2学期が始まった。それぞれの毎日が精一杯で、結局夏休みも亮太や拓也やその姉弟たちと私が一堂に会す機会なく終わってしまったのだが「もう子どもじゃないんだしね」という感じで、私はそれほど残念とも思っていなかった。
 
 東岡高校体育祭で恒例になっている運動部の仮装行列についての説明会で私は亮太と同席した。
「なんだか久しぶりだよな。」
「うん。亮太、仮装の係?」
「1年だから。野球部は何やるの?」
「企業秘密。ラグビー部は女装でしょ?」
「まだ決まってねーし。」
当たり障りの無い会話の応酬の後、亮太が急に小声になった。
「泉さ、ズバリ聞いちゃうけど旭台のやつのこと好きなの?」
「え、何それ。」
いったいどこをどう経由して亮太の口からからこんな言葉が出てくるのだろう。
「ウチの運動部ってさ、意外と横の繋がりあるんだよ。でさ、野球部の1年が泉の態度ミエミエだって言ってた。」
「うそ、隠してるつもりだったのに!どうしよう?」
「バレバレだって。相手はキャプテンだったってやつ?」
ズキズキとえぐられるように胸が痛んで泣きそうになる。
「その話ってそこ止り?」
「え、なんか続きあったりする?」
なんてデリカシーがないんだ、亮太は。八つ当たり気味の気分になる私だ。
「夏の話。もう過去過去。それ以上掘り下げたら殺す、いやこの場で大泣きしてやる!」
「・・・・」
私の剣幕に亮太はタジタジでこの話はここで終了したのだが、私の初恋が悲しい結末だったということは鈍感な亮太にも伝わったらしかった。
「ごめん。知らなかったからさ。」
「いいよ、拓也に話してもいいから。引きずっててもしかたないし。」
「あ、拓也ね。体育祭はオープニングでファンファーレやるんだよな。」
「拓のことイイ感じで見てる女子がいるんだよ。」
「へぇ、羨ましい。」
「亮太はどうなのよ?」
「今んところ余裕無し。」
「ホントですかいね。」

 中学時代はおろか小学校時代にも「オレ、好きな子見つけた~」としょっちゅう騒いで私や拓也を苦笑させていたやんちゃな亮太も少しずつ青年期にさしかかっていたのだろう。