空手を習い始めた頃の思い出話です

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



空手を習い始めた頃、あこがれていた蹴り技。「飛び後ろ回し蹴り」


昔見た映画、志保美悦子主演の「女必殺拳」でえっちゃんが華麗に決める飛び後ろ回し蹴り!空手を習うんだから是非とも習得したいと思っていました。


早速先輩にお願いすると、「まだ早い!」と取り合ってもらえません。基本稽古も始めたばかりの頃です、今思えばすごいお願いしちゃったなと思いますが、当時の私はそんなことお構いなし。しつこくお願いすると「ななちゃんがやっても、”びっくり蹴り”くらいにしかならないからやめとき!」と追い払われてしまいました。


そこで、空手経験者で入会してきたFさんをつかまえて教えてもらうことに。すでに先輩からストップがかかっていることを知っているFさん、しつこく粘りましたがやはり教えてくれません。技だけでも見せてください!どうしてもという私の願いに、Fさんは先輩に内緒で少しだけ技を見せてくれました。


今ならインターネットで検索すれば知りたい事は写真や動画ですぐに調べることができますが、当時は1人暮らしの部屋にビデオもない状態。Fさんが見せてくれた動きを忘れないようにしっかり覚えて、稽古が終わった後、本屋さんに直行、スポーツコーナーで蹴り技について詳しく書かれた本を探しました。当然ですが町の小さな本屋さんに空手の専門書などあるはずもなく、仕方がないので自分の部屋で練習してみることにしました。


1人暮らしをしていた部屋は、小さな14型のブラウン管テレビと、机代わりのちゃぶ台が置いてあるだけの超殺風景な部屋です。姿見もなかったので、雨戸を閉めたガラス窓に映る姿をみて練習します。


たしかこんな風にして、ここでジャンプしてたような。。まわりながらジャンプして、着地は”ずどん”としりもちをついてしまいました。気づけばもう夜中です。部屋は一階でしたが、隣に住む大家さんがびっくりして飛んでくるかもしれません。部屋での練習はあきらめて道場に早めに行って練習することにしました。


次の稽古日から、こっそり自主トレをすることにしましたが、先輩には当然見つかっていました。しばらく何も言わなかった先輩ですが、ある日、いつもの内容の基本稽古が終わると「今日から後ろ蹴りの稽古をします。」と稽古を見てくれるようになりました。


まずは相手に対し、後ろを向いた状態からの後ろ蹴り。振り返って相手をしっかり確認してから蹴ります。軸足がぶれないように蹴った後は脚を戻しすぐに目線を正面に戻します。「後ろ回し蹴りをするためには、まずは後ろ蹴りが出来なくっちゃな。」先輩の言葉に一生懸命、右、左、と蹴りを繰り返します。自分ひとりではうまく行かなかった練習も、先輩に見ていただくとこんなに簡単に出来ちゃう!すっかりうれしくなって更に右、左と蹴り続けていました。しばらくすると、軽いめまい。


あ、と思った瞬間目の前が真っ暗になり、ちかちかと星が飛んでひっくりかえってしまいました。


その日の稽古は見学。


学校の体育の授業を見学することはありましたが、空手の稽古を見学するなんて。しかも後ろ蹴りの稽古で目を回すなんて。自分のふがいなさに情けなくて、悔しくて。このままでは「後ろ蹴りをさせてはいけないななちゃん」のレッテルが貼られ、稽古をさせてもらえなくなるかも。そんなことになったら”飛び後ろ回し蹴り”どころではありません。やはり部屋で自主トレしかない、今度は後ろ蹴りの!


後ろ蹴りなら、飛び後ろ回し蹴りと違い、ジャンプする動作がないので大きな音も立てることなく稽古できます。

蹴り足を床に静かに下ろすようにして稽古をしていました。


目が回るのは後ろから前にすばやく目線を動かすから、フィギュアスケートの選手はなんで目が回らないのかな。すぐに本屋さんに調べに行きます。当時、わからないことがあるとすぐに本屋さんに立ち読みに行っていました、迷惑な客、あ、買ってないから客じゃないですね。スケートの本は空手の本より種類が多く、私が知りたかった目が回らない方法ものっていました。


『進行方向を見る。』


なんだこりゃ?

回る方向を横目で見ていると目が回らないと書いてあります。ほんとかよ。早速帰って部屋でくるくる回ってみました、なるほどなんとなく大丈夫なような。。。よく考えると、後ろ蹴りの時、頭をうしろ、前と動かしますが、目線は意識していなかったように思います。今度は目線を先に動かすように、相手が後ろと前にいると仮定して。後ろを見て後ろ蹴り、続けて前を見てまわし蹴り。左右交互に、これを何回か続けて見ました。目線が定まると目が回ることもありません。これならいける!


その後、自主トレの効果があったのか、後ろ蹴りで目を回すことはなくなりました。あこがれの「飛び後ろまわし蹴り」ですが、結局ちゃんと教えていただくことはありませんでした。約束組み手の最中にうっかり蹴ったら飛んでいた、ということはありますが、意識して蹴ったことはありません。


今、出来るかどうか部屋で試してみたいのですが、下の部屋の人が何事かと思うといけないのでやめておきます。