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テレビで楽しむプロ野球

テレビで野球観戦し続けることウン10年のプロ野球ファン。CS放送以外のジャイアンツ戦は全て録画してでも観戦しています。日々の観戦ノートを元に、1カードにつき1記事ぐらい、書いています。

 交流戦ではホームラン数トップ、このところ上り調子のおかわり君・中村選手について、吉村氏は話しました。
「バッターっていうのはね、つまるっていうのをいちばん嫌がるんですよね。それだったら、前でさばこうというふうに思うんですけども、実際に、自分のポイントでもつまるというか、キャッチャー寄りに入るほうが、身体の力というのは使えるんですね。そういう点では、逆に、少しつまってでも飛ぶ。
 というふうに、中村が今感じているんであれば、すごく軸を意識しながら、彼本来のバッティングができつつある。と私は理解しています」
 つまることをバッターが嫌がるという理由は、分かるような気がします。特に長距離バッターにとっては、遠くへ軽く飛ばしたいという意識や、つまるイコールかっこわるい、負けを意味する、といったプライドのようなものが、どこかにあるのではないでしょうか。長距離バッターたるものはこうあるべき、こうありたい、といった理想型やイメージが、「つまること」を忌避させると考えられます。
 けれども、実際の身体のメカニズムを冷静に捉えてみると、つまったほうが逆に飛ばせるケースもあると、吉村氏は言うのです。ちょっとした意識の見直しやプライドの持ち方を変えれば、バッティングにプラスの効果がもたらされるわけです。こうだ、という強い思い込みを持って臨むことはわるくありません。けれども、ときに、少し見直しを加える余裕を持ってみるのも、また、わるくないといえそうです。

 ライオンズの四番・おかわり君・中村選手だけでなく、ジャイアンツの四番・村田選手も、このところ好調です。最近5試合20打数8安打、打率は4割。ところが2戦目は、4打席ノーヒット。5打席目が回ってきたのは、同点で迎えた9回裏。1アウト1・2塁、サヨナラの場面です。セオリー通りとはいえ、前の打者・坂本選手は敬遠。四番としての意地に燃えないわけがありません。実績が違うとはいえ、ファイターズの中田選手が「下唇を噛み切りそうなぐらいに悔しかった」と語ったという話も紹介されました。
 村田選手に投げたマイケル投手の初球は、真ん中のスライダー。山本氏は言います。
「ここはいってほしかった(=振りに出てほしかった)ですね。スライダーが頭にあればね」
 2球目はインコースに外れたスライダー。3球目もアウトコース低めに外れたスライダー。これを村田選手は強振して空振り。山本氏は言います。
「3球、いまスライダーきたんですけど、スライダーの打ち方じゃないんですよね。スライダー待ってれば、いま見逃してますよね」
 これでカウントは1ボール2ストライク。そして、4球目。またスライダーです。この真ん中低めのスライダーを、村田選手はちょこんと軽く振り、打球はショートの頭を超えて外野へ落ちます。サヨナラヒット。山本氏は言いました。
「だまされましたねぇ」
 吉村氏の言葉から発展させるなら、こう考えられないでしょうか。村田選手は、カウントを追いこまれた直後、四番打者らしい強い打球を飛ばしたいという理想やプライドを少し横へと置いておき、チームに勝利をもたらす四番打者としてとにかくヒットを狙おう、と意識を変えた、と。
(ヒーローインタビューでは「前のボール、おんなじボール空振りしましたし、最後もそのボールがくると僕の中で心に決めて、他のボールがきたらもう仕方ないと思って打席に入ってました」と語っています。)

 サヨナラの打席から少しさかのぼって、7回、1アウト1塁という場面。村田選手がレフトフライでランナーを進められなかった時のこと。テレビカメラは悔しそうな四番の姿を捉えます。首を振ったり、顔をしかめたりしながら、ゆっくりゆっくりとベンチへと戻っていきます。そして、ベンチに腰掛ける前、やおらヘルメットを振り上げ、どこかに叩き付けようと振り下ろします。瞬間的に思いとどまったようで、途中まで振り下ろしたところで、ふと右手を止め、ヘルメットは無傷。代わりに、腰を下ろしてから外したリストバンドを叩き付けました。思いっきり強くではなく、強めに。ヘルメットのように大きくなく硬くもなく、リストバンドは小さく軽く衝撃を吸収するものです。村田選手は思いとどまって、悔しさをベンチの中でおおっぴらに表現することを避けたのでした。この時にも、意識をふと変えた様子が見られたように思います。
 村田選手は、ベイスターズ時代にはずっと、チームカラーでもある青いマウスピースをはめて打席に入っていましたが、ジャイアンツに入ってからは、しばらく白や透明のものをはめていたように思います。チームカラーを意識してのことではないでしょうか。シーズン当初からしばらく、村田選手の打率は低迷。ところが、徐々にヒットが増えてきたころから、彼はマウスピースの色を変えていた様子がテレビでも映し出されていました。青いマウスピースをはめるようにしていたのです。ここにも、ジャイアンツではベイスターズのチームカラーの色は身につけるべきではない、という思い込みを捨てた意識の変化が見られた気がします。

