一般の患者さんには耳慣れない言葉だと思います。
あるいは歯科医師でさえも聞いたことがないよ、などという先生もおられるかもしれない。
「ダイレクト・ボンディング」
とは?
おそらくですが、僕の予測ではこれからはこの言葉が、近い未来に歯科医療を席巻すると思います。
それでこのテーマを今回とりあげます。
まず、簡潔に述べます。
ダイレクト・ボンディングとはコンポジット・レジン(プラスティック材料)をむし歯に詰める治療法なのです。
などというと、
「アホか?そんなもん、なんでわざわざダイレクト・ボンディングなんて言いなおすねん?CR(コンポジットレジン)充填でエエやないか?」
などと関西の同業者からは激しく突っ込みをくらいそうです。
あ、別に関西の歯医者を恐れてるわけではないですよ、僕の地元が関西なだけです(笑)
確かにCR充填なんですが、これは保険治療ではありません。
などと、これも言うと、
「はああ?何寝言を言うてんねん。CR充填なんか、今までずっと保険でやってきたわい。おまえ、保険がいくら儲からへんから言うて、CR充填でアコギに稼ごうって腹か?そんなもん患者さんがやるわけないやろ。保険で十分な治療に、なんでわざわざ高いカネ出してくれるねん」
などという声も聞こえてきそうです。
それもうなずける話です。
CR充填。
これほどメジャーな治療はないでしょう。
むし歯を発見した歯科医師が、まず第一選択として挙げる治療法です。
むし歯を削り、プラスチックの材料で詰める。
審美的に優れ、短時間で治る。
全国で、この治療をやったことがない歯科医師は、臨床的には’いない’といってもイイでしょう。
保険治療の代表格といっても過言ではありません。
これを保険外でやる!というのですから、勉強の足りない歯科医師からすると???で頭が一杯になること間違いありません。
あるいは患者さんにも、わけが分からないと思います。
で、僕が説明いたします。
ダイレクト・ボンディングとはCR充填を超精密にやりあげる治療法なのです。
保険治療のCR充填だって、歯科医師たちはいい加減にやってるわけではありません(一部にはひどい仕事をしてる先生もいますけど・・・)が、ダイレクト・ボンディングからすると荒すぎる治療とも言えないこともありません。
ダイレクト・ボンディングと言うからには、それは明らかに保険内容からははるかに逸脱した、仕上がりも予後も、保険内容のそれとは格の違うものになります。
まず治療時間にそれは反映されます。
普通、保険でCR充填といえば、15分もかからずに簡単な充填なら終了します。
それがダイレクト・ボンディングになると、一歯するだけで平均一時間以上の時間がかかります。
別に、これは術者が未熟だからではありません。
術者がセミナーの講師クラスの先生でも、それぐらいは普通にかかってしまうのです。
そして、まず術者は裸眼では治療をすることはまずありません。
拡大鏡と呼ばれるルーペ、あるいはマイクロスコープと呼ばれる顕微鏡をのぞきながら、おそろしいほどの精度で治療にかかります。
色彩も単一色で詰めることなどほぼありません。
奥歯であろうとも3色以上の色彩を積層し、元の天然歯のように復元します。
検診などに行っても、熟練の歯科医師が診ても、治療した歯かどうか分からない仕上がりになります。
研磨、艶出しも4ステップ以上は工程を踏みます。
何から何まで違うのです。
詰めている材料は、確かに保険適応材料ですが、仕上がりはメジャーリーグと草野球ぐらい違うものになります。
長くなりましたね。
さて次回には、このダイレクト・ボンディングが、何故、保険外にも関わらず、広く世間に浸透していこうとしているのかを説明していきましょう。
高いモノにはそれなりの値打ちがあるということを、分かりやすくご説明いたします。
僕はこれからは、ダイレクト・ボンディングの時代になっていくと思っております。
この言葉を覚えておいて損はありませんよ。
これからの審美歯科には欠かせない選択肢になっていくはずです。