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テレビで楽しむプロ野球

テレビで野球観戦し続けることウン10年のプロ野球ファン。CS放送以外のジャイアンツ戦は全て録画してでも観戦しています。日々の観戦ノートを元に、1カードにつき1記事ぐらい、書いています。

 杉内投手は3種類ぐらいのスライダーを投げている、と2戦目に解説をしていた堀内氏は語りました(前日の記事参照)。「曲がりの大きいスライダー」「曲がりの小さなスライダー」「タイミングを抜いたスライダー」と3種類のスライダーがあるとのこと。この日、杉内投手が左打者に対したときの球種割合の円グラフが画面に表示されました。ストレートは51%、スライダーは49%という数字。ですが、堀内氏の話からすると円グラフの示す通り、杉内投手は左打者には2種類の球しか投げていないんだ、と捉えるのは間違っていることになります。球種表示を鵜呑みにして観戦してはならないことが分かります。

 杉内投手と投げ合ったのは渡辺俊介投手です。彼のストレートはだいたい120キロから130キロ前半ぐらい。テレビ中継では球速表示もされていますから、彼の球速が遅いということを、テレビ観戦者は数字からも知る事ができます。けれども、堀内氏は言いました。
「画面に数字が出てくるじゃないですか、スピードのね。あれは信じない方がいいですよ。もう、全然、全然。(今の投球の表示は)90キロ台ですよ。でも、バッターが見てるのは70キロぐらいの感じに見えてると思いますよ。
 今のボールの表示はだいたい110何キロ(実際の表示は119キロ)なんですね。でも、打ってる方は、140キロぐらいのスピードに見えてるはずですよ。でなかったら、もっと当たるはずですよ。もっと芯にどんどん当たってくと思いますね」
 この発言から、球速表示を鵜呑みにして観戦してはならないことが分かります。

 2回、ツーアウトランナーなし。杉内投手は初球、アウトコース真ん中のスライダーを投げ、今江選手からソロアーチをくらってしまいました。5月23日のライオンズ戦から続いていた25イニング連続無失点記録にピリオド。ここで、堀内氏。
「なんの気なしにふっと投げたんじゃないですかねぇ。あんまり意図を感じないボール。ストライクを取りにいったボールでしょうね。杉内にしては珍しいですよね。なにかこう、真空地帯みたいなところに入ったボール。はっと抜けた時にふっと投げちゃったんですね。そんなに飛ぶような感じじゃなかったんですけどね。(2アウトをとって)気分的にもちょっとホッとしたんでしょうね。そういうところで投げた時のストライクを取りにいったボールってのは、よく飛ぶんですよ」
 テレビ画面の中で、アウトコース真ん中のスライダーという、同じコース・同じ高さ・同じ球種の球に見えたとしても、「意図せずふっと投げたボール」と「意図してしっかり投げたボール」はバットに当たったときの飛び方が違う、という話です。中継でよく表示される配球チャートの表示を鵜呑みにして観戦してはならないことが分かります。

 野球はデータのスポーツですが、データの向こう側や、データの裏や、データの陰が存在することを心得て観戦すると、またまたずっと、どこまでもたまらなく、楽しくなってしまいます。鵜呑みでなく、鵜飼いを。

G×M @東京ドーム
6/10 BS日テレ 上重アナ→町田アナ、解説:江川卓、篠塚和典
6/11 BS日テレ 平川アナ、解説:堀内恒夫






 1戦目で先発した成瀬投手の交流戦での被打率データが紹介されました。
右打者 61打数 14安打 0.230
左打者 23打数  0安打 0.000

 成瀬投手の打ちづらさの要因として、江川氏と篠塚氏は、彼のピッチングフォームを挙げられました(前日の記事参照)。では、打ちづらいだけでなく、左打者にいたっては全くヒットを打てていない要因は何か。両氏が語りました。
江川「左のバッターからすると、インコースに3つ(=ストレート、スライダー、チェンジアップ)、ボール、くるわけですね。通常、だいたいね、左ピッチャーが左バッターの中(=インコース)にって、1種類なんですね。3つ放れるっていうのは、たぶんそういう原因を生んでると思いますね」
篠塚「だいたいの左ピッチャーっていうのは、左のインサイドに放るには、まっすぐか、まっすぐ系のシュートがかったボールとか、あとは背中の方からカーブっていう感じがあるんですけど、同じところに違う球種を3つ放られると、やっぱりイヤですよね。今のバッターっていうのは、真ん中からやや外めという目付けが多いと思うんですよね。そうすると、なかなかインサイドのボールをヒットするというのは難しいですね」
 左ピッチャーの投げるインサイドを打つのが好きだったり、上手な左打者というのはほとんど耳にしません(現役ではジャイアンツの阿部選手ぐらいなのでは)。そんな一般的に苦手とされるインサイドの、しかも同じ高さに、しつこく3種類もの球を投げられたら、それはそれはたまったもんではなさそう。左ピッチャーを苦にしていなかった左打者の篠塚氏が「イヤですよね」と言うのですから、イヤらしさの度合いが分かるというものです。

 2戦目で先発した杉内投手も、成瀬投手と同じく交流戦では左打者から打たれていませんでした。
右打者 69打数 10安打 0.145
左打者 30打数  0安打 0.000

