「悩みのるつぼ」2010.10.24. 朝日新聞 be

 

相談:「彼氏が元妻の物を捨てない」 女性 40代

回答:「愛とは自分よりも相手を優先するものです」 美輪明宏さん

 

相談内容:

 離婚して14年になるシングルマザー。一人息子は、この春大学生に。

離婚後、何人か恋人候補はいたが、経済的自立のため必死に看護師と子育ての両立を頑張った。

18歳になった息子が突然、「お母さん、もう男作っていいよ」と言ったので、早速出会い系アプリに登録。

 

 70人近くやりとりをして、心がときめいた男性は、私の幼馴染の元夫で、離婚して1年半。

迷った挙句、会ってみると意気投合し、おつきあいすることになった。

同学年で離婚経験者ということで話も弾み、楽しい日々。

数ヵ月後、「さみしいから、誰か隣にいて欲しくて付きあっている」と言われた。

 彼はドライブしても、「前の妻とここに来た」と話す。前妻の希望で建てた家に一人で住み、彼女の物も

たくさん置かれたまま。捨てるようお願いすると、「高かったから」「そんな若い子みたいなこと言わないで」

「俺は変わる気はない」と言われる。 悪い人ではないが、寂しい。私が好きではないのだろうか。

人を愛するとは何か。自己犠牲とどう違うのか。

 

回答:

 まず、あなたのことを思って背中を押してくれた息子さんに感謝しよう。

お相手の男性は、まだ離婚して1年半。前夫と別れて14年の歳月を経験した相談者とは状況が違う。

久々の恋愛で盛り上がる気持ちは理解できないわけではないが、お互い大人だし、もう少し相手のことを

尊重してみては?

 文面から、ご自分の欲望を優先しているように思う。相手に「こうしてほしい」と考えるのは愛ではない。

例えば、買い物に出かけても、ついつい相手の物を買ってしまうのが、「愛」。

一方で、いいように見られたいと自分の物ばかり買うような状態は、「恋」。

相談者の現在の心境は、私から見ると、まるで高校生。

 物に罪はない。家にある物も、その人を作ってきた歴史の一部。

「親しき中にも礼儀あり」で、少し踏み込みすぎのようにも思える。あなたといっしょにいてくれるだけで、

ありがたいことではないか。

 「私のことを本当に好きか」と考える前に、「相手のことを本当に好きなのか、愛しているのか?」と

ご自身に問いかけてみること。お相手が、「そんな若い子みたいなこと言わないで」と言うのは、真っ当。

自分の要求を受け入れてくれないから「寂しい」、自分のことを好きでないかもしれないから不安…。

もし、お相手のことを心から尊重し、「あの人のためだったら」という心境になれば、そんな考えは

浮かんでこないのではないか?

 一生懸命働きながら息子さんを育て、大学にも行かせたことは母親として本当に立派。

優しい息子さんであることが何よりの証明。今あなたは、いっしょにいてくれるお相手にも感謝し、

その人のことを思える「大人」になるときだと思う。

 

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 相談者さんのお気持ち、お察しいたします。

70人近くの男性の中から選んだ人なんですよね。しかも、幼馴染の元夫!

何というめぐりあわせでしょう。意気投合したは、同学年で離婚経験者という共通項もあったから。

でも、楽しい日々が過ぎると、いろいろと見えてきます。その時期、なんですね。

 彼は、さみしいから隣に誰かいてほしいのですが、元妻と絶えず比較しているようです。

未練があるのでしょう。物にはどれも、思い出が貼りついています。

どこで買ったとか、そのときの声や表情、会話まで思い出せるのでしょう。

そういう自分を丸ごと受け入れてほしいのでしょうね。そこまでしたいですか?

それが、「愛」でしょうか? 

 「親しき中にも礼儀あり」なら、相談者の前で元妻の話は出ないでしょ。

つまり、彼は、いわば、お茶のみ友達+αの付き合いでいいと思っているということ。

温度差がありますね。

 

 息子さんのOKが出て、恋が解禁になったばかり、

ひとりに絞らず、他の人ともお会いになったら、今の自分のニーズがわかります。

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