「悩みのるつぼ」

朝日新聞 be 2024.05.18.

 

相談:「世界の理不尽に我慢できない」

相談者:男性 50代

 

回答:「自分の目で確かめてみたらどうでしょう」

回答者:タレント 野沢直子さん

 

相談内容:

不正義や理不尽な行動を

伝える新聞報道を見るたび、

怒りに燃えて困っている。

 

ロシアの軍事侵攻、

イスラエルのガザへの攻撃――。

アメリカ大統領選の報道。

うそとデタラメで世界を

混乱に陥れた揚げ句、

議会襲撃を起こしたトランプ氏が

さらに再選される可能性も

あるとのこと。

 

こうした報道に接するたび、

激しい憎悪を覚えるとともに、

その後にもたらされる

世界の大混乱を思うと、

絶望的な気分になり、

夜も眠れない。

 

憂えたところで何をするという

手立てもなく、だったら、

新聞報道など見なければよいのだが、

社会問題から目を背けるようで

気が引ける。

 

仕事も家庭も順調で

平和に暮している。

海の向こうのことなど気にせず、

このまま自分の生活を平穏に

送ることだけ考えれば

よいのだろうが、

汚い人間の醜い行為が

どうにも許せない性格が

災いしてして割り切れない。

 

今後ますます酷い状況に

なることが想定される中、

どのように気持ちを

保っていけばよいか。

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回答:

お悩みを読み、

最初に思ったのは、

そんなに心配なら、実際に

線上に出向き、最前線で

戦ったくればいいのにな、

ということ。

 

実際に戦場に行くのは無理でも、

ニュースで観ていることは

どこまでが真実なのか

確かめてくるのは、いかが。

 

ニュースの裏側には、

いつも報道されていない、

現地の声というものがあるはず。

 

報道されていることと

反対側の考えにある人たちが

いることを、いちいち想像して

いただきたいと思う。

 

おそらくあなたは今、

とても幸せだと思う。

 

人間とはないものねだりの

生き物。あまり幸せだと

『心配の種』が欲しくなると

思う。

 

世の中が酷くなるかどうか

誰にも分らない。

 

そんなことを嘆く前に

今の自分が幸せなことに感謝して

自分の周りにいる人たちを

大切に。

 

いつも夜コンビニの店員さんに

声をかける、近所の人に挨拶。

そんな小さなことから連鎖し、

世の中は明るくなっていくと

思うし、そんなに捨てたもんでも

ないんじゃないか。

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相談者さんは、

正義感の強い人。

 

何もできない自分に

イラ立っておられます。

 

「汚い人間の醜い行為が

どうしても許せない性格」と

おっしゃっていますね。

 

自分は、汚い人間ではなく、

醜い行為もしないと

信じておられるわけです。

 

悪に我慢できない自分、

世界情勢を憂う自分が、

おスキなんでしょう。

 

若い頃、そういう男性に

私も出会いました。

 

「こういう本を読んだら?

もっと世界情勢に興味を

持たないと!」など、

熱く語る人でした。

 

でも、あれこれいう割に

何も行動しないのです。

不思議に思いました。

 

相談者さんが、その人と

同じとはいいませんが、

平和に暮す負い目が

あるのかもしれません。

 

 

次々と起きる戦争や事件。

怒りを覚える人は

多いと思います。

 

激しい憎悪を覚えるほどでは

ないかもしれませんが。

 

絶望的な気分になり

夜も眠れないのは、

心配しすぎかもしれません。

 

ニュースを見るたび、

そんなふうになるなら、

身が持ちません。

 

もちろん、世界情勢や

地球の問題に関心を

持つことは大切です。

 

でも、ふと思うのです。

 

もしかしたら

直視すべき大切なことから

目をそむけているのでは?

 

長年、相談電話を受けていると、

ときどき、自分の問題より、

世界情勢、日本の政治について

熱く語る方にであいます。

 

相談者さんは、

そういう方にどこか、

似ているかもしれません。

 

相談者さんが、「平和」と

思っている家庭ですが、

本当に平和なのかなと

気になります。

 

相談者さんが

世界情勢を憂い、

激しい憎悪を覚えているとき、

ご家族の目には、

どう映っているでしょう?

 

怒りに燃えている人って、

周りの空気を重くします。

 

不機嫌な顔をしてると

気を遣わせます。

家庭の平和も乱します。

 

些細な行動が、家庭の平和、

社会の平和につながります。

 

自分にできることは何か考え、

行動に移しましょう。

 

例えば、ユニセフに寄付も

あります。