“パチン” 

頬が回った。薄い頬が枕に沈んでいった。
光を見るのは久しぶりで、ユノを殴る僕の手とか、僕に殴られたユノの頬は驚くほど白い。
ユノはぼんやりした目を開けて立ち上がった。ユノはおとなしくカササギの巣のような頭で上半身を持ち上げた。 



「僕、そろそろ出るからご飯の準備しないと。」


無表情で言った。朦朧としていたユノの視線が僕に固定された。 うん、そうだ。ご飯の準備しないと。
ユノは首を横に振りながら、開かない目をこすった。確か学校で一晩中課題をしたと言っていたが、僕の知るところでははなかった。
チョン・ユンホが課題をしていた時、僕はこの狭い家で寂しさと孤独感に包まれて死んでいた。 
ユノの体温があってもなかなか眠れないのに、体温のない夜はひどい熱帯夜だとしても寒くて大変だった。 
着ている制服の表面がざらざらしている。チョン・ユンホが回した下手な洗濯物は、柔軟剤の匂いが強すぎる。 
鼻をこすりながら部屋の鏡の無表情な自分を見た。薄茶色に染められた髪が下品だった。 
僕を踏みにじってくるやつらの言う通り、安っぽい娼婦のような顔をしている僕が鏡の中に映った。


そいつらはじっと座っている僕の頭にビール缶を投げた。ビールの炭酸が流れ落ちて目に入り、何度も涙を流した。頭にかかったびしょ濡れのビールは炎天下で照りつけられた。


「キム・ジェジュン立ってろよ」

「ビールで染めれるって聞いたことあるけど、本当にできるのか?」



やつらのただの一言に僕は4時間炎天下で何も言わずに立っていなければならなかった。チョン・ユンホが洗ってくれたごわごわする制服を着て、ビールを被って。彼らの好奇心は僕にこんな安っぽい髪色を与えてくれた。 


まばたきして鏡を見るなんてことやめることにした。ためらうことなく目を伏せると、ご飯を出してくるチョン・ユンホが見えた。端正な顔のユノは歩くたびに、端正でない音がする。 
スーッ、スーッ。 だらだらと足を引っ張る音。足が病気のチョン・ユンホ。 右足の膝の筋肉が弱いので、意識して歩かないとあんな音がする。 ユノはいつもまっすぐ歩いている時以外はあんな音を出さない。 皆、チョン・ユンホがああなった時、残念がっていたが、僕は足が不自由になったチョン・ユンホをとても気に入っていた。 
自由ではないようで。翼を失ったカナリアのようにいつでも鳥かごに入れられる致命的な障害。僕のために作られた温かいご飯を見ながら床に座ってまた瞬きをした。ユノがスプーンを持った僕の髪を整えてくれる。 



「藁みたいでしょ?」

「いや、きれい」



すぐに顔をしかめた。変なヤツ。



「学校で何か言われないか心配だ。」

「何も言われないよ。」



さっと返事をしてご飯を押し込んだ。何も言われないはずがない。読解力の抜けた学年主任は、3日連続校門の前で僕の髪を握って振り回した。染めるお金がありません。 染めるお金をくださればします。 年老いた学年主任は、本気で同じことを繰り返す僕の言葉を単なる子どもの戯言、つまり反抗だと考えた。かなりきついと評判の彼は、僕の髪を何度かつかんで、結局僕をあきらめた。 


つまらないことを考えていると、すぐにご飯が上がってきそうになり気持ち悪くなった。それでも一応空腹よりは何かで満たすことで一日耐えられるので、またすぐに飲み込んだ。



「ゆっくり食べて。」



幼い頃のように僕の口元を拭って、自分もスプーンを持つ。スプーンを持った手はきれいだったが、ほとんど何もした事の無い彼の手は粗雑だった。ハンサムな顔で強そうな表情をしている。そうそう、僕にだけ柔順なチョン・ユンホだろう。痩せた肩と違って腕についているしっかりとした筋肉を眺める。その肩はあっという間に食欲ではなく性欲をそそのかした。手が細く震えていくのが感じられる。こんな僕を見せたくなくて、またうつむいてご飯を押し込んだ。 


「今日遅いの?」



僕の問いにチョン・ユンホが顔を上げた。彼の顔は彼が持っている堅固さをすべて表している。この顔を見るたびに息が詰まるが、僕の行動は再び下を向くだけだった。 



「いや、俺今日は午前の授業しかないだろ。」

「その…課題はないの?」

「うん。」



僕が下を向いて返事をしていても、話す度に目を合わせる癖があるチョン・ユンホは、僕の頭頂部をじっと見ているだろう。 顔を少し上げてみると、やはり目が合った。 横に置かれた薄っぺらいかばんを掴んだ。チョン・ユンホが僕の身振りに合わせて立ち上がる。ちらっと見たユノのご飯は半分以上残っていた。 



「頑張って。」



キーキー鳴るドアを足で蹴るように開けて、後を追って見送りに来るチョン・ユンホの顔を再び見上げた。 衝動に包まれた。僕はユノの首に腕を回した。 笑っていた目を丸くするユノを眺めた。僕は彼の唇に唇を当てたいと思ったが、鼻先だけをそっと合わせることで行動を控えた。ユノは軽く僕の背中を叩いた。 



「大丈夫。」