 吉村氏は、1戦目先発の西口投手について、こんなことも語っていました。バッターの打つ気配というものを感じて、それを利用して投げることができている。ベテランならではのピッチングだ、と。2戦目の9回、サヨナラの場面、マウンドに西口投手が立っていたのならば、村田選手の意識の変化、4球目にスライダーを狙う気配を、感じていたかもしれません。彼なら、どんな球を投げたのでしょうか。

 ところで、サヨナラヒットでもみくちゃにされながらベンチへと向かう村田選手に、彼のヘルメットを拾って手渡してあげたのは、坂本選手でした。

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G×L @東京ドーム
6/8 BS日テレ 新谷アナ、解説:吉村禎章
6/9 BS日テレ 清水アナ、解説:山本浩二、水野雄仁
 先発投手のあと、山口投手、マシソン投手、西村投手、という黄金リレーがジャイアンツに確立しつつあります。2戦目も先発の内海投手の後、7回は山口投手、8回にマシソン投手がマウンドに登りました。スコアは3-1。ジャイアンツがリード。
 先頭打者の松田選手は、ショートのエラーでノーアウト1塁。次はペーニャ選手。5球目のフォークボールが、レフトスタンドへ滞空時間の長いホームランとなり、あっという間に同点とされてしまいました。次の打者、多村選手は5球目を空振り三振、江川選手は初球をサードゴロ、長谷川選手は11球目を選んでフォアボール。代打・松中選手が告げられたところで、マシソン投手は降板となりました。
 ここまでの、各選手に投じた球速は次のとおり。数字は球速(キロ)。140、150キロ代はストレート、それ以外は変化球です。

松中選手……151、132、138、129(ショートゴロ、エラー)
ペーニャ選手……151、129、130、149、135(レフトスタンドへホームラン)
多村選手……132、151、153、153、155(空振り三振)
江川選手……134(サードゴロ)
長谷川選手……155、124、153、149、151、153、133、151、149、131、152(フォアボール)

 同点弾を打たれるまで(ペーニャ選手までの2人)に投げた球について、同点弾を打たれた後(それ以降の3人の打者)に投げた球について、比べてみます。

ストレートの割合……打たれるまで=33%、打たれた後=71%
ストレートの球速平均……打たれるまで=150キロ、打たれた後=152キロ

 なぜこのような数字をちまちまと計算してみたのか。その理由は工藤氏が次のように語ったからです。
「本人(=マシソン投手)からすれば、オレがいって、9回西村くんがいって終わりだーっぐらいの気持ちでいたのが、ドーンとやられた(=同点弾を打たれた)ことで、クーッってきてるのは間違いないと思いますよ。だからもう、アドレナリンが出過ぎて、スピードが上がってるんですよ。打たれて、こういう時にアドレナリン出して投げれるピッチャーだっていうところが、やっぱり、ここにいるピッチャーなんですよ。
 いや、でも、そういうピッチャーでなかったら、こんな場面で投げられないですよ。次のバッター、フォアボール出しましたって、打たれてもいいからど真ん中いってみろよっていう思いはありますんもんねぇ。
 もう、こういうピッチャー、僕は大好きですね。真っすぐ真っすぐ真っすぐ、何があっても真っすぐだ、みたいなね。(マシソン投手のストレートにソフトバンクのバッターは)合わせられてないじゃないですか。こんだけ真っすぐ投げてるのに」 
 この数字は、工藤氏の言葉をかりるなら、アドレナリンの放出量を表しているといっていいのではないでしょうか。こういったケースではよく、ピッチャーがムキになっているとか、カーッとしているといった言い方をされるものですが、そういった言葉を工藤氏は使わないところが、また素晴らしい。
 同点弾を浴びた後、マシソン投手がストレートを多投している時に、ベンチでマウンドに視線を送っている原監督の表情がテレビ画面で映し出されました。頼もしくマウンドを凝視して、力の入った視線を送っているように見えたのも、マシソン投手のアドレナリンを、監督も感じていたからではないでしょうか。

