私は同人誌が好きで博多に行くと決まって「とらのあな」や「まんだらけ」に寄って同人誌を買い漁っている。


この同人誌だが、御存知の無い方のために書いておくと、ウィキにもあるように同人雑誌の略であり、もともとは同好の士(同人)が資金を出し合って作成された雑誌のことを指す。

が、現在、同人誌というと一般に漫画やアニメの既成作品を元に二次創作された作品を載せた冊子の意味になる。

複数の作家が参加している場合もあるが多くの場合、一人で描いていて、「同人」本来の意味は失われていると言っていい。

もっと、解り易くいうと、同人誌とは「漫画やアニメのパロディを載せた冊子」とでもなろうか。

そして、漫画やアニメのパロディ作品を同人作品と呼ぶ。(少なくとも私はそう呼んでいる)

だから、私は同人誌が好きというよりも同人作品が好きと言った方が適切かもしれない。


私は幼少の頃からパロディや諷刺画が大好きで、これは先天的なものともいっていい。

その延長線上に二次創作好きがある。(パロディも広い意味で二次創作だ)

私は二次創作を「既成の作品や概念を材料に第三者が新たな解釈を試みる事」と解釈している。

言葉をやさしくすると「既にある漫画やアニメ(その他、ゲームなども含まれる)を元に第三者が新たな作品を創作すること」となる。


これがたまらなくたのしい。

私が漫画やアニメを楽しむ時に、その作品自体を楽しむことはいうまでもないのだが、それから派生して二次創作をより楽しむことがしばしばある。

いや、しばしばというよりもこの二次創作の方が楽しかったりするのだ。


例えば、エヴァンゲリオン。

私はエヴァを見たとき、それほど楽しいとは思わなかった。

あのラストには確かに衝撃を受けたし、エヴァの凄さを実感するにあまりある体験ではあったが、今に続くようにエヴァに愛着を持つ要因になったのは多くの二次創作を読んだことに他ならない。

出版社名を挙げるとラポート、コアラブックス、ムービックから出たものが特によかった。

これらは出版社を通じて発売された書籍なので同人誌とは呼ばず、ふつうアンソロジー本(略してアンソロ本)とかパロディ本などといわれる。

角川書店からもいくつもの公式アンソロが出ている。

実はエヴァの同人誌はほとんど見たことが無い。

これらアンソロ本で十分こと足りたからだ。

それに、エヴァの同人誌であまりクオリティの高いものがあるとも思えない。

魅力的な作品ほど多くの二次創作が作られるものだが、エヴァはその典型的な例でおそらく日本アニメ史上最も多くの二次創作が作られたのがこのエヴァンゲリオンだろう。


なぜ二次創作が魅力的かというと、つまるところ、同じ材料でこのような解釈が可能なのかという感動に尽きる。

料理で譬えると、え、この食材をこういう風に料理するとこんな味になるんですか!みたいな。

やはり原作者とはちがった視点でキャラクターや作品の世界観を捉える愉しみは大きい。

例えばエヴァの二次創作に「ネルフ保育園」というものがある。

これは、もしもネルフが幼稚園だったらというそのままの内容なのだが、ゲンドウが園長でシンジやアスカ、綾波ほかが園児でミサトさんは保母さん。リツコは保健医で勿論ゲンドウの愛人というような。

例が悪かったかもしれないが、このような二次創作に多く親しんだことが私をエヴァ好きたらしめている最大の要因なのだ。


と、いくら文字で二次創作の魅力を訴えてもその十分の一も伝わらないと思う。

なので、実際に最新の良質な二次創作を御覧になっていただきたい。


図1

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図2

http://blog-imgs-24.fc2.com/m/u/e/mueyama/20090721-010c3-800low.jpg


図3

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以上はすべて上山道郎先生の作品。

出典は上山先生の公式ブログ(http://mueyama.blog15.fc2.com/ )から。

先生のブログでは他にもさまざまな二次創作が閲覧できる。

(エンドレスエイトの長門さんやみくるのみを描いた絵もあるよ)


図1を見ると『涼宮ハルヒの憂鬱』のSOS団メンバーがすべて藤子・F・不二雄先生の画風で描かれている。

上山先生の力量のなせる技なのだろうが、それにしても、SOS団メンバーがF先生の画風に妙にマッチするのは新たなる発見であった。


図1は単作に終わらなかった。

これを元に、もしも劇場版『ドラえもん』おいてエンドレスエイト(『涼宮ハルヒの憂鬱』)と合作したらという発想に基づいて創作されたのが図2、図3だ。

どちらも劇場版の予告編といった趣になってる。


画力、発想力どちらの面においても頭が下がる思いだ。

ハルヒも長門さんもみくるも凄く可愛い。

ハルヒ嫌いの私もこのハルヒなら愛せる。

図3のドラえもんの道具に一喜一憂しているハルヒの可愛さといったらない。


長門さんもF先生が描く不思議少女の特徴をよく掴んでいる。

目がとろ~んとした感じで瞳の色も薄い。まさにF先生が描く不思議少女だ。

そして、みくるが妙に色っぽいのもいい。

キョンも古泉も本当にF先生が描いたようだ。(キョンの目の描き方に注目!)

図3の最後に映画館でもらえるおもちゃの絵まで描かれているのはもはや脱帽するしかない。


この作品は二次創作の中でも二つの作品(ここではドラえもんとハルヒ)を組み合わせ、なおかつ画風を一方に統一するという高度なテクニックが駆使されている。

さすがプロの漫画家さんと感嘆せずにはいられない。

(私が感嘆するまでもなく、ブログやピクシヴ上でも大絶賛の嵐だ)


巷に溢れる同人誌では流石にここまでクオリティの高い作品にお目にかかれることは稀だが、これで二次創作の魅力が少しでも伝わったなら幸い。


私がしばしばエロばかりに特化しつつある同人誌市場を嘆く理由もおわかりいただけたのではないか。

もちろんエロ同人誌の中にもクオリティの高い作品はあるが、結局、エロを主体とした同人誌は著者の発想ではなくて妄想を描きなぐった作品に終止する例がおおく、とてもじゃないが楽しいものとはいえない。

繰り返すが、いいものもある。

そういったものは浮世絵で言うと春画を思わせるクオリティのものもあるが、残念ながら画力が追いついていない例がほとんどなのだ。

同人誌に妄想をぶつけるのもいいが、もっと発想をぶつけて欲しいというのが私の考えだ。



それにしても、だ。

上山先生の大長編ドラえもん『のび太とハルヒの憂鬱』は本気で読んでみたい。

いや、映画化したものを劇場で観たい。

ここは一つ、角川書店と藤子プロダクションは手を組んで上山先生発案の『のび太とハルヒの憂鬱』を映画化してもらいたい。

絶対にヒットすると思う。

だって、ドラえもんが好きな人もハルヒが好きな人も絶対見に行く。

ルパンとコナンがやれたのだから不可能ではないはずだ。(角川は同人作品の『にょろ~んちゅるやさん』をアニメ化したことだし)

『のび太とハルヒの憂鬱』の映画化(もしくはアニメ化)の実現を心から希う。