イスラエルが、旧約聖書に言う神が与えたという「約束の地カナン」を分割することなど、建国以来全く考えてもいないことは、その後の歴史を見れば明らかなことで、当初の分割案の全く不平等な状況にパレスチナ国家が反発し、紛争が生じることはわかりきっていた。

 

そうした歴史の結果で今がある。

 

 

昨日の以下のニュースでも次のように報道していた。

 

西岸地区ではガザで昨年10月7日に戦闘が始まって以降、・・・略・・・・西岸のラマラに拠点があるパレスチナ自治政府の保健省は、同日以降にイスラエル兵士やユダヤ人入植者によって殺害されたパレスチナ人は少なくとも518人とみている。子ども129人が含まれている。

 

 

 

こういうような、民族抹殺を狙う攻撃をするイスラエルをなぜアメリカが支援するかと言えば、単純にユダヤ資本に牛耳られているだけではなく、宗教的・歴史的なバックボーンがあるのだということは、薄々私なりに理解してはいたのだが、ネットで「カナンの地」などをググっていたら、その点を明確にした論文を見つけた。

 

(*ネットで普通に公開してある論文なので、勝手に引用させていただく。)

 

 

米イスラエル特別関係の形成と 「約束の地」 船  津     靖

https://shudo-u.repo.nii.ac.jp/record/3120/files/HG44104.pdf

 

(以下、上記論文から引用)

 

・・・・・・本稿の後半で,アメリカとイスラエルが自由と民主主義に価値を 置くリベラル・デモクラシーの政治文化を共有していること,ピューリタ ンとシオニストは共にヨーロッパでの迫害を逃れ「約束の地」への脱出= 「出エジプト」(Exodus)に人生と共同体の未来を賭けた入植者だったこと を指摘する。

アメリカとイスラエルは共に聖書的想像力に刺激された類似 の建国史・建国神話を持つ入植者と移民の共和国である。

 

 アメリカは先住民を追放し西へ西へと領土を拡張していった。現代イス ラエルが国家領域を獲得する過程でパレスチナ・アラブ人の追放や難民化 も起きた。北米「新大陸」の先住民もパレスチナ・アラブ人も,両国内で は事実上,二級市民とされた。両国は共に先住民を「未開」「野蛮」と軽視 し,自らの征服・入植事業を「文明」の名で正当化した。アメリカとイス ラエルには聖書の物語を反復するかのような「約束の地」への入植・占領 という建国の歴史がある

 

  両国の「特別な関係」の基盤には聖書がある。現代人は預言者モーセを 主人公とする聖書の『出エジプト記』に解放と自由,社会正義を強調する 理想主義的なリベラリズムを読み取ることができる。一方,モーセの後継 者ヨシュアの「約束の地」への侵攻から始まる『ヨシュア記』は,凄惨な 殺戮と占領・入植の物語だ。「約束の地」における自民族の自由と繁栄とい う理想を実現する過程に,異民族との戦闘・占領を描いたのは,聖書のリ アリズムである。「未開」のフロンティアに「文明」をもたらす開拓者を自負したアメリカとイスラエルの近現代史は,共にリベラリズムと植民地主 義の混淆物を内包している。

 

・・・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ケネ ディは,最新鋭のホーク地対空ミサイルをイスラエルに供与し,軍事的な 同盟関係構築に道を開いた。反対派は,ホーク供与が先例となって,アメ リカがイスラエルの主要な兵器供給国となることを懸念した。以後の両国 関係は,その懸念の通りになった。

提供される武器は防衛兵器である地対空ミサイルから戦車,ファントム,F-15,F-16など最新鋭の戦闘機へ進化 を続けた。イスラエルが米国製兵器購入に充てる巨額の経費は,アメリカ の支援で賄われるようになった。イスラエルがアメリカの資金でアメリカ の武器を買う関係だ。アメリカの戦後の累積対外支援額はイスラエルが群 を抜いている。最新の合意は,民主党のオバマ政権とイスラエルの右派政 党リクードのネタニヤフ政権が2016年に署名した防衛協力覚書である。ア メリカはイスラエルに10年間で380億ドルを支援する。内訳は年間33億ドル の軍事支援と年 5 億ドルのミサイル防衛協力費である。  

