マグマ大使






昭和41年。
この時期は「ウルトラQ」から始まった怪獣ブームの年であるが「ウルトラマン」に先駆けカラー特撮テレビシリーズの先駆作品となったこの作品を忘れるわけにはいかないだろう。
そう、手塚治虫原作、ピープロ製作の本作品である。
本作品は手塚漫画のオリジナルとは別に怪獣スペクタクル作品として製作されておりしかも2-4連続で完結するというスタイルを採用してドラマ的にも充実した内容となっている。
更には特撮美術には円谷監督の作品群で美術を担当した入江義夫氏が本作品の特撮美術を担当しており「ウルトラマン」を凌駕するミニチュアセットを作り上げ大映の「釈迦」(1960年)でリアルアニメを担当した渡辺善夫が本作品においてもその本領を発揮し現在のCGIを先取りしたかのようなアニメを作り上げ本作品の特撮シーンに貢献した。
さてここで本作品が如何にして作られたのか探ってみたい。
まずピープロは昭和35年7月にアニメ製作会社として漫画家うしおそうじこと鷺巣富雄氏により設立されアニメーションに興味を持ち製作会社を設立したのは当然のことであり大映の「釈迦」をえて「0戦はやと」などを製作し昭和40年に「クラブ君の冒険」という実写とアニメを合成した作品を完成させ東急エージェンシーの上島一男氏の強い引きで同社にセールスを任せることとなったが結果的には失敗した。
だがこれが機会となって新番組の企画を東急は依頼した。
それは東急サイドでは手塚治虫氏の作品をアニメにしたいということであるが基本的に手塚氏は自社アニメ製作会社である虫プロでの自作の方針があった。
しかし鷺巣氏は手塚氏をくどき落とし「マグマ大使」か「ビックX」ならOKという返事を貰いここで昭和40年に本作品の製作権を手に入れるに至った。
さてピープロは昭和37年に「STOPシリーズ」を企画しまた円谷英二監督とも「TSプロ」という会社を作る予定もあったほどで特撮作品にも意欲を示していた。
ここで当初アニメ企画だった本作品を特撮作品として制作したらどうか?という流れが生まれ上島氏もこの話に乗ってきた。
だがここで問題もあった。
スポンサーのロッテがこの話に乗るかという問題である。
ロッテサイトとしては自社のイメージキャラクターを作り出せる作品を求めていたのであるがこの時期、特撮作品はまだ未知数であり不安も絶えなかったが41年になり「ウルトラQ」が放送され大ヒットとなったことから製作が決定し特撮ものとして作られることになった。
内容は怪獣ものとなり早速パイロット版が製作されることになったがここでマグマは俳優の顔が出るタイプでありそれが酔った感じとなってしまった為にNGになってしまった。
そこで仮面を製作しようやくマグマのイメージは完成した。
ちなみにこのパイロット版でのキャスティングは鷺巣氏自らが行ったそうだ。
造形は東急サイドの関係で京都の大橋史典氏に依頼され2ヶ月間鷺巣氏の自宅に住み込みし時間をかけてマグマ、ゴア、アロンの着ぐるみを製作した。
大橋氏は黒澤時代劇にも出演した俳優でありまた松竹で小津安二郎監督の助監督を戦前に経験しまた戦後にアメリカのディズニーランドでの造形を担当、初代ゴジラの造形(一号ゴジラ)も担当するほどの実力を誇る造形家でもある。
それだけに完成した本作品の造形は当時としてはハイレベルのリアルな仕上がりとなりアロンの皮膚や喉のギミックのリアルさやゴアの恐ろしいまでのリアルな質感は現在見ても圧巻の出来栄えである。
しかし、日本電波映画作品の「アゴン」などの契約が残っており降板とならざるを得なくなってしまった。
そこで大橋氏は東宝時代の付き合いである開米栄三氏にモグネス以降の怪獣造形を依頼し更にはミニチュアワークにも東宝の入江義夫氏が担当することとなったのである。
本作品のミニチュアワークは栄スタジオで作られ撮影されているが入江氏によると東宝のスタジオに比べ余りにも狭いスタジオに呆然となったそうである。
だが仕事と割り切りそのような悪条件の最中、東宝での経験を活かして第2話での東海道新幹線が通る由比トンネル周辺やストップゴン編での奈良の東大寺などのミニチュアワークはテレビ特撮作品では未だこれを越える作品がないというほどの凝り様で再現されており高いクオリティーを誇る。
