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羽鳥善一、山下達夫、タナケン…『ブギウギ』でスズ子を取り巻く”一流おじさん”たちの存在感(エンタメNEXT) - Yahoo!ニュース

 

 

 

 

 

現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』(総合・月曜~土曜8時ほか)。ブギの女王・福来スズ子(趣里)の人生が描かれる中、度々話題になるのがスズ子を取り巻く”おじさん”たちの存在だ。しかし、彼らはただのおじさんではなく”一流”のおじさんなのである。

 

草彅剛演じる作曲家・羽鳥善一は、『ブギウギ』を支える代表的な”一流おじさん”だろう。善一が本格的に登場し始めた第6週「バドジズってなんや?」でのインパクトは今でも忘れられない。最初こそスズ子にピンと来ていない様子を見せていた善一だが、スズ子の歌声を聴くと途端に目つきを変えた。そして、まだ何も掴めていないスズ子に「ラッパと娘」の出だしを500回以上も歌わせたのだ。 

 

しかも、その指導方法はかなり独特で「バドジズできたらいいんだよ」「まだバドジズできていないね」と言うばかり。スズ子は「歌も羽鳥先生も嫌いになりそう」と頭を悩ませる。だがその結果、スズ子は”怒り”という感情を歌に宿すことができ、USK時代とは一味違ったジャズの歌い方を身に着けることになった。

 

以降、善一はスズ子の歌声に惚れ込み、スズ子も善一に信頼を寄せるように。スズ子の日宝からの引き抜き話には「今、福来くんがいなくなったら僕はどうすればいいの!?」と大慌てし、弟・六郎(黒崎煌代)の死に落ち込むスズ子を自宅に招き入れ励まし、スズ子が結婚のために音楽を辞めようかと打ち明けたときはまたもや「君が歌手を辞めるなんて僕が音楽を辞めるようなもんだよ!」と慌てて大反対。善一にとってスズ子は、自分の理想の音楽を作るために欠かせないパートナーなのだ。 

 

また、善一は”ブギの女王”の生みの親でありながら、どこまでもスズ子と対等でいようとしている。彼は彼なりの音楽の流儀を持っているが、それをスズ子に押し付けたり、強要することは一切ない。善一が、スズ子が悩んだり、怒ったり、泣いたり、感情を揺さぶっているタイミングでポンッと楽譜を手渡すのは、スズ子自身から放たれるエネルギーや情熱、感情にインスピレーションを得ているからなのだろう。

 

そして、善一とは違う角度でスズ子から放出される素の魅力に気づいていたのが、3代目マネージャーの山下達夫(近藤芳正)である。まずその役名にクスリと笑ってしまった人も多いだろう。愛助(水上恒司)を「ぼん!」と呼ぶ柔和な表情や物言いから、幼い愛助を溺愛して甘やかし、共にトミ(小雪)に怒られていた姿が目に浮かぶ。

 

 ”可愛いおじさん”キャラかと思われた山下だが、実は超敏腕マネージャーだったのだから驚きだ。村山興行時代の知り合いが全国にいるという山下は、あれよあれよと「福来スズ子とその楽団」に地方慰問の仕事を持ってきた。山下のおかげで、スズ子は戦争中も歌手としてステージに立ち続けることができたのだ。 

 

山下は村山興行で沢山の芸人を見てきたからこそ、観察力やサポート力に長けているのだろう。どんなときでも「福来さんなら」「さすが福来さん」とスズ子を盛り立て、周囲への細やかな気配りも忘れない。今やスズ子の精神面をも支える山下は、スズ子の歌手人生になくてはならない存在だ。

 

喜劇王・タナケンが見抜いたスズ子の潜在的な魅力

 
そんな山下の目利きによって、スズ子は喜劇王・棚橋健二(生瀬勝久)と出会うことになる。世間から”タナケン”として知られる棚橋は、『ブギウギ』きっての”クセ強おじさん”。喜劇王と呼ばれていながら裏では一切笑顔を見せず、スズ子との共演にも気が進まない様子を見せていた。
 
スズ子がどんな芝居をしようとも、タナケンは叱りも褒めもしない。しかしそれは後に、スズ子の潜在的な魅力を引き出すためだったと分かる。台本を無視して関西弁で台詞を言ったスズ子に、タナケンは「面白いね」と目を光らせ、それを採用したのだ。
これは善一の”バドジズ指導”と同じようなもので、タナケンもスズ子自身が持つコミカルさを見抜き、感情が剥き出しになるのを待っていたのかもしれない。スズ子をタナケンの舞台に推薦したのが善一ということも、なんとなく腑に落ちる展開であった。 
 
タナケンは「何をやっても、僕が全部受けてあげるよ」とスズ子に声をかけ、結果舞台は大成功。「こうしろ」「ああしろ」と指示をせず、ただそこでどんと構えて受け止めるタナケンの姿はまさに”王”であった。そしてスズ子もすっかりタナケンのファンになり、史実ではその後、笠置シヅ子とエノケンこと榎本健一は何度も共演を果たしている。
 
スズ子の元に集まった3人の”一流おじさん”たちは、何もドラマの展開上の都合だけで登場してきたわけではない。彼らだけではなく、他の人物たちとの出会いも、すべてはスズ子が選択して進んだ道の先で自然に作られた縁なのだ。 
 
「歌が好き」という気持ちだけで飛び込んだUSK。何度も先輩から怒られながらとにかく舞台に挑み続け、自分の意思で東京へ。小夜(富田望生)という付き人に出会い、楽団を作り、慰問先で愛助という最良のパートナーに出会い…。いつもスズ子は自分の気持ちに正直に、そして”義理と人情”を持って周囲の人たちと向き合ってきた。 
 
それぞれが自分の信念や理想、美学を持つ芸能の世界で、スズ子が”一流おじさん”とバディを組めたのは、その真っ直ぐさと「歌が好き」という強い気持ち、そして天性の面白さを持ち合わせていたからだろう。幼少期の鈴子を見てきた視聴者ならば、きっと3人のおじさんとの出会いは必然だったと納得できるはずだ。
 

スズ子が今歩んでいる道の先には、一体どんな出会いが待っているのだろうか。新たな”おじさん”キャラの登場にも期待しながら、福来スズ子の人生を覗き見し続けたいと思う。

音月 りお