シリーズ:マインドフルネスを考える【第2回】

 

「マインドフルネス」と「瞑想」は、しばしば同じ意味で使われますが、厳密には少し異なります。

 

瞑想(メディテーション)は、マインドフルネスの状態を育てるための「練習方法」の一つです。

座って呼吸に意識を向ける座禅的な瞑想はその代表ですが、マインドフルネスは瞑想の座法に限定されず、歩く、食べる、日常の動作の中でも実践できる「注意の質」そのものを指します。

 

代表的な例としてカバットジンによる定義があります

現代のマインドフルネス実践の基礎を築いたのが、分子生物学者であり瞑想指導者でもあるジョン・カバットジン(Jon Kabat-Zinn)です。

彼は1979年、マサチューセッツ大学医学部にMBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction:マインドフルネスストレス低減法)を創設しました。仏教瞑想の伝統から宗教的要素を取り除き、医療の文脈で活用できる世俗的なプログラムとして再構成した点が画期的でした。

カバットジンはマインドフルネスを次のように定義しています。「意図的に、今この瞬間に、評価や判断をせずに注意を払うことによって現れる気づき」を指します。Youtubeで検索していただくと、色々な動画が出てきます。

 

MBSRの構成

MBSRは8週間のプログラムとして構成されており、以下のような要素を含みます。

  • ボディスキャン:身体の各部位に順番に意識を向ける
  • 座位瞑想:呼吸や身体感覚、思考の流れに気づきを向ける
  • マインドフル・ヨーガ:身体の動きに意識を向けながら行うヨーガ
  • 日常生活への応用:食事、歩行、対人関係など日常のあらゆる場面への適用

もともと慢性疼痛患者への介入として開発されましたが、現在はストレス全般、不安、うつ、医療従事者のバーンアウト予防など、非常に幅広い対象に活用されています。

 

MBCT――うつ病の再発予防へ

MBSRを基盤に、うつ病の再発予防に特化して開発されたのがMBCT(Mindfulness-Based Cognitive Therapy:マインドフルネス認知療法)です。ジンデル・シーガル、マーク・ウィリアムズ、ジョン・ティーズデールらによって開発されました。

うつ病経験者は、軽い落ち込みがきっかけとなって、以前のうつ的な思考パターン(反芻思考)に引き戻されやすいことが知られています。MBCTは、この「引き戻され」に気づき、思考に巻き込まれる前に距離を取るスキルを育てることで再発を予防します。

 

「思考は事実ではない」という視点

マインドフルネスの実践を通じて得られる重要な気づきの一つが、「思考は事実ではない」という視点です。

「私はダメな人間だ」という考えが浮かんだとき、その考えを「事実」として受け止めるのではなく、「今、そういう考えが浮かんでいるな」と一歩引いて観察する。この距離感(心理学では脱中心化:Decenteringと呼ばれます)が、感情に飲み込まれずにいる力を育てます。

第2世代の認知療法では、「自分はダメだ」など繰り返し浮かんでくる非合理的な考え方(自動思考)を変えるようにコントロールしようという考え方が見られますが、第3世代のマインドフルネスではそれらの考えを考えとして、一旦傍に置いておくというような感じです。

 

これは、これまでEMDRシリーズで触れてきた「観察するちから」とも重なる部分があり、この後のホロニカル・アプローチとの関連の回でも改めて取り上げたいと思います。

 

まずは呼吸から

マインドフルネスの実践は、特別な道具も場所も必要ありません。1日数分、呼吸に意識を向けるだけでも実践になります。

次回は、こうしたマインドフルネス実践が実際に心身にどのような効果をもたらすのか、さまざまな研究データをもとに詳しく見ていきます。