「叔母んがお前だけ呼んだの?」
「うん、僕だけ」
疑いに満ちた瞳を避けて、すぐに玄関のドアを閉めて出てきた。
こいつは、一つも見逃さない。これだから賢いやつと付き合うのは大変なんだ。
ジェジュンは赤い唇をピクピクと動かしながら家の前に、待機している銀色のBMWの後部座席に素早く乗り込んだ。
玄関までついてユノがついて来たが、わざと見ないように努力した。
隣には座っていた20代半ばの男が気がきかず、車から降りて挨拶するようなモーションを取ろうとしたので、必死に腕をつかんで阻止し、前の運転手に出発してほしいと告げた。
すぐに走り出した車を、かかしのように立って見つめるチョン・ユンホから、どんどん離れていく。
生まれた時からジェジュンの家にも、ユノの家にも双子のようにセットとして待遇されたジェジュンとユノ。
特別な場合を除いては、大きくても小さくても、どんな家庭行事であれ、いつも一緒だった二人。このようにジェジュンだけを別々に呼んで行くということは、とても疑わしいこと。
ジェジュンはすでに家に帰って何と言い訳すればいいのか、と頭を混乱させていた。
「久しぶりだね。〔ヌイ※〕。前に会った時より、もっときれいになったみたいだ。今日は写真映えしそうだね?」
「あっ!〔ヌイ※〕って言うなっていっただろ!たくっ、たからビジネスやってる人は信じちゃいけない。 奸悪な日和見主義者で、私利私欲に目がくらんだ詐欺師たちだ。」
「ヤー!かなり怒ってるね。母さんに先に頼んできたのはそっちじゃないか。願いを聞き入れたんだから、当然それに当たる対価を払うのは当然でしょ?咲こうとしてた蕾の一つを踏み潰したんだから、たった一本CMを撮るくらい難しいことじゃないと思うけど…。そうじゃない、〔ヌイ※?〕」
“ヌイ※”という発音に、少しアクセントを加えて発音し、にやりと笑っいるハンサムな人はジェジュンの従兄弟だった。
SN・エンターテインメントの代表のジェジュンの叔母の次男で、20代半ばの若い年齢にもかかわらず、現在理事を務めているシム・チャンミン。
女の子達が見たら(すぐに倒れる)と言われているが、ジェジュンはチャンミンの笑みをなんとなく卑劣だと感じ、はばかることなく“クソっ”と吐き出すと、神経質に背を向けて窓の外を眺めた。
あの事件の後から2週間が過ぎた。日を重ねるごとに細胞が再生され、増殖する血気旺盛な年齢なので、ジェジュンの肩もそうだが、ユノの頭と手もいつ怪我をしたのかわからないくらいまで元気な状態になった。
もちろん、これ以上、ユノの縫った傷跡を見たくないが。
車窓の外で、目を痛いほど通り過ぎる風景をぼんやりと眺めながら、あの日、叔母さんに電話を掛けたことを思い出した。
ジェジュンは、いきなり、どんな手を使ってでもチャン・ヒスが二度と芸能活動ができないようにして、と叔母さんに頼んだ。
映画にも手を回したかったが、彼女一人のために多くの苦労のかかった努力の結実を無惨に壊すのはあまりにも卑劣な行為なので、そこまでするのはやめ、テレビであの憎たらしい顔が見られないようにして、と頼むことにした。
ジェジュンを自分の息子よりも可愛がる叔母さんは、その依頼を快く許諾し、頼んだ二日後にはテレビをはじめ、新聞、雑誌には、暴力団と関連および性売買関連記事のタイトルが付けられたチャン・ヒスの顔が派手にメインを飾った。
彌阿里(ミアリ)娼婦村に売り飛ばしたわけじゃ、ないが、女性としてはそれに似た打撃の社会的立ち場だ。
まあ、まだ新人だからしばらく顔を隠して、一、二年後には、さり気無くまたTVに出てくるんだろう。 (そう考えると、社会経験のある野心的な女とは本当に恐ろしい。)
いずれにせよ、彼女の汚い品行の殻を力を使って少し暴き出しただけだが、ジェジュンの望みはあまりにも簡単に叶えられ、それを口実に思わぬ“対価”という矢がジェジュンに返ってきた。
(母方の)叔父さんの会社と外国ブランドがコラボして発売する男女カップルの香水CM。
元々チャン・ヒスが撮るはずだったそれをジェジュンが代わりに撮ることになった。
かつて、抜群の美貌を誇るジェジュンに注目していたジェジュンの叔母は、幼い頃からジェジュンを芸能人としてデビューさせようと不断の努力をしていた。
(しかし、結婚とともに引退したがいまだに世間の関心を受けている人気女優出身のジェジュンの母親まで加わってまで、ジェジュンをカメラの前まで立たせたが、これまで何度も挫折してきた。)
お母さんから受け継いだ才能(or芸能界の素質)のおかげで他人の視線を楽しむことができ、カメラの前だとさらに表情が蘇るジェジュンだったが、幼い頃はユノと一緒にやらないと意地を張り、大人になった頃からは自分自身があまり興味がなくなった。