そのせいもあってか制作費が上乗せされ予算がかかってしまったがこうした苦労もあってか視聴率も良く「ウルトラマン」と人気を二文するほどだった。
ただ、そうした人気作品にも関わらず放送後に映像ソフトには恵まれない作品である。
というのも過去に完全版のプリントが紛失しソフト化も困難となったためであり過去にソフト化したときは現存する素材を基に構成せざるを得ない状態だった。
1990年代にレーザーディスク化されたときもどうにか本編のみの映像は発見されたもののテロップ入りのオープニングや予告編が一体となったエンディングが行方不明でありこの時はオープニング、エンディング共にそれに該当する映像素材を利用して作られた。
その為に放送当時とは異なったバージョンであることは否めないしことにエンディングはソフトに入れられた素材こそ本来使用するバージョンだったが実際は一部を除いて別に作られたものが使用された。
またサブタイトルのテロップも現存しないが海外輸出を考慮して敢えて入れなかったのだろうがそのせいか本作は未だにその全貌を掴めずにいる。
(今回使った画像は後に発見された本放送の褪色したプリントから使用した。)
2007年に本作のDVDが出る筈だったが以上のような事情から遅れ気味になっているが何としても発見して頂きたい作品だ。
何話か放送当時のプリントが発見されているのだからこれを基にデジタルで色補正し完全な姿で復活して欲しい。
それだけの完成度がある作品なのだから。
スタッフ
原作  手塚治虫
監修 黒田達夫
プロデューサー 上島一男、別所孝治
音楽 山本直純
監督 加戸敏、土屋敬之助、中尾守、船床定男
特撮監修、造形  大橋史典、大沢光秋
特撮監督  小嶋伸介、堺武夫
撮影 須藤登、中町武
脚本 高久進、山浦弘靖、若林藤吾
特撮撮影 斎藤進
美術 吉田良雄
特撮美術 入江義夫
怪獣造形  大橋史典、開米栄三、照井栄
操演 比留間伸志
キャスト
村上記者 岡田真澄、村上マモル 江木俊夫
村上友子 八代真矢子、マグマ 魚澄鉄也
マグマの声 かねうちよしお、ゴア 大平透
アース 清水元、モル 三瀬滋子
ガム 二宮秀樹 、水野デスク 睦五郎、リズ  イーデス・ハンソン
昭和41年7月4日~42年6月26日放映
全52話、カラー30分 フジテレビ毎週月曜夜7時半(1話~39話)7時(40話~52話)
製作 Pプロダクション、東急エージェンシー、フジテレビ
製作協力 日本特撮株式会社
エピソードリスト
1、わたしがゴアだ
2、宇宙怪獣モグネス襲来す
3、ガム!モグネスを倒せ
4、危機一髪、東京!
5、怪獣バドラ誕生す
6、マグマ大使対バドラ
7、危うしマグマ大使
8、バドラの最期
9、謎の空飛ぶ円盤
10、音波怪獣フレニックス
11、人間モドキを倒せ
12、怪獣フレニックス最後の日
13、最後の遊星人
14、ドクロ島
15、怪獣アロンを撃て
16、地球最後の日
17、ガレオン地球を攻撃せよ
18、生き人形の怪
19、バランゴ作戦
20、死闘・2大怪獣!
21、細菌を追え!!
22、あの宇宙ロケットを停めろ!!
23、怒る怪獣ストップゴン
24、地球人反撃せよ
25、悪魔からのクリスマスプレゼント
26、冷凍作戦完了す
27、裏切り者サルタンを殺せ
28、怪獣ダコーダの最期
29、マグマ大使と自由の女神
30、怪獣テラバーデン対スクランブル
31、ゴアの魔手から地球を守れ!
32、大桶谷の決闘
33、恐怖の怪虫ピドラ
34、迫る魔の手・宇宙植物ネスギラス
35、危うしマグマ基地
36、地球を救え
37、狂人と水爆・毒ガス怪獣サソギラス登場
38、さらば!毒ガス怪獣サソギラス、水爆を探せ
39、怪獣グラニアただ今出現
40、いそげ!マグマ大使・くたばれ怪獣グラニア
41、幻怪獣バルザスの猛襲
42、マグマ大使とバルザスの激闘
43、マグネット怪獣ジギラ現る!
44、マグマの使命
45、日光に現れた海坊主の謎
46、怨霊怪獣海坊主対マグマ大使
47、電磁波怪獣カニックス新宿に出現
48、東照宮の危機・電磁波怪獣カニックス大暴れ
49、再生怪獣キンドラ出現
50、くたばれ!宇宙カビ怪獣キンドラ
51、宇宙怪獣ゴアゴンゴン襲来す!
52、宇宙の帝王ゴア対マグマ大使・最後の戦い



