こんばんは、アイです。
 8月になりましたね。
 みなさんの職場には、夏休みありますか?それとも、ないのでしょうか。
 アイの薬局は、あるんですよ(^^ゞ
 目前の休みだけを楽しみに、今月も働きます。




 


 蒸し暑さが残る夕暮れ時。

 アイスコーヒーを飲みながら、今月の見積価格リストを眺めるアイ。

 市販薬や衛生材料の仕入れは、主に現金問屋を使っています。
 理由は単に安いから。 

 卸から仕入れるルートもありますが、あまり利用しません。
ちょっと割高だしね。
  
 もちろん現金問屋にも欠点はあります。在庫が安定してないので
仕入れが予定通りに行かなかったり、どの業者もどことなくクセ者ぞろいというか、
お行儀が良くないっつーか、ビジネスとしてふさわしくない態度に
ちょっとムカつくことがあります。

 まあでも、とりあえず偽物を売りつけられたりとかはまだないので、
利用してます。どんな商品でも、格安で取り寄せてくれるしね。イヤな顔しながら。

 同様に清涼飲料水や健康ドリンク、嗜好品の類でも直取のできるメーカーもあれば、
卸を通してじゃなきゃダメ、製品のうち1、2種類だけ仕入れたい?そんな勝手なこと
言われてもできませんとか、ウザい条件ばっかつけてくるメーカーもあります。

 いままでで1番対応が悪かったのがAGF(味の素ゼネラルフーヅ)でした。
ハナからこっちをバカにしてるというか、けんもほろろだったもんな。

 まあ、どんなに工夫しても、アイの薬局での市販品の粗利は
せいぜい50万に届くか届かないかといったところです。

 諸経費の足しにするための、あくまで副業です。






 チェックを済ませ、書類をファイルに閉じるアイ。
 
 伝票や経理の書類も、だいぶたまってきました。
 処方せんや薬歴は3年間の保存義務がありますが(生保等は5年)、
経理関係の書類には、実に7年間の保存義務があります。

 ただでさえ医薬品や衛生材料でいっぱいの薬局に、そんな書類を置いておく
スペースなんていつまでもはありません。

 いずれ別の場所に移して、しまっておかなきゃいけないだろうな。

 閉店間際になり、窓から外を眺めると、見知った顔が近づいてくるのを見つけました。

 前の会社の同僚の、Fさん(34)でした。

 






 熱せられた金網の上で、タン塩がいい感じに焼けるのを、
ワクワクしながら見つめるアイ。

 Fさんと焼肉屋に来ました。牛角ですけど。牛角だろうと
さすがのアイも、焼肉屋だけはひとりで入れません。
一緒に食事に行く相手がいることのありがたみを感じます。こういう時だけ。

 Fさんは以前にアイが勤めていた会社の同僚で、もうずいぶん長いこと
付き合いがなかったのですが、突然会わないかと連絡があったのです。

 何の用かと思ったら、ただの人生相談でした。
 
 薬剤師として、同じ調剤薬局にもう12年勤めているFさん。
病院薬剤師だった相手と結婚して、5歳と2歳の男の子がいます。

 相談内容は、夫が最近独立開業ばかり考えていてどうしよう、とのことでした。
 正直、同じ職場で働くことに飽きた。給料も安いし。上司が辞めない限り
出世どころか管理薬剤師にもなれない。それならいっそ、新しい展開を求めて
独立しようかと思っているとのこと。

 ひたすら肉をパクつくアイ。
 タン塩のコリコリとした食感を楽しみながら結婚して子供もいるのに、
こいつスタイルいいなー
とか考えたりして。

 ひとしきり相手の事情がわかった後、聞いてみました。






 「で、どうよ。お金あるの?」

 「全然ない。家と車のローンもあるし、子供のための積立もしなきゃだし。
 たぶん50万もない。家計簿つけてないからわかんないけど。」

 「独立開業のあてはあるの?」

 「全然ない。そういうのって、どうやって見つけるの?
 開業コンサルティングとかに相談したほうがいいのかな。」

 「焼肉屋ってさー、やっぱ焼いた肉に白いごはんてのはわかるのよ。
 でもさー、家とかバーベキューで焼肉やる時ってシメは焼きそばだったり
するじゃん?焼肉屋でも金網だけじゃなくて焼きそば作ったりできるような
プレートとかあったら面白いと思わない?」

 目をぱちくりするFさん。

 やみつき塩キャベツをバリバリかじりながら、視線を反らすアイ。

 まあ、ね。

 そりゃ結婚して子供もいたら、お金なんてないよね。

 

 



 2時間ほど、適当な話をして別れました。

 Fさんはかっての同僚たちがいまどうしてるかをを話してくれましたが、
ぶっちゃけあまり興味の湧く話題はありませんでした。

 ていうか、あれから何年も経つのに、みんな変わり映えもせず、
誰ひとり辞めず、ずっと同じ場所で同じルーチンワークをしているようです。

 まあ、離職率が低く、長年働いてる人が多いということは
安定した職場ということです。




 


 Fさんには、夫婦でよく話し合うことを勧めました。

 われながら、なんてつまらないアドバイス。

 そして本気で開業を志すなら、せめて準備金として500万ぐらい用意すること。
コンサルティングに相談するのは保留にしてよく本を読み、そして医療業界に
おいて1番情報ソースを持っている医薬品卸の人たちとコミュニケーションを
はかること、そして、会社を辞めようと思っていることは薄々バレてるだろうけど
上司や社長には、確信を持たれないようにすることを伝えました。

 それなりに納得したようです。Fさんは笑顔で帰っていきました。




 ていうか、正直何が不満なんだろうと疑問すら覚えます。

 普通に結婚して、普通に健康な子供がいて、マイホームとマイカーと
安定した仕事がある。

 これこそリア充ってやつじゃないの?

 アイなんて、どれひとつまともに持っちゃいねー。

 安定した仕事にも、常に不安はついてまわるってところかな。


 








 肉とキャベツとお冷やで一杯になったおなかを抱えながら、ひとりで
夜道を歩きます。

 誰かと一緒に食事に行くのは楽しいけれど、終わった後は寂しい。

 わりと毎日充実してますが、リア充とか、まして幸せとかいうものには
あまり縁がありません。
 
 お金を。とりあえず目標額として2500万。できるだけ早く貯めて
準備金にしようと思っているので、ちっとも無駄使いできないですし。

 コンサルティングと名乗る職業の人たちは、申し訳ないですけど
じっぱひとからげに一切頼りにしないと決めてるので、ほとんどの問題は
自分でなんとかしなければなりません。おかげで、突然生じる
様々なトラブルに対して、あたふたさせられることもしばしばです。

 まあ、大体のことは、わからなければコンサルティングに頼らなくても、
お役所に聞いたり税理士に聞いたり薬剤師会に聞いたり業者に聞いたり
前に勤めていた会社の社長に聞いたりすれば、解決しますし。

 信用と仕事というのは、正しいことをしていれば、自然と得られていくものです。


 
 



 ひとりニヤニヤしながら、十分明るくて歩きなれた帰り道を歩くアイ。

 なんだかんだで、しばらくFさん夫妻は、くすぶるだろう。
 いまどき、カネなんてどこも貸してくれやしない。特権階級の医者ならともかく。

 転職すると、給料が下がるリスクが高いことはそれとなく伝えておいたから、
安易なこともしないはず。家と車のローンで月々15万ぐらいかかるらしいからな。

 時間とお金を無駄使いしたけど、いい夜だった。






 もし新しい店を出すチャンスに恵まれた時、管理薬剤師として使える人材が
確保できるかも、しれない。