追記:

2023年4月28日から、5月4日まで

小田香監督の「Cenote」

メキシコシティのCinetecaで、

再上映されます!

メキシコシティにお住まいの方はぜひ!

 

スケジュールはこちら。

 

*****

 

数年前に、セノーテを題材にした映画が

賞をとった・・・と言う話を聞いていました。

 

トゥルム近辺で撮影したらしいよーとか

いろんな話を風のうさで聞いていましたが

メキシコでは簡単に見ることができなそうだったので

なんとなく、見ないままになっていました。

 

こちらが映画のトレーラーです。

 

そもそも、トゥルムには映画館がないし

プラヤデルカルメンにある映画館では

いわゆるメジャーな映画しか上映されませんから

こういうミニシアターで見られるような映画を見るのは

非常に難しいわけです。

 

そう言うわけで、私の記憶から

この映画のことは完全に消えていました。

 

***

 

数日前に、

NYから久しぶりにトゥルムに遊びにきた友達が

「これから、イギリスの映像関係の学校に行くつもりで

そしたらセノーテを題材にしたドキュメンタリーを作ろうと思ってるの」

と話始めました。

 

私は彼女が映像ディレクターだと言うことは知っていましたが

実はインスタグラムをフォローして、

面白い写真撮るな・・・と思っていただけで

彼女の作品自体は見たことがありませんでした。

 

しかも、彼女の仕事について

詳しく話を聞いたことがなかったので

いきなりいろんな話題に花が咲きました。

 

私は大学時代はユーロスペースという

ミニシアターに通い詰めるほどに

そういう系の映像が好きでしたが

その後色々あって、映画館に通えなくなり

さらにトゥルムにきてしまってからは

オンラインで見るのがメインになってしまいました。

 

だから、久しぶりに映像関係の話をするのが

とても楽しかったのです。

 

話の流れは、今年のオスカーについてとなり

「オスカーの賞って

本当に良かった映画っていうよりは

政治的な配慮とかがいっぱい働いてるよねー。」

なんていう話になったのです。

 

そしたらなんと私の友人は

若い時にボストンの学校に行っていて

今年オスカーをとった

Everything Everywhere all at once(日本でいうエブエブ)と言う映画の

脚本監督を勤めた

ダニエルズたちと同じクラスだったそうです(笑)

 

彼女も、ダニエルズたちが賞を取ったのは

物凄く嬉しいけど

エブエブが本当にあそこにふさわしかったかというと

政治的な配慮を考えざるを得ない・・・と言っていて

やっぱりそういうものなのかな・・と思いました。

 

そして・・・・

セノーテ・・映画・・・と話していた時に

ふと、私の記憶の中で、

この日本人の監督が撮影したセノーテという作品が

浮かんだのです。

 

それで、友人に伝えてみたところ

「その映画、ずっとみたいと思ってたの!!私、監督にメールまでしたのよ!

でも、オンラインでは見ることができなくて

上映している場所もなくて・・・」

というのです。

 

友人が本当に見たそうだったので

家に戻ってから、ちょっと日本語で検索してみたところ

なんと小田香監督のブログが見つかり

しかもそこには、今、ユカタンにいて

撮影でお世話になった村を回って

上映会をやっている・・・と書かれていたのです!

 

えええっ!!

こんなタイミングある!!???

 

そう思って、友人に「監督自身が来てるらしいよ?行ってみる?」と聞いたら

「絶対行きたい!!!!!!!」

というので、

 

その上映会をやっている団体にWhatsappをして

近日中の予定を聞きました。

 

結果的に、友達がNYに戻る前に行くことができる上映会は

トゥルムから3時間ほどドライブしたところにある

Cenotilloと言う村のものであることが判明しました。

 

 

上映スタート時間が、ユカタン時間の夜6:30ってことは

キンタナロー時間の7:30PM

絶対にこの時間には始まらないだろうから、

最悪、夜8時のスタートだったとして

終了が夜10時(キンタナロー時間の夜11時)。

ってことは、

トゥルムに戻ってくるのは、キンタナロー時間で

夜中の2時近くになるわけです。

 

そんな時間にこのあたりを運転するのは

正直、ものすごいリスクがあります。

基本的にはやりたくない・・・笑

 

トゥルムの街中を夜運転するのだって嫌なのに

田舎町を運転するなんてもっと怖い!

 

だけど、友人が「見たかったんだよねー」と何気なく話したことを

調べた瞬間に

この情報が出てきたってことは

ご縁があるってことなんだろうな・・・

 

そう思って、友人を連れていくことにしました。

(夜中走るのは危険とかいうと、怖がられるから彼女には何も言わずに・・笑)

 

****

 

Cenotilloと言う村は

地図上で言うとこちら。


 

 

バヤドリドから1時間程度でいかれそうだったので

「ついでにバヤドリドでご飯でも食べる?」と聞いたら

行ってみたいと言うことだったので

ちょっと早めに出発。

 

午後早い時間にバヤドリドに到着して

ランチを食べました。

 

私のお気に入りのレストランにて、

お気に入りのRelleno Negro🎵

 

 

私が気に入っているHotel Mesón del Marqués はこちらになります。

 

お料理も好きですが

中庭の雰囲気がコロニアルでとっても素敵なんですー。

 

今回もサービスはよく、

とてもおいしかったです!

