幻冬舎
この作者さん、良くも悪くもアクがなく読みやすい反面どうもするっと読んで後に残らないという感想を持つことが多かったのですが、この本での主人公はアクのなさが魅力につながっていて、ほっこり系の話ではないのですが和むというか、ゆったりした気持ちで読めました
婿殿といえば定番の女世帯に1人入って苦労して…というのを、某時代劇の設定や有名なことわざ(?)「小糠三合あるならば入り婿すな」みたいなお話かと思いきや、そうにあらず
苦労と言っても「何もするな」と言われている事だけなので、引き籠り働きたくないでござる願望を持っている人ならば天国な扱い
有名な仕出しどころではあるのだけれど、何代か前の男主人たちが店を傾け、それ以来女が店を継ぐという形になっている店に、人が良く特に取り柄はないという主人公が婿入り
言い渡されるのは「お小遣いはあげるので、店のことに手出しをせず店の名前を傷つけぬ程度に過ごしなさい」
いわば婿に入ると同時に、隠居を言われたような形
そこからつい、妻が心配で店でのごたごたに手を出してしまい、暇はあるので何かと調べて、無理はしない程度に動いてごたごたの原因をつきとめ、人の良さで懐柔していくといった流れが疲れた会社員には『こんな感じで物事が色々解決すればいいのに…』としみじみ思わせてくれます
ラストはいきなりの逆恨み、何故と思ったら…というところでこの歪んだ婿入りからの弊害が発覚しと解決になります。
なので残念ながら続編はなさそうかな。
読みやすく、トラブルが元になっていてもイヤな気持ちにならない作品でした。