実写版「鉄腕アトム」(1959)



 

解説




本 作は「日本誕生」の製作されている1959年、東宝のプロデユーサーだった松崎氏が作ったプロダクションである「松崎プロ」がテレビ進出のために製作され た作品である。(しかも子供向きに)そしてこのテレビ番組に選ばれたのが手塚治虫の有名な漫画である「鉄腕アトム」だったのだ。

さて題材が題材なだけに特撮シーンが必要な作品であったことはいうまでもなかった。だが、松崎プロでは特撮のスタッフなどいるわけがない。そこで松崎氏は同じ東宝に在籍している円谷英二監督にオファーを求めたのだ。

当 時円谷氏にしても東宝に籍を置いてはいるもののこの頃東宝以外にも特撮の足を伸ばしたがっていたのは事実である。現に円谷特技研究所を作り東宝のシステム では不可能な特撮の研究を行っていて東宝以外にもフリーの立場でテレビ作品にも関わったこともある。それにこの時期既にテレビという新しいメデイアにも興 味を憶えている。この後、「ウルトラQ」を製作もしているので相当なものだったようだ。(もっともこれは映画製作の体制に不満を憶えたということもあるの だが・・・)かくてオファーを承諾しアルバイトという形で特撮監督に参加したのである。



 

本 作の製作はテレビ作品ということで映画ほどの予算もなく特撮的にはかなり苦労したようだ。これにどう対処すればいいのか?おまけに東宝のスタッフは使えな い。そこで円谷監督はこの作品には東宝の特撮スタッフは使わずに円谷特技研究所のスタッフを使いしかも限定された予算で十分吟味した特撮シーンを作り上げ たのだ。

第1部では原作に忠実なスタイル(といっても多少無理があるが)で登場させたアトムだったがこれが不評だったので写真2枚目のようなスタイルにしたのだった。

作 品的にはこのような体制で行われたので特撮シーンは同じ円谷作品である「宇宙大戦争」等に比べると見劣りこそするが自動車から主翼を展開し更に滑るように 空に向けて上昇を開始するシーンは「マイテイ・ジャック」や「緯度0大作戦」のα号のイメージの原型であると思うしアトムが空を飛んだり第2部に登場する 巨人と戦うシーンなどはまさにウルトラマンの原型であるのだ。懐かし番組で以前はこのアトムがやった時には爆笑されてしまった作品なのだがこの作品こそ円 谷特技研究所がテレビに進出した第1号作品なのである(もっとも、日本テレビの「猿飛佐助」もあるが実質的なテレビ映画では「アトム」が第1号)



 

結果的には本作はヒットして全65話五部構成となった作品にまでなったのである。ここで疑問がある。

何故この作品を円谷英二作品リストに加えなかったのか?という疑問である。特撮書籍にはこの作品の特撮を円谷英二が担当したということが知られているにも関わらずだ。これを不思議に思ってしまう。事実は明らかなのだからこの作品も加えて欲しいと思うのだ。

