「効く」と言えるためには何が必要でしょうか

 

心理療法の効果を科学的に示すためには、無作為化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)の積み重ねが必要です。EMDRはこの点で、心理療法の中でも特に多くの検証を受けてきた治療法の一つです。

 

主要機関による推奨

現在、以下の国際的な機関がEMDRをPTSDの推奨治療法として明記しています。

  • WHO(世界保健機関):2013年のPTSD治療ガイドラインでEMDRを推奨
  • APA(アメリカ心理学会):エビデンスに基づく治療法として認定
  • ISTSS(国際トラウマティックストレス学会):強いエビデンスを持つ治療法として位置づけ
  • 英国NICE(国立医療技術評価機構):PTSDの第一選択治療の一つとして推奨
  • 日本トラウマティックストレス学会:国内でも普及・研究が進む

研究で示されていること

RCTの結果を統合したメタ分析では、EMDRはPTSDの症状(侵入症状・回避・過覚醒・認知の歪み)を有意に改善することが繰り返し示されています。

 

特に重要なのは治療効率の高さです。PEなど他のトラウマ療法と比較した研究では、EMDRはより少ないセッション数で同等以上の効果を示すという報告が複数あります(Ironson et al., 2002など)。これはクライエントにとっても、臨床現場にとっても実践的に重要な意味を持ちます。

 

どの対象に効果が示されているか

もともとPTSD治療として開発されたEMDRですが、現在では適用範囲が広がっています。

  • 単回性トラウマ(事故、災害、暴力被害など)
  • 複雑性PTSD・複数のトラウマ体験を持つケース
  • 解離症状を伴うケース(慎重な適用が必要ですが)
  • パニック障害、特定の恐怖症
  • 慢性疼痛、身体症状への応用研究
  • 子どもへの適用(TF-CBTとともに推奨される場合も)

限界と課題も正直に

一方で、研究上の課題も残っています。

心理療法の研究では「盲検化(ブラインド)」が難しいという構造的問題があります。薬物研究のように、クライエントも治療者も「何を受けているか」を知らない状態でのRCTは実施困難です。また、研究者とEMDRトレーニング機関の利益相反の問題を指摘する声もあります。

さらに前回述べたように、作用機序がまだ完全には解明されていない点も、科学的な意味での「説明力」という課題として残ります。

 

それでもEMDRが選ばれる理由

こうした限界を踏まえてもなお、EMDRが世界中の臨床現場で選ばれ続けているのは、実際に変化を体験するクライエントが多いからです。「言葉にしなくていい」(EMDRではトラウマにまつわる事象を事細かに言語化する必要がない)「身体ごと変わっていく感じがした」(認知・感情だけでなく身体にも働きかける。当然脳のレベルでも)——そうした体験の語りは、エビデンスとは別の、しかし無視できない臨床的事実です。

 

次回からは、EMDRと他のトラウマ療法との比較に入っていきます。まずはPE(持続エクスポージャー療法)を取り上げます。

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