「悩みのるつぼ」朝日新聞 be 2024.4.13.

 

相談:「不仲な両親を見ていられない」

相談者:女性 20代

 

回答:「夫に振り回されるのをやめること」

回答者:社会学者 上野千鶴子さん

 

相談内容:

初めての出産で実家に

ほぼ10年ぶりに帰った。

 

すぐに父と母の間に

不穏な空気が流れているのを

感じた。

 

母の一番の悩みは

父の食事の世話。

 

夕食がまだ準備できていないと

「なら要らない」と言ったり、

「減量していたが、

友人に心配されたから

今日から食べる」と

言ったり。

 

「お風呂に入ったら気分が

変わった。

やっぱり要らない」など

気分で言うことが

ころころ変わる。

 

父は50代後半。

数年前からの傾向らしい。

 

私にはモラハラに見えるが、

母は「男の更年期かしら?」と

言う。

 

私もご飯の準備を手伝うが、

いろいろ言って家族を振り回す

父の勝手な行動に参った。

 

里帰りしてから2週間ほどで、

顔を合わせるのもイヤ。

 

これでも母曰く、

「孫が来ているからマシ」。

 

同居中の弟も遠くない将来、

家を出るだろう。

 

両親だけの生活になるのが

不安。

 

自立している兄も弟も

「父のことは気にしないのが

一番」と言うが、

うちの家族、どう見えるか。

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回答:

両親が不仲というより、

父親がかつてより自分勝手に

振る舞うようになったせいで

母との関係が険悪になった

という状況?

 

実家に10年も戻らなかったという

あなたも、両親から距離を

置きたい気持ちがあったのでは。

 

50代後半、定年目前。

出世競争にはとっくに決着が

ついている年齢。

 

食事を毎日自宅でとるなら、

閑職にあるのかも。

 

自分勝手な振る舞いは、

男としての焦りやプライドと

関係しているかもしれない。

 

「男の更年期かしら」という

お母さんは寛大すぎる、

というより、それを口実にして

真の問題と向き合おうとしてない

ように思える。

 

振り回されるのは

振り回す相手に

支配されているから。

 

たかが食事のこととはいえ、

力を失いつつあるお父さんは

そうやって家庭内の誰かを

振り回すことで自分の支配を

確認したいのかもしれない。

 

食欲はたんなる口実。

言うことがころころ変わるたび、

右往左往する妻の姿を見るのが

うれしいのだろう。

オレには、まだ誰かを

思うようにする権力がある、と。

 

お母さんに必要なのは、

ころころ気が変わる夫に

振り回されるのをやめること。

 

あなたの分はあるから、

いつでも好きな時にチンして

食べて」と言えばいい。

 

翻訳すれば、

「あなたに振り回されるのは、

もうたくさん」と宣言すること。

 

それができないあなたの

お母さんにも問題がある。

 

夫を変えるのは妻しかいない。

娘のあなたには無理。

 

あなたにできるのは、

そんなお母さんを応援するか、

見ているのが、よほどイヤなら

距離を置くか、どちらか。

 

50代、夫の職場定年が近づけば、

妻の「調理定年」も近づく。

夫婦関係を仕切り直しする節目。

 

これからの長い老後を

夫婦2人でどうやって過ごすか、

今がその転機かもしれない。

 

夫が変わったのなら、

妻も変わる時期。

 

弟が家を出て行かないのは

母が尽くしてくれるのが、

よほど居心地がいいからだろう。

 

弟さんにも変わってもらう

必要がある。

「父のことは気にするな」という

ご兄弟たちも冷淡。

 

あなたが気にしているのは

父ではなく母のことなのに。

 

でも親の人生に娘のあなたが

責任を感じる必要はない。

 

半世紀以上、

人間をやってきた者には

自分の人生に自分で

責任をとるしかない。

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相談者さん、10年ぶりに

ご実家に帰られたのですね。

 

初めての出産で里帰りして、

ストレスMAX。

 

相談者さんは、みたところ、

母親と不仲というわけでは

ないらしい。

 

「男の更年期かしら」と

言ったのは、久しぶりに

来た娘に余計な心配を

かけたくなかったからかも。

 

あるいは、身内の恥を

さらしたくない思いも

あったのかも。

 

お父さんは、食事作りの

大変さを想像できてない?

 

理解できた上での

計画的な嫌がらせ?

 

今回は相手が夫だけど、

相手が義両親とか、

子どもという場合でも

起こること。

 

「食べないなら、作る前に

言ってよ!」という話。

 

振り回されたくないなら、

1.作らない。

2.作る。セルフでレンチン。

 

2の場合、食べなかったら、

残った料理はどうするのか?

 

捨て続ける罪悪感を

感じるのは作り手のほう?

 

妻の言うことは聞かないけれど、

娘のいうことは、もしかしたら

聞くかも。

 

「子どもに悪いお手本を

見せないでね!」も、

効果的な言葉のひとつ。

 

孫が少し大きくなれば、

孫の言葉も、効きます。


 

お父さんが退職して、

一日中、家にいるように

なったら、お母さんは

夫在宅ストレス症候群に

なりそうです。

 

「変わるのは、今でしょ!」と

お母さんに伝えてみましょう。