「悩みのるつぼ」2020.1.4. 

年明け最初のご相談。

 

相談:「友人への怒りが収まらない」 女性 40代

回答:「彼女はむしろ憐れむべき存在です」 姜尚中さん

 

相談内容:

 超高学歴の友人に言われたことが悔しくて忘れられない。

彼女は国内の最高学府を卒業後、ヨーロッパでもトップクラスの大学院に進学。

ヨーロッパ滞在中に知り合った。学のない自分にとって、別世界に住む彼女は知性の塊。

弁が立ち、素直に尊敬していた。

 しかし、付き合いが長くなると、人の話を最後まで聞かない、説教が始まる、

自分の正しさを延々と述べるなど、一方的な性格が見えてきて

私は疲れて黙るようになった。

 教授の紹介で就いたアジア圏での仕事も気に入らなかった様子で、早々に辞め、

帰国後、うまくいかなかったことでひどく当たられた。

 「アナタみたいのが語学の勉強? 無理に決まってるでしょ」

「アナタみたいな語学のできない人間なんか、外資系に行ったってすぐクビに

なるんだからね。アタシはヨーロッパの人間なのよ。日本にいるべき人間じゃないの、

分かるでしょ!」

 怒り心頭で席を立ったが、その場で何も言い返せなかった自分にも腹が立つ。

「外資系だって語学ができても仕事ができない人間は雇わない」と彼女に言いたい。

心の中の怒りにケリをつけたい。黙っているのも悔しい。

心の整理をどうつければいいか。

 

回答:

 長い付き合いの、しかも尊敬している友人から、そんなひどい言葉を浴びせられれば、

誰だってトラウマになってしまう。怒りが発散できないのは、言い返すことができない自分が

不甲斐なく、自分に対しての怒りもあるから。二重の怒りの正体は、なんだろう。

 まず考えてほしい。あなたを頭ごなしに馬鹿にし、プライドをズタズタにするような友人は

友人なのかと。彼女は上から目線で、あなたを自惚れ鏡に映る自分の姿を確かめる

「下級」の存在と思っている。彼女が超高学歴、語学堪能、ヨーロッパ的な見かけの洗練さを

持っていても、「自分はあなたの劣った召使ではないし、あなたは私の友人なんかではない」

と言い返せる。

それができないのは、彼女に対する羨望と劣等感から自由になっていないから。

 

 知性があって美貌で弁舌さわやかでも、「精神なき専門人」「心情なき享楽人」であれば、

そういう人たちは尊敬に値するどころか、むしろ憐れむべき存在。

40代であれば、時代的にまだヨーロッパ的なスノビズム(高尚さをひけらかす俗物根性)が

抜けきらない世代に属しているのでは? 

 今は日本も含めてアジアの台頭が著しく、ヨーロッパの人々がアジアに関心を寄せる

時代。あなたも、あなたの友人も、自分の中にある劣ったアジア、優れたヨーロッパという

旧態依然とした価値観から解放されてないようだ。若い世代のヨーロッパの人たちからも、

何と時代に取り残された旧時代の人間かと蔑まれるはず。

あなたは友人へのコンプレックスと、古い価値観から解き放たれるべき。

そうすれば、楽になる。

 

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 悔しいですね。お怒り、ごもっとも。

彼女は、もともと友人ではないのです。

友人の定義は難しいですが…

彼女にとって、あなたは、自分の崇拝者以外の何者でもない。

光り輝いていた才能も、美貌も陰りを見せ、仕事もうまく行かない。

いわば、ブランドのラベルはついているけれど、賞味期限切れ。

もはやあなたをバカにすることでしかプライドを保てないとしたら、哀れ。

痛々しい。過去の栄光にすがって生きているのでしょうか。

現実の自分が見えていないのですね。

彼女の中にあるコンプレックスは、「これほどの学歴、キャリアがあるのに、

うまく活用できないこと」でしょうか? 

自分を値打ちのない人間と思うことは、彼女にとって認めがたいこと。

 

 それに比べて、あなたは、現実と向き合ってこられたのでしょう?

「できること」「できないこと」をご存じなのでは?

ご自分が、できることをして堅実に生きていきましょう。

 

幸福度も、仕事への満足度も、自分次第ではないでしょうか。

心穏やかに過ごせるように、コンプレックスと古い価値観を手放しましょう。