14日はバレンタインディですね。
それで、日本の「愛」の名詩をご紹介しましょう。
愛について
殿岡 辰雄 (1904-1977)
ひとを
愛したといふ記憶はいいものだ
いつもみどりのこずゑのやうに
たかく やさしく
どこかでゆれてゐる
ひとに
愛せられたというおもひはいいものだ
いつも匂ひやかそよかぜの眼のやうに
ひとしれず
こちらむいてまたたいてゐる
「愛」をいしずゑとして
ひとよ
生きてゐるといろんなことがあるものだ
若い人も、年老いた者も、この詩を読むと、ほのぼのとしたもの、或るなつかしさを感じるのではないでしょうか?・・・(その感じ方は、年代によって、また微妙に違うのでしょう。)
「われを思う 人を思わぬ報いかや わが思う人の われを思わず」 の古歌がありますが、「愛」はなかなか自分の思い通りにはなってくれません。
しかし、愛したという思いも、愛されたという記憶も、やがてすべて「時」が包みこみます。
そして、高い樹々の梢のみどりのように、匂いやかな春のそよ風のように、いつからか心を癒し、慰め、支えてくれるものの一つとなるのです。
実は 今回、この詩が ブログやHPのなかに ずいぶん引用 されていることを知ったのですが、そのいずれも( 一箇所 か二箇所) 違っているのでした。(インターネットの大いなる弊害は、チェック機能がなく 間違ったまま、どんどん一人歩きしてしまうことでしょう。)
その箇所とは、 ○ ×
7行目の 愛せられたという → 愛されたという
10行目の こちらむいて → こちらをむいて です。
詩というのは、たった一字でも抜けたり 変わっただけで、そのニュアンスがまるで違ってきます。推敲に推敲をかさねた作者に、これは何とも失礼な気がして、今回取り上げたわけです。そのため、あえて歴史的仮名遣い のままとしました。ちょっと読みにくいかとは思いますが、水増ししていない 生(き)の ウイスキーの芳香 です。
![一言一会 (ichigonichie)](https://stat.ameba.jp/user_images/20130208/09/tutiya62/f2/cc/j/o0800075512410207394.jpg?caw=800)