美術館にルーベンス、ピカソ、セザンヌ、ゴーギャン、ルオー、エルンスト、マティス、ダリ、クレメンテ、カルダー、ホックニー、ミロ、ヴォルス他を見に行った。
なかなか豪華なメンバー。
メインはルーベンス。あとは企画展の展示になる。
ピカソから回って、最後にルーベンスを見た。
企画展のなかではダリが異彩を放っていた。
もともと私が好きだからというのもあるののかもしれないが、やはり一番面白い。
ダリの作品は「シュールレアリスムの思い出」(1971年)という連作。
これまでの活動を振り返って作成した作品群。
手塚治虫でいう『ブラック・ジャック』のようなものか。
ダリの作品には時計をモチーフにしたものが多い。
グニャリと垂れた時計の絵なんか有名だよね。
展示してあったものでは、目のなかに時計が描いてあったり。
こういう発想はやはり面白い。
そして、やたらと空間を歪ませている。
この人(ダリ)は時間と空間をスティール(奪う)したかったのかなと愚考した。
マティスは1941年に十二指腸癌の手術をして、ベッドや車椅子の上での創作活動になって以降の作品。
たしか、すべて切り絵だったように思う。
実にポップな作品ばかりで、現代のデザインにも通じるものがある。
その他の作家の作品の感想は省略。
大したことも言えないし。
そういえば、藝術好きの友人と一緒に行ったので、色々、蘊蓄を語ってもらった。
ほとんど覚えていないんだけどね。
最後にルーベンスをみたわけだけどもやはり迫力があった。
ルーベンスは『フランダースの犬』のネロが死ぬまで観たかった絵を描いた人で有名ですね(?)
ルーベンスは異端を極めたダリなんかと違って、正当を極めた画家で国からもお墨付きをもらっていた。
アントワープで大規模な工房を構え、多くの弟子を抱えて、数多くの名画を生み出した。
王様や貴族や教会とかから依頼を受けて、作品を作る。
全部自分で作成するわけはなくて、まず下絵を自分で描いて、そのあとスタッフ(弟子)に指示して、細部を描かせるというね。
そして、仕上げの段階でまた筆を入れる。気に入らない部分を修正したりとか。
中にはすべて弟子に描かせてルーベンスがサインだけしたものもあるとか。
ルーベンスって今で言うとスタジオジブリの宮崎駿みたいなものか。
なんでも現代に譬えてアレだけども、ルーベンスには画家としての才能と監督としての才能もあったんだろうなぁとか思った。
最後に印象に残ったルーベンスの自宅の門にある銘文を紹介。
「何が我々にとり最善で有益であるのかを判断するのは、神々にお任せしよう。
・・・人間は、神々にとって、人間自身にとってよりも愛おしいものなのだから」
「健やかなる身体に健やかなる精神を願うがよい。
死を恐れぬ・・・怒りも欲望も知らぬ、勇敢なる心を求めよ」
古代ローマのユウェナリスの「風刺詩集」からの引用とのこと。
幸福を願うあまり、神々に過度の願いをすることを戒めた詩だ。
「欲望も知らぬ―」と言いながら、この自宅が超豪邸(いまではアントワープ市立美術館になっているくらい)で、ものすごく裕福な感じがちょっと笑えるのだけども。
おそらく、ダリだったら「怒りも欲望も知らぬ、勇敢なる心を求めよ」とは言わず、「欲望に忠実に!」的なことを言いそうだ。
この辺も正統派のルーベンスらしいと思った。