 

・・・・・・・・・・・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ユダヤ人の入植者や移民とアラブ住民の対立,そしてイスラエルの独立 戦争によるパレスチナ・アラブ人の難民化は,アメリカ先住民を駆逐して いった建国史と似ている。アメリカのリベラル派はユダヤ人入植者の中に, 理想に燃える勇敢な開拓者のイメージを見た。

1948年の第一次中東戦争でベングリオン首相の指示を受けた武装組織が アラブ住民を強制追放したことは,ベニー・モリス,イラン・パぺといっ た「新しい歴史家」(new historians)と呼ばれるイスラエルの研究者による詳細な実証がある(Morris, 2004, 2008, Pappe, 2008) 

 

 ユダヤ武装組織やそれを母体とした新生イスラエル軍によるパレスチナ の領土獲得とアラブ人の殺傷や追放は,聖書の『ヨシュア記』に描かれた 「約束の地」の占領を思い起こさせる。

預言者モーセの後継者ヨシュアの軍 勢はヨルダン川を東から渡って西岸(聖書のユダヤ,サマリア地方)に侵 攻した。今も残るヨルダン渓谷のオアシスの町エリコはじめ先住異民族の 土地を武力で占領していった。『ヨシュア記』は征服と殺戮の描写の連続 だ。例えば,第 8 章「アイの滅亡」は次のように記されている。 「こうして,イスラエルは追って来たアイの住民をことごとく野原やや荒 れ野で殺し,一人残らず剣にかけて倒した。その後,イスラエルの全 軍はアイに引き返し,その町を 剣 つるぎ をもって打った。その日,倒れた者 は,男女合わせて一万二千人。すべてアイの人々であった。ヨシュア は,アイの住民を滅ぼし尽くすまで,投げ槍を差し伸べた手を元に戻 さなかった。ただし,主がヨシュアに命じた言葉どおり,イスラエル はこの町の家畜と戦利品を自分たちのために奪い取った。ヨシュアは こうしてアイを焼き払い,とこしえに荒れ果てた廃墟の丘にした。そ れは今日に至っている。ヨシュアはまたアイの王を夕方になるまで木 につるし,太陽が沈む頃に死体を木から下ろすように命じた。人々は 町の門の入り口に死体を投げ捨て,その上に大きな石塚を築いた。そ れは今日に至っている。」(8: 24–29)

 

  聖書に描かれた古代の戦争と20世紀半ばの中東戦争を同一視するのは飛 躍であり,公平でもないだろう。だがモリスなどによると,エルサレム近 郊のデイル・ヤシン村虐殺事件では子供,女性,老人を含む100人以上が殺 された。テルアビブに近いリッダやラムレから約 7 万人のアラブ住民を追 放する過程で,戦闘により数百人,炎暑の強制行軍により子供や妊婦など約300人が死亡した。パぺは,追放の過程で殺害,虐殺されたパレスチナ人が全体で2,000 – 3,000人に上ると推定している。(Pappe, 2006)

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以上

 

同じ「聖書」を基盤とする宗教的土壌と、迫害から逃れて植民地主義に徹した歴史を肯定する思想。

そこには『ヨシュア記』に書かれた,凄惨な 殺戮と占領・入植を当然のごとく肯定する思想がある。


軍事支援で資金を援助し、自国の武器を買わせ、選挙などではユダヤ資本から絶大な支援を受ける、アメリカとイスラエルは、ギブアンドテイクの世界最強のお仲間なのだ。

 

こうして宗教的・歴史的な背景などもみると、アメリカがイスラエルの蛮行に本気で抗議してないことが、よく読み取れる論文だ。

 

 

実際に殺されているのは、ハマスの戦闘員だけではない。

ハマスも抵抗するから、それなりに戦闘員もいるのはいるのだろう。

しかし、イスラエルが推し進めているのは、テロの撲滅に名を借りた民族の排除、抹殺なのだ。

 

国連職員も医師も教師も、もちろん子供たちも、皆殺しが目的だということは、以下のような連日のニュースでも明白で、ICJが言うように意図的に飢餓状況を作り、医療を奪う戦争犯罪行為を許してはいけない。