ボロブドゥル寺院遺跡は現在、遺跡保護のため内部への観光客の立ち入りが制限されており、事前に予約とクレカによる料金支払いをし、ガイド付きのグループツアーに参加することで入場ができる。

 

そもそも今回の俺の旅程では、夜勤明けの仕事が終わった後に飛行機に乗り、夜通しかけてボロブドゥルの街に着く。そのまま直行でボロブドゥル寺院遺跡を観ても、眠気が強くて頭が働かないのでは勿体無い。なので、俺は事前に日本にて、着いた翌日の8:30に遺跡入場観光の予約を入れたのであった。

 

この日の行き先は「グレジャ・アヤム」、英訳するとチキン・チャーチ。「ブキッ・レマ」なる丘の地域にある。少し遠いが自転車も借りられたので行けるだろう…と踏んでいたのだが、丘の地域の道はアップダウンが激しく、予想以上に苦戦した。自転車は上り坂では押して歩き、下り坂ではサドルに跨って重力だけで傾斜をシャーッと下り、ペダルを漕ぐのは傾斜の無い平地だけにして、体力をセーブしつつ移動する。

 

駐車・駐輪場に到着。ここからは凄まじい斜度の上り坂がある。そこにいたスタッフが「グレジャ・アヤムの入口までのジープ送迎がRp15,000。入場料がRp25,000。ジープ送迎を利用するなら計Rp40,000(492円)。どうする?」と聞いて来た。そこまでの自転車移動がしんどかったため、迷わずジープ送迎を選択。

 

激坂を上がったジープが停車スペースに到着。そこからチキンチャーチまで徒歩で上ったところ…

 

 

…!!

 

 

お、おぅ…。

 

なんとも脱力的な佇まい。眠そうな目。半開きの嘴…。確かにニワトリだ。

 

そして、一見して解る。ここは珍スポ・Bスポと言われる類の場所だ。インドネシアの珍スポット。B級スポットである。

 

この建物は「チャーチ」と呼ばれているが、キリスト教の教会ではない。建立者はキリスト教徒らしいが、「宗教を越えた全人類のための祈りの場」として1990年に建てられた礼拝堂とのこと。よって「チャーチ」ではなく「チキン・ドーム」とか「チキン・タワー」と呼ばれることもあるようだ。

 

過去には薬物依存の治療施設だったり、ガチ廃墟となった時期もあったが、現在は再び礼拝堂として一般公開されている。その後、インドネシアで大ヒットした映画のロケ地に使われたこともあって、聖地巡礼的な観光地として人気が出た。ただ、ゆえに来場者はインドネシア人ばかりで、外国人が来ることは非常に少ないらしい。

 

なお、この建物の鳥は元々はハトであったが、ハトの頭に王冠を被せるデザインにしたところ、それがニワトリの鶏冠に見えて「アヤム=ニワトリ」と呼ばれるようになり、その後、実際にニワトリの姿に寄せて行ったようだ。確かにこの外観、インスタ映えというか、インパクトは絶大だ。…良い意味でとは限らないが。

 

中に入る。親切なスタッフの若者が「先に展望台に上りたい?」と聞いてきたので「はい」と答えたら、展望台の直下まで連れて行ってくれた。内部は迷路のようになっているので、案内をしてくれたのは有り難かった。

 

 

 

階段を上がって行くと、薬物依存の治療施設だった頃の名残で、薬物断絶啓蒙のための、何とも珍妙な壁画が複数あった。

 

 

さらに、なぜか世界の観光地の写真が張り出されていた。

 

 

 

その中には、チキンチャーチ自身の絵画や写真もあった。

 

 

この狭い螺旋階段を上ると、展望台に出る。

 

 

王冠(鶏冠)の上の展望台に到着。柵が低くて、細くて、恐い。

 

 

展望台からは翌日に観る予定のボロブドゥル仏教寺院遺跡の全景が望めた。望遠で撮影。

 

 

展望台から下りて、中に戻る。これはニワトリの眠そうな目の部分を裏側から見たもの。

 

 

ニワトリの嘴の内側からも外の景色が見えた。さらに階段を下りて行く。

 

 

建物の中の礼拝堂。確かに宗教色は薄い。

 

なお、インドネシアでは1960年代に無宗教の共産党員による大規模なテロがあったことをきっかけに、全国民が何らかの宗教に属することが法律で定められている。現在のジャワ島は人口の9割がイスラム教徒、ボロブドゥルは仏教遺跡、プランバナンはヒンドゥー教遺跡、チキンチャーチの建立者はキリスト教徒。インドネシアではいくつもの宗教が比較的穏やかに共存している。

 

 

 

迷路のような通路に沿って、多数の祈り部屋がある。

 

そして、この建物のニワトリの尾の部分はカフェになっており、入場券の半券には「軽食券」が付いている。この軽食を貰うため、カフェに行ってみた。

 

 

カフェのスナックコーナー。ここで軽食券を渡すと、スナックが貰える。

 

 

貰ったスナック。キャッサバ(芋の一種でタピオカの原料として知られる)のフライ。普通に美味い。そして、考えてみるとこれがインドネシアに来て初めて食べた食べ物であった。

 

 

カフェは半露天的な解放感があり、見上げるとニワトリの後ろ頭が見えた。よく見ると、鶏冠の展望台の上に人が立っているのが見える。

 

 

 

建物の外に出て、改めてチキンの外観を多角方面から撮影。屋外にいたスタッフが声をかけてくれて、チキンと俺が一緒に写るように撮影してくれたりもした(強い逆光で暗い画像のため掲載せず)。

 

実際にチキンチャーチを観た感想は、なんとも胡散臭いというか、安っぽいというか、「俺はわざわざインドネシアまで来て、何を観ているんだろう?」と。ただ、とはいえ俺は、それをわかってここに来た。遺跡マニアで、茅葺古民家マニアで、廃墟マニアで、珍スポ・Bスポマニアでもある俺は、こういうの「も」大好物。観光資源としては、世界遺産であるボロブドゥルやプランバナンに大きく退けを取るかもしれないが、何に価値を見出すかは人それぞれだ。

 

 

グレジャ・アヤムのジープ送迎券と入場券の半券。

 

チキンチャーチを辞去する。帰りもジープに乗れるが、ジープが来るタイミングが合わなかったのと、下り坂なので、徒歩で駐車・駐輪場まで戻った。

 

続いて、さらに自転車を漕ぎ、ブキッ・レマの奥にある「ストゥンブの丘」を目指した。

 

続く。