きょうあく | The ROYAL NINE MINUTES
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白石和彌監督『凶悪』
原作は新潮45編集部の「凶悪ーある死刑囚の告発ー」
死刑がほぼ確定しているある男が、自分と共犯した人物がのうのうと表社会で暮らしているのが許せない、と凶悪な余罪をいくつも告発した、実話。
人の命を軽々とお金に換えていくそのやり口は、本当にフィクションの小説や映画の中の世界かと思います。
映画を観終わって真っ先に思ったのは、原作を読みたい、ということ。その後ほとんど一気に読みました。

生々しいシーンも結構ありましたが、私が一番現実的で怖いなと思ったのは、原作にはない、主人公(著者)の家族とのシーンの中で、義母に対してしばしば暴力をふるってしまっている妻が「自分だけはそんな人間じゃないと思っていたのに」と言っていたところです。
誰しも自分が思ってもみなかったような人間になってしまう可能性がある……一度境界線を踏み越えてしまうと、麻痺という恐ろしい現象とともにその行動は加速していくものだということを改めて肝に命じるのでした。

メインの3人、山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキーはそれぞれ個性がキッチリ違っていて良かったと思います。山田孝之はあまりみたことなかったのですけど、上手ですね。
これを観るちょっと前に是枝裕和監督の『そして父になる』を観たのですが、リリーさんの役柄のギャップは相当なものでした。

イズミ