家では2階にある小さなキッチンの付いた自室にいることの多かったこの祖母は、子どもの目からもかなり個性派のハイカラばあさんに見えた。白髪まじりの長い三つ編みを結い上げていた彼女は独りでよく旅行へも行っていたし、時にどこからチケットを手に入れているのかアイドルと呼ばれるような男性歌手のコンサートへ出かけることさえあった。
「さくらこはさくらこ、カンナはカンナ。それぞれ違ってそれぞれ素敵。」という決まり文句を言ってほしくて私と妹は競うように祖母に話を聞いてもらったものだ。
年齢とともに、役所でそれなりの肩書きが付くようになっていた父は盆栽に凝り始め、母は歯科医院での受付業務の傍らフォークダンスのサークルに通うようになった。
6年生になった私は、「将来の夢は?」と尋ねられると「幼稚園の先生」と答えることに決めていた。そんなことは全然思っていなかったのだけれど、そのように答えておけば大人たちが満足そうに頷くことに気づいていたからだ。
クラス担任は5年生の時と同じ男の先生。ちほみちゃんという美人の学級委員長がお気に入りで、えこひいき的な態度があからさまだったけれど、私に対して特に不利益をもたらすこともなかったので、それはどうでもよかった。学校からテーマを指定される作文の類についての興味も持てなくなっていて、図書室の常連は続けていたが、独自の散文ノートのようなものに文章を書き綴ることに密かな楽しみを見出すようになっていった。
「さくらこはさくらこ、カンナはカンナ。それぞれ違ってそれぞれ素敵。」という決まり文句を言ってほしくて私と妹は競うように祖母に話を聞いてもらったものだ。
年齢とともに、役所でそれなりの肩書きが付くようになっていた父は盆栽に凝り始め、母は歯科医院での受付業務の傍らフォークダンスのサークルに通うようになった。
6年生になった私は、「将来の夢は?」と尋ねられると「幼稚園の先生」と答えることに決めていた。そんなことは全然思っていなかったのだけれど、そのように答えておけば大人たちが満足そうに頷くことに気づいていたからだ。
クラス担任は5年生の時と同じ男の先生。ちほみちゃんという美人の学級委員長がお気に入りで、えこひいき的な態度があからさまだったけれど、私に対して特に不利益をもたらすこともなかったので、それはどうでもよかった。学校からテーマを指定される作文の類についての興味も持てなくなっていて、図書室の常連は続けていたが、独自の散文ノートのようなものに文章を書き綴ることに密かな楽しみを見出すようになっていった。