いや、それはユノとの暗黙の約束だった。 他人の関心などは、小さな視線一つでも認められないという互いに対する奇異な執着と所有欲が生み出した足かせ。
中学校の時だったっけ?あまりせがむ叔母さんのために一度聞いたことがある。自分が芸能人になったらどう思うか。ユノはいつにも増して冷静かつ断固とした答え方をした。 “誰ともお前を共有する気はない”と。
もちろんその答えには、笑みがこぼれるほど満足しており、自分だってユノが同じように聞いてきたら、そう答えるのは明らかだった。
(考えてみれば、僕たちは小さい時からお互いに狂ったもの同士だった。)
昔の考えにぷっと噴き出していると、自分の乗った車が騒々しい女の子たちでごった返す路地に進入して行った。
土曜日の授業が終わるやいなや、あるいはサボることも厭わずに自分が追従するアイドルを見るために駆けつけた制服を着た女子高生たち。
車内に自分の好きな芸能人でも乗ったのではないかと心配で、自分の安全も考えずに飛びかかる無謀さに眉をひそめる。
ああ、たくっ。この優れた美貌にあんなものが次々にくっついてきたらどうする?そうなったら、本当に危ない。
まさかあれを全員殺すと言ってチョン・ユンホが斧で持って暴れたりしないだろうか?ふむ…ありえない話じゃない。ひひっ。
かなり悩みながら地下駐車場に止まった車から降りた。
とにかくキム・ジェジュンマスコミデビュー?面白そう。
あっ!くそっ!何これ!これを僕が着ろって?
“面白そう”という言葉は取り消しだ。社長室に行って叔母さんと挨拶を交わし(言葉のあいさつではなく一方的にキスされたものだった)撮影を見守ると言ったことも忘れてついていこうとする叔母さんをやっと止めて、マネジャーにでもなったかのように追い回すチャンミンと一緒に、すでにスタンバイしている地下セット場に下りてきた。そう。そこまではよかった。
二つに分かれている巨大なセット場に、ロボットみたいな大きいカメラ、そして戦場でも彷彿させるくらい忙しく動く数十人のスタッフを見ても、怯えるどころか生気が蘇ったジェジュン。
そんなジェジュンに、にやりと笑って先に衣装を着るようにと抱かせるチャンミン。妙な目つきがおかしいと思ったが、ジェジュンは素直にうなずいて脱衣室に入った。
そして、服を広げた瞬間、ジェジュンは動揺しながら首の後ろを掴んだ。いつついて来たのか、わざとらしく、くすくす笑うチャンミン。(そのせいで、どんどんイライラしてくる。)
「言ったでしょ。チャン・ヒスの代わりだって。」
「クソっ。じゃあ、僕に女装して撮れって?」
「ビンゴ!」
「正気?絶対に着ない!」と衣装を床に投げつけた。
男のプライドがあるのに女装だって?それもテレビや紙面広告で人々の目に大々的に露出されるっていうのに、話にならない。たくっ、このキム・ジェジュンを何だと思ってるの。ピエロにでもするつもり?
地面を突き破るように力いっぱい足を踏み出し、斜めに道をふさいで立っているチャンミンを意図的にぐいぐいと押し退けて、脱衣室のドアの方へ歩いた。
しかし、ちょうどドアの取っ手を捉えたとき、ジェジュンの足取りはそのまま止まってしまった。
「変だろう?キム・ジェジュンが、どうして急にチャン・ヒスを邪魔と思うようになったのか。何不自由ない君が、母さんの手を借りてまで貶めるほどのことを、その子がしたんじゃない?」
「...............」
「君がそうやって一人の人生を壊すほど怒ったのは、チョン・ユンホが原因なんだろ。ちがう?」
ジェジュンは、顔をしかめて徐々に背を向けた。 余裕のある表情で視線を合わせるチャンミンは、依然としてにこにこしながら、事件を解決してべらべらと状況説明を並べ立てる探偵のように浮かれて話続ける。
「母さんから話を聞いたとき、不思議に思って、久しぶりに君の顔も見ようと、あの日、すぐに君の家を訪ねたよ。君とユノ…怪我したみたいだね。」
「……くそ」
「たぶん、それはチャン・ヒスと関係があるんだろう?君は小さい時からチョン・ユンホの関わることなら水火もいとわない性格だったからね。そう考えると全てのピースが当てはまる。ねぇ、そうでしょ?」
口が固まったように動かなくなって反論ができない。
ただ目を見開いて、べらべらお喋るチャンミンを睨むのが精一杯。
「じゃあ、どうして、権力を持っているユノではなく、君がこの問題を解決しようとしたのか。ユノは君より怪我が酷かったとしても、君が怪我しているのを見てられない奴だ。その気になれば家の力を利用してもっと簡単にチャン・ヒスを処理できたはず。多分、それは、どういう理由かは分からないがユノの家にこのことを知られたくないから。ちがう?」
