 

結婚する前に気づけて

よかったですね。

 

世間の常識からすれば、

「なんてもったいない」

かもしれませんが、

不信感を抱き、

精神的に疲れたのなら、

それは、あなたの許容範囲を

超えているということ。

 

ふさわしい相手では

なかったのですね。

 

決断できたのは、

たっぷりと愛情を受けて

育たれたからかもしれません。

 

「子どもができたら

変わってくれる」と

相手に期待し、結婚。

 

その後、モラハラが

エスカレート。

「やっぱり無理だった」と

離婚される方もおられます。

 

「こじらせ女子」と自分に

レッテルを貼らず、

自分の心の正直な声に

耳を傾けましょう。

 

 

ところで、いまの

「モテル男性の条件」

ご存じですか?

 

『4低』です。

低姿勢・低依存・低リスク・低燃費 

 

女性に対して威張らない

家事を女性に頼らない、 

リストラされない職業、 

浪費家でないこと

 

『3高』

高学歴・高収入・高身長

高度成長期のころの話。

 

どういう基準で相手を選ぶか

悩ましいですね。

 

今回の別れで

相談者さんが、

絶対譲れないポイントが何か、

ハッキリしたのでは?

 

そう考えると

別れから学んだことも

あるでしょう。

 

「育ててもらったのに

申し訳ない」と

こじらせないで、

ご自分の幸せを

考えましょう。

 

結婚しても、

独身であっても、

あなたが幸せなら、

ご両親も喜ばれる

ことでしょう。