 

で、少し時間があったので

バヤドリドを探索した後、

Cenotilloと言う村へ・・・

 

****

 

途中、マヤ鉄道の工事で

Google MAPが示している地図上の道が

塞がっていることがわかって

非常に焦りましたが

無事に上映時間の18:30前に到着できました。

 

こちらがCenotilloの中心広場と教会

一応、町の名前の撮影スポットがあるのですが

瓦礫に埋もれてる・・・笑

どうやら広場を工事中のようです。

 

本当に典型的なユカタンの田舎町です。

中心に広場と市庁舎と教会とバスケットボールコートがあるっていう・・・

 

こちらの屋根付きのバスケコートが会場になるようです。

 

 

この日は午後から雨が降るということで

野外シアターだったら

絶対蚊が出るな・・・と思い

防虫スプレーをしっかり持っていましたが

 

結果的に雨は降らず、

いい感じで風が吹いていたので

蚊の襲撃には遭わずにすみました。ありがたい・・・

 

夜中のドライブも気になっていましたが

蚊の襲撃が一番怖かったのです・・・笑

 

****

 

で、私たちはちゃんと18:30に到着しましたが

会場にはほぼ誰もいません。

 

上映会を取り仕切っているスタッフと機材は

到着しているものの

観客もいないし、小田監督すらいない・・・笑

 

小田監督も

村の人が上映時間ぴったりに来ないことなんて

わかりきっているのでしょうね〜笑

 

 

ちなみにこの上映会は

Cine Movil TOTO

と言う野外映画上映を専門に行なっている団体が

請け負っていました。

 

この団体は、いろんなところから資金提供を受けたりして

いわゆる映画館がない場所でも

映画を上映できるシステムを持っています。

(野外用のスクリーンとかプロジェクターとか・・・)

 

しかも完全無償でやっていらっしゃるということで

素晴らしい活動だなーと思いました。

 

上映まで時間があったので

スタッフさんたちの動きや

設営を見ていたのですが

なぜか、スクリーンの前に

4台の自転車が置かれているのです。

 

こういう田舎町での上映では

停電など当たり前ですので

きっとそれに備えているんだね?と友人と話していました。

 

 

しかし・・・

これは停電のためのバックアップではなく

なんと、スピーカーを動かすためのペダルでした!

 

十分に電気はあるのに

どうして毎回4人のボランティアを募って

発電させるんでしょう?

 

まあこれも、「エコ教育」の一環なのかもしれないですね!

面白い発想です。

 

こんな感じで、常時4人の人がペダルを漕ぐことで

スピーカーが稼働するという仕組みでした。

 

もし私がこの映画に全然興味がなかったとしたら

ボランティアとして参加したかったのですが、

 

私としては、この映画を集中して視聴したかったので

スタッフさんに頼まれた時も、

ごめんなさい・・・してしまいました。

 

結果的に子供達が参加していて

申し訳ないと思いましたが

でも、漕ぎながら映画を観られるほど

私は器用ではないのです・・・泣

 

 

****

 

結果的に1時間以上遅れて

映画上映がスタートしました。

 

まさに想像していた通り。笑

 

本来は、小田監督が事前挨拶をしてから

スタートする流れだったようですが

その時点でまだ到着しておらず

(スタッフさんによると、撮影したセノーテに行っているということでした)

スタッフさんの説明の後、上映がスタートしました。

 

映画が始まってすぐ、

友人が

「彼女はSuper8mmのカメラを使っているのよ。

だからすごく興味があったの。私もそれを使ってたから。

この映像の感じは、Super8mmの特徴よ!」

と伝えてきました。

 

私はカメラにも映像にも詳しくはありませんが

友人は、監督のカメラワークとか

使っている機材とかにまでものすごく興味があったようです。

 

「これは何かの縁だ!奇跡だ!」と思って

友人を連れてきたけど

 

もしかしたら監督には会えないのかな・・・

何かのハプニングがあって

来られないのかもしれないな・・・と思ったら

上映が終わった後

ちゃんと前に出ていらっしゃって、ほっとしました。

 

***

 

質疑応答の後、

個人的に監督とも

お話しすることができました。

 

とはいえ、なんの関係もない私よりも、

友人に時間をとって欲しかったし

何より監督は、撮影協力してくださった

村の方々と時間を取るべきだと思ったので

本当に、ちょこっとした会話だけでしたが・・・。

(写真すら撮り忘れた。笑)

 

ああいう作品を作ったのだから

小田監督はスペイン語ができると思い込んでいましたが

英語のスピーチでした。

 

隣に通訳?っぽい人がいたので

彼女がコーディネーターなのかなと思ったら

そのメキシコ人女性、マルタさんは

なんとボスニアのサラエボにある映画学校で

小田監督と同級生だったそうで

セノーテという映画は

二人が協力して作ったそうです。

 

つまりマルタさんは、この映画のプロデューサーなんですね。

 

映画学校?ボスニア???とびっくりしましたが

後で調べたら

ハンガリー出身の伝説的映画監督である

タール・ベラ氏が

ボスニアのサラエボで、映像の学校を運営していたことがあるようですね。

 

私は、勉強不足で

タール・ベラ監督のことを全く知らず、

作品を一度も見たことがないのですが

非常に個性的な作品のようです。

 

この「サタンタンゴ」という作品が有名だそうです。

(上映時間7時間以上!!!すごい作品です!!!)