スタッフ

(注意  この作品に関しては資料も不足のため、現在判明している部分のみ執筆した。)

製作  松崎啓次

原作  手塚治虫

脚本  渋谷五十八 コオロギハルヲほか

監督  吉川博ほか

特殊美術  高山良策

特撮監督  円谷英二(クレジットなし)

特撮  円谷特技研究所

キャスト

アトム  瀬川雅人

お茶の水博士  田中明雄

製作  松崎プロダクション

昭和34年度作品



 

 

1
白夫人の妖恋 ( 1956年)





本作品は「ゴジラ」以降での海外の実績もあって合作企画に意欲的な東宝が1956年に香港のショウ・ブラザースと提携して製作された特撮ファンタジー映画である。
原案は後に東映動画(現、東映アニメーション)の第1作となった「白蛇伝」やこの小説を題材にした林房雄の作品である「白夫人の妖術」を基に日本シナリオ界の重鎮である
八住利雄が脚色を担当した。
本作品では当時の破格の制作費である2億1000万円を投入し東宝特撮では
初のイーストマンカラーで彩られたカラフルな作品であるが
これには当時、武蔵野美術大学教授であった三林亮太郎氏の美術デザインの美しさもあり
東宝特撮映画では初のカラー作品に相応しい出来栄えとなった。
しかもベルリンでの国際映画祭では銀熊賞(色彩設定)を受賞したほどである。
更に本作品ではゴジラ映画2作品や「獣人雪男」に続いての東宝特撮作品であり
更に視野を拡げて怪獣映画や戦記映画に留まらず新たなジャンルを切り開いた記念すべき作品でもあった。
これには以前の1955年での「蝶蝶夫人」におけるイタリアとの合作が成功を収め更に「ゴジラ」が公開された 1954年に「宮本武蔵」東宝での初のイーストマンカラーによる完成作品がアカデミー外国映画賞を受賞した
気運もあり当時、下手物と酷評されたゴジラ映画だけにその偏見を払拭すべく製作されたのである。
そして本編監督は叙情派の映画監督として名を馳せた豊田四郎氏がメガフォンを採った。
豊田監督といえば男女の愛を描くことで定評がある監督だが本作も例外ではなく
美青年である許仙に恋心を抱いた白蛇が美女に姿を変え近付き結ばれるものの
ある時に正体を許仙に見られてしまった。
そしてそれは激しい憎悪になり彼女の妖術が雷鳴、豪雨、大洪水といった猛威となって
許仙がかくまっている金山寺に襲い掛かっていくのである。
この金山寺の崩壊シーンが本作品最大の見せ場となっているのだが
この時のミニチュアセットの材質は何と泥で作ったものだという。
これにより崩壊した寺の残骸がリアルに描かれている。
また最後の二人の昇天シーンでは日本では初となったブルーバック合成を駆使し
本作品のファンタスティックな雰囲気を見事に映像化している。
また本作品で特筆すべきは本作品での音楽を担当した團伊玖磨氏の劇伴である。
團氏は本作において後の「太平洋の嵐」(1960年)での勇壮さとは対極にあたる
優雅な音楽に仕上がっている。
それは中国民話のファンタスティックな雰囲気を見事に表現しており
本作品独特のものとしている。
筆者は本作品は予告編しか見ておらずその全貌はまだ把握していないが
予告編やサントラでもその雰囲気を堪能出来る作品だと思っている。
案の定、本作は未だにDVDにはなっておらず発売されていないのが残念な
作品であると思う。
(以前レーザーディスクが発売されており現在絶版なのが惜しい・・・。)
やはり合作ということもあり版権が困難な作品だがいつの日にか見てみたい作品で
ある。
スタッフ
製作 田中友幸
原案 林房雄
脚本 八住利雄
撮影 三浦光雄
録音 下永尚
美術監督 三林亮太郎
音楽 團伊玖磨
特技監督 円谷英二
監督 豊田四郎
キャスト
池部良、山口淑子、八千草薫、徳川夢声、上田吉二郎、清川虹子、東野英治郎ほか