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テレビで楽しむプロ野球

テレビで野球観戦し続けることウン10年のプロ野球ファン。CS放送以外のジャイアンツ戦は全て録画してでも観戦しています。日々の観戦ノートを元に、1カードにつき1記事ぐらい、書いています。

 長年そのチームに在籍していたわけでもなく、華々しい活躍を残してきたわけでもなく、素晴らしい数字の記録を持っているわけでもない。そのような人物が監督に就くことは、ほとんど過去になかったのではないでしょうか。今シーズンからファイターズの指揮を執る栗山監督は、そのような人物に該当するといえます。珍しい人選であるだけに采配には注目したいですし、今後の戦いも気になる。そう感じている野球ファンは少なくないのではないでしょうか。そんな視聴者の視線を受けてか、アナウンサーがファイターズというチームをどう思うか、質問してくれました。
桑田「非常にバランスのとれたチームといいますかね。北海道に行っていい風に変わりましたよね。歴代の監督の功績もあるんでしょうが、栗山監督もね、僕は個人的には好きなんですよ。今の時代に合った監督だと思います、はい」
アナウンサー「何よりも、栗山監督のひとつの特徴は、実に綿密なコミュニケーションを選手ととります」
桑田「どちらかというと、野球界というのはコミュニケーション不足といいますか、一方通行のタテ社会ってよく言われるじゃないですか。一方通行だけだったんですね。コミュニケーションということは双方向ですから。やっぱりこちらからも意見を言う、選手からも聞く、というですね。ホントに僕は今の時代に栗山さんのような監督が必要だと思うんですね」
アナウンサー「ファイターズの控えの選手が言っていました。栗山監督は『お前の役割と武器はこれだ。だからこういう調整をしてくれ。ゲームの中でその通りになるから、選手は働きやすいんです』と」
桑田「あとは、ビジョンをみんなにちゃんと伝えて、自分の野球はこういう野球だっていう、それを明確にしてくれるんで、選手もやりやすいでしょうね」
立浪「あと、栗山監督は、ホントに、今コミュニケーションということ言われましたけど、とにかく選手に気を遣いすぎるぐらい、それぐらいの配慮があるということをね、選手が逆に気を利かすぐらい気を遣ってもらえるということは言ってましたね。ただ、そのなかで、日本ハムの野手陣に関して言えば、レギュラーを長くはって実績のある選手、自分でできる選手が多いですからね」
アナウンサー「89年、栗山英樹現ファイターズ監督はゴールデングラブ賞を獲得しました。ただその後、次の世代の台頭などもありまして、現役生活は非常に短かった。だから自分は、実績がない。評論家時代に、ならば足で稼ごうといって、もう日本だけではありません。オリンピック、WBCまで足を伸ばして、野球のエッセンスを吸収しました」
桑田「あとは、アマチュア野球もよく勉強されてましたよね。ホントによく。苦労されましたけど、よく勉強された。僕はホントにいい監督だと思うんで、成功してもらいたいですよね、はい」
 立浪氏の言う「気を遣いすぎるぐらい」というのはベンチの表情やしぐさからもよく伝わってきます。監督として堂々と胸を張って立っていたり、力強く厳しい顔つきで視線を投げかけている、というのとは対極。低姿勢なのです。眉毛を下げて(もともと下がり気味ですが)眉間にシワを寄せながら福良コーチや中島コーチなどに話しかける姿はまるで逆転している印象。コーチのほうが監督のようにさえ見えます。引退して20年が経過しているからでしょうか。アンパイアに交代を告げる時のユニフォーム姿にも指揮官らしい存在感が漂っていません。ゲームセット後に選手たちを迎え入れるハイタッチも、首をすくめるように、下から目線になるよう身体を傾かせているのです。手の出し方もソフト。
 テレビ画面で見た限りでは、今までの数々の監督の姿とはかけ離れているといえます。けれどもゲーム中に、このような上位打線のデータがテロップで表示されました。
糸井  四球数・出塁率リーグ1位
小谷野 犠打数リーグ1位
田中賢 得点数リーグ1位
中田  全試合四番スタメン
稲葉  打率・得点圏打率・打点リーグ1位
 桑田氏や立浪氏の言う、栗山監督のコミュニケーションの成果でしょうか。「お前の役割と武器はこれだ」という言葉が選手達に浸透しているのかもしれません。

