大三千世界(おおみちよ)
大三千世界は良寛さんの歌の一節で
「淡雪の中に顕(た)ちたる大三千世界
またその中に淡雪ぞ降る」
かなり前に、ある本の中で紹介されていて
良寛さんの世界観が素晴らしいと思い
書家の先生に書いてもらい掛け軸に
表装して大切にしています。
インターネットなどが普及していない頃
でしたので、確かめようという思いも
術もなかったので何の疑問も抱かず
現在まで至っておりました。
ふとした思いから検索して見たところ
良寛さんの世界観が変わるわけでは
ありませんが
「あわ雪の中に顕ちたる三千大千世界
またその中に沫(あわ)雪ぞ降る」
というのもありました
原書らしきものの写真を見つけましたが
全部「ひらがな」でした。
「あわゆきのなかにたちたるみちおほち
またそのなかにあわゆきぞふる」
大三千世界(おおみちよ)ではなく
(みちおほち)が正解で仏経典にある
三千大千世界(さんぜんだいせんせかい)
のことのようです。
仏教の世界観では最小単位となる
一個の世界の中心には高さが
八万由旬(ゆじゅん)
約57万6千キロメートルという
とてつもない高さの須弥山(しゅみせん)
という山があり、その山を中心として
一個の須弥山世界をつくっています。
その須弥山世界が千個集まって
「小千世界」となり、その小千世界が
千個集まったものが「中千世界」、
さらに中千世界が千個集まったものが
「大千世界」つまり「三千大千世界」
ということになります。
千の三乗で須弥山世界が10億個
集まったのが三千大千世界となります。
宇宙に例えるなら
小千世界は銀河宇宙
太陽系のような集まりが約一千億個
集まって銀河を形成していると言われ
中千世界は銀河が集まって銀河団を
形成しているとされ
大千世界は銀河団が集まり
宇宙大規模構造を形成していると
言われています。
ある本にはそう書いてありましたと言い訳をし、
良寛さんに異を唱えるのは恐れ多い事ですが
大三千世界(おおみちよ)の方が
三千大千世界(みちおほち)よりも
しっくりくるような気がします。
また、大三千世界にしても意味合いから
必ずしも間違いとも思えませんし、
「良寛さんがすぐに消えてしまいそうな
淡雪の中に三千大千世界を見て
その淡雪の中の三千大千世界でも
淡雪が降っているという」
良寛さんの世界観を損なうことも
無いように思えますし、
それよりなにより
その基となっている仏教の
途方もなく広大な世界観には驚かされ、
良寛さんの目に見えないミクロの世界の
法則である量子論的な考え方で淡雪を
見ることができるという世界観或は、
その素晴らしい感性には
今でも感動を覚えます。