 

 

きっと小田監督もマルタさんも

彼の作風や哲学に憧れて

その学校に行かれたのでしょうから

元々、深いところで趣向が合う方々なんでしょうね。

 

小田監督が、水に関する映画を撮りたいと言い、

それだったらメキシコのセノーテはどうかとマルタさんが提案し

この企画が成立したのだそうです。

 

そして、撮影当時から

協力してくれた村の人たちに完成品を見せたいという気持ちがあり

今回はそのお礼参りを兼ねての

上映会なのだそうです。

 

素敵なお話ですね!

 

上映会が終わった後

マルタさんに聞いたところ

マルタさんがこの映画を各地で上映するための助成金申請し

それを使って、このCine movil TOTOという会社に依頼して

今回の20箇所ぐらいに及ぶユカタンの村々での上映会が

実現されたそうです。

 

撮影しっぱなしではなく

ちゃんと完成品を持って

撮影地を回るというその行為が

監督や撮影チームの人柄を表している感じがして

温かい気持ちになりました。

 

****

 

私は、映画評論家ではないし

映画について何か語る資格があるとは思えませんが、

マルタさんから

今回助成金を出してくれた団体に

来場者がどんな反応だったかを見せたいので

スペイン語で感想を言うところを

撮影させてもらえないかと頼まれたので

協力することにしました。

 

素朴な感想で言うと

この映画は私が感じている

セノーテへの畏怖(怖い気持ち、恐れている気持ちもあれば、尊厳を感じる時もある)と

シンクロする感じがしました。

 

何かはっきりとしたストーリーがある映画ではないのですが

一連の映像を見て

 

「セノーテの中に、何かスピリットがいるとしたら

こんなふうに世界を見ているのかな?

もしかして

そのスピリットというのは

元々、セノーテにいたものかもしれないし

もしかしたらセノーテに「捕まって」しまった魂たち

(要するにセノーテで亡くなった人たち)

なのかもしれないな・・」

 

とか

色々と感じるものがありました。

 

多くの観光客は、気軽にセノーテに入るけれど

マヤの時代には、

セノーテは、死者の国の入口とも捉えられていたし

また生贄を捧げる場所でもありました。

 

歴史を知っていると

遺跡内にある大きなセノーテに行った時に、

やっぱりちょっと足がすくんでしまうことがあります。

 

ここに、どれだけの人たちが「供物」として

投げ入れられたんだろうと思うと、

「水が綺麗だねー、涼しいねー」なんて

気軽には言えなくなってしまうのです。

 

この映画の映像は

よくYoutubeで見るような

美しく透明感と光に溢れたものではなく、

 

ぼやっとして、ピントが合わないような映像で

本当に何かの「生き物の目」が

捉えているような水中の描写だったのが

より一層、そういう雰囲気を出していた気がします。

(水中はiPhoneで撮影されたらしいです!すごい!)

 

友人は、小田監督とお話しできたことで

本当に満足していて

「この映画はいろんな見方ができるから

一回見ただけじゃ、簡単に感想は言えない。

もう一回別の視点で見たい」

と言っていました。

 

ただ、私たち二人が共通して

気になったことがありました。

 

それは、

映画の中で出てくるマヤ語のナレーションです。

 

なんとなく詩的かつ哲学的な表現が多かったのですが

あのセリフは、

監督自身が書いて、

それをマヤ語に翻訳して

現地の人に読ませた物なのか、

 

もしくは、

ポポルヴゥフみたいなマヤの神話を

関係あるところだけ切り取って

読ませているのか・・・

 

と言うことでした。

 

映画のクレジットを見たり

監督の話を聞いた限りでは

現地の伝説や昔話を

繋ぎ合わせたようで

必ずしも監督自身が書いた言葉ではなさそうだったのですが・・・

 

質疑応答の時に

村の男性が「誰の視点で描いた作品なのか」と言う質問をしていて

なんとなくそれを聴きたくなる気持ちは

わかる気がしました。

 

多分、あの哲学的かつ詩的なマヤ語のナレーションが

「あなたのポエムに映像をくっつけたのか?」みたいな印象を

与えるのではないかな・・・と個人的には思ったのです。

(その男性がそう言っていたわけではありませんが・・・)

 

この男性の質問に関する

小田監督の答えは

監督が亜紀書房のサイトで書いているブログを見ていただくといいと思います。

 

***

想像通り、私たちが現地を出発したのはキンタナロー時間の夜11時。

トゥルムに戻ってきたのは、

夜中の2時近くでした。

 

パンクもなく、強盗もなく

無事に戻ってこられて

本当によかったです!!!

 

ちなみに小田監督は

次の映画を日本で撮影していらっしゃるそうで

とっても楽しみです!