仲の良かった知人が突然、本当に突然いなくなりました。
忘れたい出来事だから、書くだけ書いたら消去するかもしれません。
ダークな内容になると思います。
正直まだキツイです。しんどいです。
人生最大の衝撃です。
書くことで落ち着きたいという自己満足です。
どうやって書いたらいいかわからないので、ただ書きます。
自死についてですので、嫌になる方はここまでにしておいてください。
その日。
暑い夏の日。
友人と一緒に知人との待ち合わせの場所に行くと、
先に来ていた4人の姿がありました。
知人の車もそこにありました。
全てのドアが開いていました。
暑いからかな? と、不思議に思っても疑問に思いませんでした。
駐車場に車を停めようとしたとき、4人のうち一人が近寄ってきて、
「彼女が車の中で練炭自殺している」
意味が分かりませんでした。
なにかの冗談のようで。
言われた言葉が今まで聞いたことのない言葉で。
言われたことを理解するまでに数秒かかりました。
理解しても意味が分からず、口に出た言葉は「は?」でした。
「旦那さんの連絡先がわからないの」とその方が言うので、
「わたしわかります」と電話を握りしめた。
電話がつながった先は、いつもの旦那さんの声。
「どうしたー? 僕は今日行かないよ」
「違うんです。いま、あのMさんが大変なことに・・・」
「え、どういうこと?」
「車内で練炭自殺してるって・・・」
「は?」
そうこうしているうちに消防車と救急車が到着した。
あわただしくなる現場の中、わたしは必死に電話をつないでいた。
近くの柱を握りしめないと立っていられない。
「い、いま、救急車が来て、心臓マッサージをしています。でも呼吸も心拍も止まってるって・・・」
「どういうこと?」
「はやく来てください・・・!」
確かそういうやり取りをしたと思う。
彼女は運転席から出され、ストレッチャーに乗せられ、心臓マッサージを施されながら救急車へ入れられた。
だらりと落ちた腕。
眠ったような顔。
そのどれもが今でもフラッシュバックのようによみがえる。
救急車が去って、消防隊員が火事の危険がないことを確認していると、警察が到着した。
消防隊員と警察にいくつか質問をされ、応えていると、科捜研か鑑識かわからないけど何人もの人が到着し、
車内と車外を検分していた。
そのすべてが映画かドラマのようで、ぼんやりと非現実の中にいるような気分だった。
悪い夢なら早く覚めてほしい。
気持ちが悪い。
胃のあたりが重い。
横になりたい。
家に帰りたい。
こんなことが起こるはずではなかった。
今日は1か月前から予定していて、友人はとても楽しみにしていた。
隣に座る友人とつぶやきながら、願った。
どうか。
どうか。
「一命をとりとめました」となりますように。
うだるような暑さの中、祈った。
警察が帰ってもいいと言ってくれたので、帰ることにした。
帰りの車内は行きとは正反対の空気で。
友人と二人の間に会話は少なかった。
ふたりとも「なぜ」という疑問から抜け出せなかった。
だって、わたしたち、朝7時に彼女からメールもらった。
1時からだよ。って。大丈夫?って。
楽しみにしてるねって返信したら「うん」って。
だから死んでるなんて想定外の上のうえで。
考えてもみないし、そんな予定でもないし。
今日は楽しい日になるって、思ってたのに。
なんで?
なんで今日?
なんでわたしたち?
なんで?
答えのない問いを問い続ける。
あれは本当に現実だったのだろうか。
帰宅後、娘の顔を見て、やっと日常の世界に戻った気がして、
不思議な顔をする娘をただ無言で抱きしめた。
ここに、わたしの日常がある。
だけど、どうしてもしんどくて、そのまま床に倒れこんだ。
心配する娘とオットにちょっと疲れたから、と告げ、横になることにした。
普段も熱中症になりやすいたちなので、多少横になっててもふたりは不思議に思わない。
いつものようにお水やブランケットを持ってきてくれた。
横になって目を閉じながら、いやでもあの光景が浮かんでくる。
非現実的な、非日常。
それが現実だったということは夕方に判明する。
彼女の旦那さんから連絡が来た。
「どうでした?」
一命をとりとめたという一縷の望みを託して訊く。
「うん・・・、もう手の施しようがなくてね・・・」
その瞬間、悲しさとショックと恐怖と同情と後悔といろんな感情がぐちゃぐちゃに一気に押し寄せ、
かみ殺すように電話口で泣いてしまった。
その時、初めて涙が出た。
電話口の旦那さんも同じような涙声で「ごめんね、ありがとうね」と言った。
そんなわたしの様子を見て、オットはなにかあったと察したらしい。
でも何も言わず、そばにいた。
感情が収まった頃、わたしは重い口をようやくひらき、自分の身に起こった出来事を洗いざらい話した。
オットも驚いてはいたけれど、現場にいた人間と話を聞いただけの人間との温度差はけた違いだ。
わたしだってあの場にいなければこんなにショックを受けることもないと思う。
ただ今は、なにも考えたくない。
食事ものどを通りそうになかったので、早々にベッドへ行った。
一緒に行った友人から電話があり、1時間ほど話した。
いろんな気持ちを吐き出したけど、やっぱりつらかった。
会ったこともない芸能人の三浦春馬くんとか、竹内結子さんとか、パクヨンハさんとかでも大きな衝撃を受けたのに、
身近な人の自死。
ニュースでは文字として流れていくその行為が、実際自分の目の前にあったという事実。
その衝撃はとてつもなく大きい。
残された遺族の悲しみ。
発見者の苦しみ。
少しでも考えてくれることができなかったのか。
なんでも話す友達ではなかったけれど、一緒に食事をしたり、飲んだり、楽しく過ごした。
その日の二日前も一緒にいた。笑ってた。
あの時、なにか異変はあったのだろうか。
なにか思い悩んでいたのだろうか。
聞くことができていたら?
自分になにかできていた?
だけどそんな問いは自分自身を責めてしまう。
それはわたしが負うべきことではない。
もし、もっと早く到着していたら?
もし、もっと早く発見できていたら?
講習でやったAEDや心臓マッサージ、人工呼吸などができていたら?
だけど、死にたがっている人間を無理やり生かすことが正解なんだろうか?
死は解放だと昔どこかで誰かが言っていた。
生まれてくるのは選択できないけでど、死は自分で選択できるのだと。
だけど。
だけどやっぱり。
生きていて欲しかった。
それがわたしのエゴであったとしても。
生きてほしい。
自分に関わりのあるすべての人に、生きていて欲しい。
彼女はいなくなって、解放されたのかもしれない。
だけど、残された人間は、この経験を一生背負って生きていかなければならない。
なんて身勝手な。
こんな思い、背負いたくなかったよ。
こんな経験、したくなかったよ。
自分自身がいまとても不安定で、浮いたり沈んだり落ちたりする。
がんばろうと、考えないようにしても、ふとした瞬間に思い、考え、視線が落ちる。
信号待ちで涙が出る。
体が震える。
悪寒が走る。
駐車場に停まっている車を見るのが怖い。
こんなことになるなんて、考えたこともなかった。
時間がたてば忘れられるのだろうか。
早く忘れたい。
この記憶をなかったことにしたい。
そしてみんなに言いたい。
生きて、と。
生きて。
精一杯生きて。
生きなくちゃ。
だって、生まれてきたんだから。
生きよう。