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G×Fs @東京ドーム
5/27 日テレ→BS日テレ 上重アナ→田辺アナ、解説:篠塚和典、水野雄仁
5/28 BS日テレ→日テレ 平川アナ→河村アナ、解説:桑田真澄、立浪和義
 2戦目の解説はPL学園時代同部屋コンビのお二人。長野選手のバッティングについてこんな会話がありました。
立浪「長野選手がちょっと状態をわるくしてたんですけども、ここのところようやくまた上がってきましたね。長野選手のバロメーターっていうのは、足を挙げた時に体重が乗りすぎるときがあるんですよね。だから、足を上げて体重をためることが大事なんですけど、ためながら前に入っていく状態の時は、状態がいい時ですよね。今はいい形でタイミングとれてますから、素晴らしいヒットになったと思うんですけど。体重が残りすぎますと、とけてしまって真っすぐにさしこまれて。で、今度逆に変化球は泳いでしまうんですよね。だから軸足って凄く大事ですね。
 だから昔、足を上げる代表的なバッターといえば、王さんがいますけど、左打ちですから右足を上げた時に、軸足一本で立ってる時に『どこから(身体を)押しても全く動かなかった』っていう。それぐらい軸足を踏ん張ってボールを待つ事、特に足を上げて待つ選手は大事なんですよね。今、意外と足を上げる選手は多いんですけど、足上げた時に前からポンと押すとすぐ後ろに飛んでいってしまうというような選手が多いんですよね。足の上げ方がですね、もちろのんしっかりと(軸足に)乗らないといけないんですけど、常に『攻めていける軸足』でないといけないという。
 たぶん、おそらく桑田さん、ピッチャーもそうなんですよね」
桑田「そうですね、僕なんか、よくイメージしたのは『根を張る』という。マウンド、あの土の下に根を張っているというですね、片足で立った時に根を張っているようね感じがある時っていうのは、自分の思うようなボール、投げられるんですね。それが、一本足で立った時にふわふわぁっとするようではダメなんですね。そういう時はだいたいやられますね」
アナウンサー「立浪さんがおっしゃった『攻めていく軸足』という表現も、また非常に大切さを物語りますね」
立浪「そこはでも、いちばん難しいところなんですね。そういう軸足になるからステップする方の足がゆっくりと着けるんですよね。だから、いいバッターとわるいバッターの違いって、踏み出した足が『淡白に着く』か、今の坂本選手のように、粘って、こう、『ボールを探しながら』見えるかっていう、その部分だと思いますね」
 選手たちが格闘する微妙な力のバランス感覚は、プロにしか理解できないようなとても些細でミクロな世界のものだと思います。けれども、両氏のような、『根を張る』『淡白に着く』といった表現は、はっきりとは理解できないまでも、なんとなく分かるような感覚を呼び起こしてくれるもの。プロの感覚を一般的な言葉へと言語化することは容易ではないと思います。けれども、こういった言語化を耳にしたとき、解説者を介する野球中継というものの醍醐味を感じ、悦に入ってしまう。