 同点弾を打ち込んだペーニャ選手は、打席でもたまの守備についているときも、ベンチでも、よくツバを吐いている選手。1回打席に立つ間にも何度も吐いているのです。まだ吐くのね、と、テレビで観戦していると気になるほど。しゃんでいるキャッチャーは不快に思っているに違いありません。
 けれども、彼の吐くツバの軌跡は、ヘンな話ではありますが、美しいんです。ボテッと一カ所に力なく落とされるのではなく、勢い良く四方八方に細かく分散させて吐いている様子が、テレビ画面ではくっきりと見えます。映画「グリーンマイル」の中で、口から小さな生き物みたいなモノがシュバーッと出ていくシーンがありますが、あのシュバーッを彷彿させるところがあります。シュバーッは、マイナスのエネルギーみたいなモノを表していたと記憶しています。ペーニャ選手の場合のシュバーッは、吐く頻度、放散の角度と量も、アドレナリン量を表している気がしてなりません。

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G×H @福岡ドーム
6/5 BSJAPAN 植草アナ、解説:野村克也、柴原洋
6/6 BS朝日 清水アナ、解説:工藤公康


 工藤氏の解説、久しぶりです。ピッチャーや配球にまつわる話が怒濤のごとく続いていくという偏りはありますが、そこが工藤氏らしくて、とても好きです。しかも早口。聞き逃してはならぬといういつも以上の緊張感をテレビ観戦者に与えてくれます。
 2戦目、6回表、スコアは2-1。前の回に阿部選手にツーランホームランを打たれた先発の新垣投手について、工藤氏は語ります。
「この回に入ってですね、ちょっと、初回、2回ぐらいとは違う動きが見えたんですけど。足を上げた時にですね、グローブが膝に当たるんですよ。初回はですね、当たってなかったんですよ。初回、2回とか3回ぐらいまでは。自分の中で少しずつ、こう、感じがわるくなるのを、リズムをとろうとしているんですね。
 ピッチャーってやっぱり、リズムってすごく大事になってくるんですね。ああいう、ひとつ、ポーンと当たったことによって、自分がポンと動き出すっていうリズムっていうのができると、安定した状態でストライクゾーン、この中に入っていけるんですね。自分の中で、こんな感じで投げてればいいかなと思って、なんとなく雰囲気的にはつくれてるなっていうのはありますね。
 たしかにいろんなことを考えるとよくないという場合はあるんでしょうけど、リズムっていうのはまた別で、打たれちゃいけないとか、このバッターにこうしなきゃいけない、ではないんですね。自分自身の戦いの中でのリズムをつくろうとしていることは、すごくいいことだと思います。
 こういう中から自分のリズムをつくり、この試合だけでもなく、次の試合も、その次の試合もできるようになっていくと、新垣というピッチャーが安定したボールを投げれるようになるきっかけかもしれないですね、はい」
 新垣投手は、今年4月1日に1273日ぶりの無四球完投勝利を挙げました。故障に悩まされ続けていたピッチャーの復活を応援したいという工藤氏の温かな眼差しと、鋭い眼差しが感じられます。
 その「ポーン」と膝に当てる試みがうまくいったようで、新垣投手は6回を投げて阿部選手のツーラン2点に抑えます。ところが9回、6日ぶりにマウンドに登った森福投手が打たれてしまい、ホークスは14年ぶりの8連敗。
 久しぶりのマウンドだから身体が軽く感じられて、思うように球がコントロールできずにいるのでは、と工藤氏は解説しました。新垣投手は先発ですから長いイニングを投げる中で、「ポーン」のような自己調整が許されるわけですが、抑えのピッチャーは短いイニング限定ですから、そうはいきません。長いイニングをそのまま投げることができていたならば、森福投手も「ポーン」のような調整を試みることができていたでしょうに。抑えというポジションの厳しさをつくづく感じます。

 余談。昔、新垣投手が日本シリーズのマウンドで、途中からガムを噛んで投球し始め、リズムを作ろうとしているかのようにみえたことがありました(過去の記事あり)。

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G×H @福岡ドーム
6/5 BSJAPAN 植草アナ、解説:野村克也、柴原洋
6/6 BS朝日 清水アナ、解説:工藤公康