共同文化社


以前書いた、苫前三毛別(とままえさんけべつ)の
日本最大と言われる熊害事件のドキュメンタリー
副題がTHE DEVIL'S VALLEY


読まれる前にネットで「三毛別 熊害」などで検索を
してWIKIを読まれたほうが流れがわかりやすいかも

小説でなく、淡々と事件をまとめているだけなので
感情的恐怖というものは湧きにくいのですが、熊が
恐怖の対象であると教えてくれます


…動物園やプ~さんなんかのイメージで、都会暮らし
だと「熊さん熊さん♪」なんて写真やテレビで眺めて
いられますが…熊への見方変わります


小説ではないのに、いや事実だからこそ一言一言や
行動に人間の本質が丸出しになって、醜い行動
を浅ましく思うこともできない重さ
妊婦だった母親が、熊に襲われた際の死ぬまでの叫びが
「腹だけは食い破らないでくれ 喉を切ってくれ」
だったというのは、悲しい母の愛を感じられるし
別の家では熊の襲撃の際、妻を足蹴に自分だけ屋根の
梁に上った亭主は死ぬまで妻に頭が上がらなかったと
本人が語ってたりと(…よく離婚しなかったよなあ…)


事件を小説やドラマなどにしたものがあって、それの
タイトルが羆嵐なのは、熊を退治した翌日に台風なみの
突風が吹き荒れ、北海道では神の使いでもある熊
(日本だと良きも悪きも神と称するから、この場合の
印象は現代人からすると悪魔の使い…に近いかも)
が死んだからだと報道されたというのも、現代では
存在しなさそうな自然への憧憬を教えてくれる


一連の事件の小説は知っておりましたが、三毛別村の
生き残りとなった子供が「犠牲になった人一人につき
熊10匹を殺す」と誓いを立て猟師になり、実際に
102匹の熊を退治て銃を置いたという経緯を
「銃を置く」と題した小説として発表されている
というのは知りませんでした


冬眠をしそこねた熊ほど恐ろしいものは無い、同じ
場所に遺留物があれば熊は獲物ある場所とまた訪れ
てくる、対峙することになったら逃げようとするな
大声を出せば逃げてくれることもあるなど、今でも
役立ちそうな情報を含め、興味深く読めました ……熊怖ぇ……


余談ですが11/7 ヤフーニュースで病気(?)で全身の

毛が抜けてしまった熊というのを扱ってました…これ森とか

山で出会ったら確実に妖怪かUMAと間違えると思う…↓
一日一冊 読書評-全身毛が抜けた熊

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