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G×Fs @東京ドーム
5/27 日テレ→BS日テレ 上重アナ→田辺アナ、解説:篠塚和典、水野雄仁
5/28 BS日テレ→日テレ 平川アナ→河村アナ、解説:桑田真澄、立浪和義
 1戦目、2回裏、武田勝投手は先頭打者の村田選手をピッチャーゴロに抑えます。次に打席に入ったのは阿部選手。アナウンサーは2人をこう紹介しました。
「立正大学の武田勝、中央大学の阿部慎之助。東都リーグで大学時代、対戦の経験もあるこの2人」
 ここで、テロップも出ます。高校、大学時代から対戦、同期対戦。99年東都大学リーグ1、2部入れ替え戦、武田勝が阿部にホームランを浴びる、と。2ボール、1ストライクからの4球目、キャッチャーはアウトローにミットを構えましたが、武田投手の投じた球はインハイへ。この球を阿部選手はライトスタンドへ叩き込みます。同点弾。篠塚氏、水野氏、アナウンサーの間でこんな会話がありました。
篠塚「もう完璧ですね。ああいう失投というか、ああいうボールをきっちりとらえていかないと、やっぱり(武田投手を)崩すのはキツいですよね」
アナウンサー「武田勝にしては失投。少し高かったですね」
水野「初球も3球目もキャッチャーの構えたところとは違って、今のところ(アウトロー=高橋由伸選手はこの球を打ち1ゴロに倒れます)に構えたのが、高めにいったんですよ。
 だから、私の勝手な推測なんですけど、高校時代から負けたくないライバルに対して、ちょっと力が入ってムキになったかなっていう。そういう印象を受けましたよね」
篠塚「そうですね、最初の投球から、ちょっと力入って」
水野「他のバッターとは明らかに、こう。投げミスになるっていうのは、『このバッターだけには打たれたくない』っていう力っていうのは、リキみっていうのは、(原因として)あるんですね」
 1ゴロの高橋由伸選手に続いて、次の打者の谷選手もショートゴロ。武田投手は持ち味を出し、3つのアウトをゴロで奪いました。
 4回に再び阿部選手の打席が回ってきたところで、アナウンサーは2人のリポートを伝えます。
「高校は阿部が安田学園、武田勝が関東一高。大学は阿部が……(略)……大学。試合前に武田勝が『阿部さんとの対決は意識します』と話してました。いっぽうの阿部も『高校時代にやられているのでプロではやり返したい』と話していました」
 やはり、高校時代、大学時代という過去の対決が、10年以上の歳月を経た今となっても互いを意識させていたのです。プロ野球選手のインタビューを見たり読んだりすると驚かされることがよくありますが(選手にとっては当たり前のことなのでしょうが)、野球選手の過去の対決に対する記憶力は抜群。球種や配球もこと細かに語ることのできる選手がほとんどではないでしょうか。アマチュア時代にまでさかのぼった過去の対決時の記憶もしっかりと選手の頭の中には残っているのです。ですから、それらの中の、いつの場面、どんな状況の記憶を胸に、今グラウンドで対峙しているのか。過去の対戦結果や対戦局面に思いを馳せ、水野氏のように推測しつつ観戦するという視点を持つのも、また一興なのでは。
 このような対決の球歴は、もちろん選手名鑑には出ていません。インターネットで検索しながら見るのは一期一会のロス。ですから、過去の対決を解説者たちが話題にして、タイミングよくテロップまで表示してくれるというのは、テレビ中継ならではの付加価値。もちろん、対戦データの数字テロップもわるくはありません。が、過去の対決として選手の中に残っているであろう記憶のテロップ表示は、選手の気持ちをより深く辿ることができ、テレビ観戦者に新たなツボを指南してくれるといえます。

 翌日の試合、ホールトン投手と陽選手の対決場面でのこと。昨年は11打数5安打とホールトン選手は陽選手によく打たれているというデータが紹介されました。ホールトン投手にとって陽選手は相性のわるいバッターだといえます。それをふまえて桑田氏が語ります。
「このまえのボールも、インサイド低めの、ストライクと言われてもおかしくないボールなんですけど、やっぱり(ピッチャーに対して)相性のいいバッターが打席に立つと、ボールっていうコールになってしまうんですね。
 これはね、僕もちょっと分析してみたいなと思うぐらいですね、不思議なもんで。たとえば、ピッチャーが(=ピッチャーにとって)相性がいいバッターだと、どこ投げてもアウトとれるんですけど、相性がわるいバッターだとどこ投げても打たれるし、バット折れてもヒットになるっていうね。いいところ(=きわどいコース)は全部ボールって言われるというね。
 ホント、何か『目に見えないもの』があるんですよね」
 この打席で陽選手はセンター前にヒットを打ち、桑田氏は言います。
「さすが、相性いいですね」
 『目に見えないもの』は、もしかしたら、昨年11打数5安打というデータからは読み取れない過去の対決によるものなのではないでしょうか。武田勝投手が大学時代の1、2部入れ替え戦で阿部選手にホームランを浴びた、というほど客観的に決定的な対決とは限りません。完璧だと思った球をヒットされたとか、気に入らない見逃され方やバットの出し方をされたとか、そういったホールトン投手にしか分からないような個人的な記憶が、実は影響しているのかもしれません。

 ところで、高校時代のライバル視がリキみに繋がったのでは、と推測した水野氏。池田高校の3年生エースとしてPL学園と対戦した時、彼は1年生の清原選手から3三振を奪いました。いっぽう桑田選手には甲子園で初めてとなる本塁打を浴びてしまいます。先日の西武ドームでの始球式で、水野氏は清原氏から空振りの三振を奪いました。これは30年前の記憶が清原氏をいまだにリキませたからだと考えるのもわるくありません。

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5/27 日テレ→BS日テレ 上重アナ→田辺アナ、解説:篠塚和典、水野雄仁
5/28 BS日テレ→日テレ 平川アナ→河村アナ、解説:桑田真澄、立浪和義