肩をクイッと上げて、にこにこしているあいつの顔を削ってしまいたい。 くそ野郎、こいつもユノに匹敵するくらい頭のいいやつだってことを忘れてた。
次男なのに、兄も追い抜いて事業を受け継ぐほど、頭が良くて、要領の良い奴。絶対に巻き込まれてはいけない。
「うるさい。自分が探偵にでもなったみたいに、ふざけたこと言って。」
「へえ。じゃあ、ユノが怪我をしたこと、ユノの実家に言ってもいいの?事業上の問題でよく連絡を取り合うんだけど。」
「なに!?お前、そんなことしてみろ!絶対に殺してやる!」
「うん、ほら。やっぱり、僕の言った通りじゃないか。ハハ。また弱点を見つけた。ジェジュン。」
「あっ!この野郎!最低!」
「まったく。この野郎なんて、お兄様って呼ばなくちゃ。さあ、早く着て撮影に行きましょう。〔ヌイ〜※〕」
床に捨てられた服を手に持ち上げて、ジェジュンの腕に掛けるチャンミン。
怒りに耐えられずぶる震えながら自分をにらむジェジュンの頭を撫でながら、その大きな目がすべて閉じないくらいににっこりと笑う。
しかし、これはさっきまでの冷やかすような茶目っ気たっぷりの笑顔とは少し違っていた。 まるで子供をなだめる大人の優しい笑顔。
「僕もジェジュンの性格を知っているから、女装なんかさせたくなかったんだ。でも、男性モデルはすでに最高金価の奴で契約が終わった状態だったからどうにもできなくて。母さんも叔父さんもこのCMに“ジェジュンを使わなきゃいけない”って言い張ってるし…。仕方ないじゃないか。それに、このまま芸能活動をするつもりがないなら、むしろプロフィールを隠して、他人として撮ってしまうのもいいと思わない?テレビに出て、ファンに追いかけられでもしたら、ユノの奴も気分は良くないだろうからね。」
そう、確かにそうだ!チャンミンは確かにユノほど頭がいいが、ユノにはない巧みな説得力という武器も持っていた。
最低な奴だと思いながらもジェジュンはチャンミンの言葉に頷くしかない。
可能ならば、ユノが知らないというのが二人の関係にとって一番いいんだけど。
今日、別々に呼ばれたのは適当にごまかしておけばいいだろうし、みんなが気づくことがなければ、今の平和が壊れることもない。
どうせユノはテレビを見ないんだから、自分からCMに出たことを言わなければ気づくわけが無い。
一、二ヶ月放送されて、消える映像も特に気にする必要はないだろう。 そう、(これしきのことぱっとやっちゃえばいいんだ。)
そこまで考えが及ぶと、ジェジュンは依然として頭を撫でるチャンミンの手を荒々しく振りほどき、“服着ないといけないんだから、出てって”と大声を上げた。
うんうんともがきながらもワンピースを着ようと頑張っていたが、結局、後ろのチャックが上げられず、文句を言いながら“シム・チャンミン!”と仕方なく叫んだ。
そのせいで、待っていたかのように、にやにや笑いながら入ってくるチャンミンの見たくない顔をもう一度見なければならなかったが。
🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈🎈
もっと、早く投稿できると思ってたのですが、かなり遅くなってしまいました( ˊᵕˋ ;)
微妙に難しくて、結構手こずりました、、、
久しぶりだったから慣れてなかったけど、ここ何日かやって、慣れてきたし、
やっぱ翻訳楽しいですね(´∀`*)
・・・・・
しゃべくりのジェジュン可愛かった〜(∩♡∀♡∩)
(本当はその日に投稿するつもりだった(^^;;))
久しぶりに、リアタイで見ちゃった!!
五人の時の出たしゃべくりを見たのが、私が五人にハマるきっかけだったから、ジェジュンが出てくれて嬉しかった(≧▽≦)
また出てくれないかなー?
あと、原田さんが上田さんのこと、1回ピョンスって呼んでましたよね(´▽`)
五人が出た時に、ジュンスを真似て
上ピョン+ジュンス
で、
ピョンスに、
確か、
(でも、ピョンスって、韓国語?で、水餃子って意味だった気がする。)
しゃべくりが好きで、 毎週録画してるんですけど、
たまにそう呼んでるのをみると、嬉しくなっちゃうんですよね(つ∀`*)
まさか、ジェジュンの前で呼んでくれるとは(๑°ㅁ°๑)!!
・・・・・
今回の翻訳、口語?の所が難しくて、かなり悩まされました(ヽ´ω`)
自然な形にするのって、翻訳じゃなくても難しいですよね、、、
話の中で、チャンミンがジェジュンのことを言う?時に、
“君”って使ったんですけど、
従兄弟の設定なのに、違和感があるじゃないですか(。-_-。)
“お前”を使うと、口が悪くなっちゃうし、
日本と違って、二人称?を使って、文書が構成されているから、翻訳が難しいですね。
今回は、他のところも、違和感が多いかもしれません。ごめんなさい(><)