口の中で、有害きわまりない歯石ですが、たちの悪いのが縁下歯石の方であると先の記事でも述べました。
縁下歯石は歯ぐきの下に潜り込んで、直接骨を溶かしていくのですからたまったものではありません。
こんなものはすぐさま綺麗に掃除したいと願うのが、歯科に携わる者としての当然の使命感というものなのですが、これがまあ難しい。
歯には歯ぐきとの間に溝があり、僕らはこれをポケットと呼びます。
このポケットは骨が溶ければ溶けるほど深くなっていきます。健康な方で1~2ミリ、歯周病がきつくなってくると4~5ミリ、歯がグラグラしてくるほどの重症になると6ミリ以上にまでなります。
このポケットの中に潜むのが、縁下歯石なのです。
たかが何ミリの世界じゃないか、などと侮るなかれ。
熟練の衛生士さんでさえ、このポケットが4ミリを超えて、その奥につく歯石を除去するのは至難と言っておられます。
それはそうです。
ただでも見えない歯ぐきの中をゴソゴソ器具でもって手探りでかき回し、そして正確に歯石だけとる。しかも歯肉には傷を与えない。出血させればますます視野は確保しにくくなるから、出血は極力させない。でも、ポケットが深いような症例はとても出血しやすい・・・。
二律背反を絵にかいたような作業です。
こんな難しい作業を、4ミリ超えたポケットの中で成し遂げ、全ての歯石を除去するというのは神業です。
で、仕方ないので、深いポケットのある患者さんには歯肉をめくって(もちろん麻酔します)、しかっり術野を確保した状態で、つまりちゃんと歯石が見えた状態で除去をしていくフラップ・オペレーションという小手術をすることになるのですが・・・
これがまあ、嫌がられます。
何度も書きますが、歯石は痛くないんです。ゆっくり確実に骨を破壊しますが、痛くない。
そんな痛くない歯石を除去するのに、歯ぐきを切る小手術・・・?とんでもないよ!
そう結論する患者さんの多いこと・・・。フラップオペを進んで受け入れてくださる方は、よほど歯科医師が上手く説明しているか、デンタルIQの高いアタマの切れる方ということになってきます。
そして悲しいことに、このフラップオペをやっても、現状維持がやっとで、骨が戻ってくるということではないのです。これもフラップ・オペを受けいれてもらいづらい理由かもしれません。
一番いいのは、縁下歯石を完全に除去することではありません。
歯石そのものをつけないことです。
だから、縁下歯石なんかがつく前に、縁上歯石だけの間に、歯科医院で歯石をとりましょう。
「痛くなくても歯科医院に行く。」
これが習慣づいたときから、健康で長生きというのは、グッと近づくと思います。