「悩みのるつぼ」朝日新聞 be 2024.02.10.

 

相談:母のお気に入りだがDVの夫

相談者:女性 50代

 

回答:自分の幸福は自分で責任を持たなければ

回答者:社会学者 上野千鶴子さん

 

相談内容:

子どもの頃から、服装、

髪形など、あまり自由は

なかった。

つき合う人は母が望む容姿や

学歴ではなく、ことごとく

反対された。

 

父が亡くなり、反対される

ことにも疲れた頃、母が

気にいる人と出会って結婚。

 

母は夫を「パパ」と呼び、

お気に入りだった。

 

自称優秀な夫は外では、

いい上司、いいお父さん。

私に対しては舌打ち、無視。

「お前が悪い」

「お前はできない」

「レシート全部出せ」の

DV夫。

 

一度、母に相談したが、

「愚痴は聞きたくない」と

聞いてもらえなかった。

 

ついに体調を崩し弁護士を

立てて別居。

母に報告すると、

「あなたがパパを立てなかった

からじゃないか」と怒られた。

 

「近所の人に言わないで」

「子どもたちが学校に

行けるのはパパのおかげ」と

言った。

 

私は今幸せ。夫との

関係には、もう一段階あるが、

ようやく自分らしさを

取り戻せるようになり、

子どもたちと楽しく過ごせている。

 

とはいえ、母が不幸だと

感じながら老後を過ごすのは

気になる。

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回答:

「私は今幸せです」の一言に、

人生で初めて自分自身で

大きな決断をしたあなたの

自身と喜びを感じる。

よかったですね!

 

娘の夫を「パパ」と呼ぶ母。

キモい。

 

夫を早く亡くし、自分の

望む「容姿や学歴」の男を

娘の夫に選んだ母。

 

娘の夫が大好きな母は、

しばしばいる。

自分が選びたかった男を娘に

代理であてがうのだろう。

その男が、「お母さん」と

慕ってくれればにんまり。

とは言え、結婚したのは、

あなた。お母さんではない。

 

その結婚にDVとモラハラが

付いてきたのは母の想定外。

 

理想かされた娘の結婚の

暗黒面は見たくない、

聞きたくない。

受け入れられない。

 

ここまででわかるのは、

あなたの母親は娘の幸福を

願うより、自分に都合のよい

現実に(たとえ虚構でも)

しがみつきたい自己中の人。

 

娘の対面より自分の対面が

大事。「母の幸福」のため

小さい時から母の顔色を見、

母の気に入るように

生きてきたあなた。

 

その努力は残念ながら、

報われない。

母の幸福に、娘のあなたは

責任がない。

 

半世紀以上も生きてきたなら、

自分の幸福は自分で責任を

持たねばならない。

 

今ようやく母の支配から

脱して自分の人生を生きようと

しているのに、またまた、

まだまだ、母の顔色を見ている?

 

このまま結婚生活を続け、

娘の愚痴の多い暗い顔を

見ながら過ごすのと、娘が、

「自分らしさ」を取り戻して

孫と楽しく過ごす姿を

見るのと、どちらが、

母の「幸福」?

 

娘の幸福が母の幸福。

 

母にもそれを学んでもらおう。

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相談者さん、

よく決心なさって、

行動に移されましたね。

 

相談者さんのように

自由がない子ども時代を

過ごされた方は、

自己肯定感が低め。

 

禁止されることが多いと、

自分で決める経験が乏しく

強い相手に従ってしまいがち。

 

DV夫になる人は、

そういう相手を見つけるのが

とても上手。

 

お母さんが気に入るのは

強い男性、頼りになる人、

何でも決めてくれる人。

 

お母さんに何度も反対され、

やっと見つけた、

お母さんが気に入る相手は、

結局、お母さんと似たような

タイプだったのですね。

 

それって、安定するのです。

つまり慣れ親しんだ母との

関係を再現するから。

 

それで、ダメな私を

演じ続けることに

なってしまったのです。

 

でも、いつか、

限界はやってくるもの。

 

 

50才を過ぎてから、

相談者さんのように

決断する方は、

少なくありません。

 

姉妹ふたりとも、

好きな人がいたのに、

別れさせられ、

母の勧める相手と結婚。

 

幸せな結婚生活では

なかったと言います。

 

強迫性障害に長く

苦しむ人もいます。

 

強迫性障害とは、

強い不安や恐怖、

こだわりがあることで、

やり過ぎともいえる考えや

行動を止めることができず

日常生活に支障が

出てしまう病気のこと。

 

幼い頃の環境、

親の刷り込みは、

なかなか抜けません。

 

そういうものを手放して、

自由を取りもどして

いきましょう。

 

娘の幸福が、

母の幸福です。

 

罪悪感を持たないように

しましょう。