 さらに、こんなデータも紹介されました。杉内投手の投げる球種の割合です。
右打者 ストレート46% スライダー33% チェンジアップ21%
左打者 ストレート51% スライダー49% チェンジアップ 0%

 ということは、杉内投手は左打者に対して、成瀬投手のように「インコースに3つ投げる」わけではありません。左打者に対してチェンジアップを投げませんから、球種は2つしかありません。堀内氏はこのデータを見て言いました。
「左バッターに投げられるボールは2種類なんですね。それで抑えているんですから大したもんですね」
 このデータから、杉内投手の方が成瀬投手よりイヤらしくないことが判明。と思いきや、「ただね」と堀内氏は続けたのでした。
「ただね、スライダーは何種類かあるんですよ。曲がりの大きいやつ、小さいやつ、ちょっとタイミングを抜くやつって、3種類ぐらいあるんですよね。ですから一概にスライダーといっても同じ球道ではこないんですね」

「同じ球道ではこない」ということですから、やはり成瀬投手の方がイヤらしいのでしょうか。堀内氏の言う「ちょっとタイミングを抜くやつ」の球道には怪しげな気配を感じます。これがチェンジアップっぽいのであれば、杉内投手のイヤらしさは成瀬投手並みといえるのかもしれません。これは観察する必要がありそうです。ところが残念ながら、この日、杉内投手は今季ワーストの4失点、3回で降板。観察は次回登板試合のお楽しみとなりました。

G×M @東京ドーム
6/10 BS日テレ 上重アナ→町田アナ、解説:江川卓、篠塚和典
6/11 BS日テレ 平川アナ、解説:堀内恒夫






 成瀬投手の昨年の成績は10勝12敗、防御率3.27。二桁勝利とはいえ負け越しに一発病。けれども今シーズンはここまで6勝2敗。しかも、交流戦では左打者からまだ一本もヒットを打たれていないとのこと。そんな成瀬投手のピッチングについて、アナウンサーが解説の二人に尋ねました。
 “ピッチャー目線”で見るとどう感じるのか。江川氏の答え。
「バックスイングという、投げる時間の手の弧というんですかね、それが非常に小さいですね。ですから、バッターとしては、バックスイングの仕方がすごく難しいかもしれませんね。バッターっていうのは、投げてからバットを合わせてくるのではなくて、ピッチャーがフォームを、ぐるうっと投げる前からバットを引きますからね。それが急に(手が)上がるんで合わせづらいんじゃないですかね」
 次に、“バッター目線”で見るとどう感じるのか。篠塚氏の答え。
「バッターっていうのは、全体的にピッチャーを見るんですけど、手の右左、成瀬の場合、左ですよね。手の動きっていうのに、意外とタイミングをとっていくんですよ。成瀬の場合はホントに身体の後ろに手が落ちていかないですよね。自分の構えてる状態の前でリリースして。しかも小さいですよね。分かってるんだけども多分タイミングが合いづらい。練習の中でもこういうピッチャーを打たないですからね」
 長年、プロ野球中継を観戦しているファンであれば、江川氏と篠塚氏のこれらの答えに「なるほど」と膝をポンと高らかに打つ人はそれほど多くはないと思います。ある程度の答えの予測はついていて、「やっぱりそうなんだなぁ」と両氏の話に対して再確認し、軽く頷く反応を示す人の割合の方が高いのではないでしょうか。だからといって、これらの質問と答えは不要だったというわけではありません。もちろん、観戦歴の浅いファンにとっては貴重な話です。長年のファンにとっても、再確認ができることは自身の観戦力向上の証にもなりますから。
 それだけではありません。総論としては再確認レベルで予測のつく話であっても、部分的には新鮮な話が盛り込まれていることが間々あるものです。たとえば江川氏の「手の弧が小さい」という表現は、「バックスイング」とか「テイクバック」という言葉よりも格段に「なるほど」とイメージしやすいものになっているのではないでしょうか。篠塚氏の「練習の中でもこういうピッチャーを打たないですから」という一言からは、練習したくても練習できないことが実際にあるという、「なるほど」と気づかされる事実を知らしめてくれたと思うのです。

 さて、“ピッチャー目線”、“バッター目線”だけでこの話は終わりませんでした。お二人の話の後にアナウンサーが加えました。
「スポーツ紙のカメラマンの方にお話を伺ったのですが、カメラマンの方がピッチャーで狙う瞬間というのは、ボールを話す瞬間、リリースポイントの瞬間をカメラにおさめるんですが、この成瀬投手は、非常にその瞬間が撮りづらいピッチャーの1人だという話をしていました。もう1人、ソフトバンクに去年までいました和田毅投手を挙げていました」
 カメラマン目線をレポートするとは、上重アナウンサーに一本、といきたいところ。「なるほど」と膝をポンポン叩いて喜んだのは、私だけでしょうか。さすが、甲子園で松坂大輔投手と延長17回を投げ合った人物。“元球児目線”が活かされたレポートだったと思います。

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6/10 BS日テレ 上重アナ→町田アナ、解説:江川卓、篠塚和典
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