無邪気な凶器① | 渡邊津弓のイトオシイ毎日☆

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山神トオコ 44歳 ~その②~



自己紹介のために、監督から出されたお題は



「直立不動で立ち、視点を定め、微動だにせず、自己紹介を行ってください」。


いかにも役者のワークショップ。



地方の映画祭でグランプリを受賞し、小さなプロダクションがスポンサーにつき、


期待の新鋭として、ワークショップを兼ねた次回作のオーディションを開催して貰っている



若い監督は、希望と自信に充ち溢れて、少し甲高い声で、場を仕切りだした。


自己紹介するまでもなく、この場の誰よりも年上であると察知したトオコは



余裕を見せなくてはと、満面の笑顔でリラックスを演じながら、堂々と年齢・経歴をしゃべった。


まわりから、笑いも取れたし、まずまずじゃないかと、他の自己紹介を笑顔のままで聞き終えて



監督からのフィードバックタイム。


「え~、さっきのお題のねらいは、微動だにせず、ってことでした。一人一人見させて頂きました。」



「一番良かったのは、××さんですね。さっすがだと思いました。」 顔見知りの役者のようだ。


「一人一人コメントさせていただきますと、・・・・・。」と続けて 


「山神さんは、やっぱり目と手が揺れてました。次、△△さんは・・・・」


さらっとしたものだった。


監督が自分に興味を持っていないことが、もう、ここでわかった。


それでも、2日分のワークショップ代金10000円を払っているのだから


その分は、ちゃんと何かを拾って帰ろう、と


気を取り直してみたりしたのだが・・・・・。



2日目


トオコは、一生心に刻み込まれる瞬間を経験するのだった。